武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第31〜33条
一屋形樣如何樣無曲、雖御擬候不可述懷事、云、君雖不爲君、臣以不可不爲臣、又云、逐鹿者不見山、又云、爲下莫計上、 一召使者折檻之事、小科之時可誡、及大科則、身體之破滅無疑事、大公曰、兩葉不去、則將用斧柯、付但以小科、節々及折檻則、依機可退屈歟、呂氏春秋曰、令苛則不聽、禁多則不行、 一對百姓、定所務之外、不可爲非分事、軍識曰、上行虐則下急刻、賦斂重數、刑罰無極、民相殘賊、
新字:一屋形様如何様無曲、雖御擬候不可述懐事、云、君雖不為君、臣以不可不為臣、又云、逐鹿者不見山、又云、為下莫計上、 一召使者折檻之事、小科之時可誡、及大科則、身体之破滅無疑事、大公曰、両葉不去、則将用斧柯、付但以小科、節々及折檻則、依機可退屈歟、呂氏春秋曰、令苛則不聴、禁多則不行、 一対百姓、定所務之外、不可為非分事、軍識曰、上行虐則下急刻、賦斂重数、刑罰無極、民相残賊、
書き下し
一、屋形樣如何樣に曲無く御擬候ふとも、述懷すべからざる事。云ふ、君は君たらずと雖も、臣は以て臣たらずんばあるべからず、と。又云ふ、鹿を逐ふ者は山を見ず、と。又云ふ、下たる者上を計る莫かれ、と。 一、召使ふ者の折檻の事、小科の時は誡むべし、大科に及べば則ち、身體の破滅疑ひ無き事。大公曰く、兩葉去らざれば則ち將に斧柯を用ひんとす、と。付けたり、但し小科を以て節々折檻に及べば、機に依りて退屈すべきか。呂氏春秋に曰く、令苛なれば則ち聽かず、禁多ければ則ち行はれず、と。 一、百姓に對し、定むる所の所務の外、非分を爲すべからざる事。軍識に曰く、上虐を行へば則ち下急刻にして、賦斂重く數にして、刑罰極まり無く、民相殘賊す、と。
現代語訳
一、お屋形様がどのようにつれなく、お考えになったとしても、不満を述べてはなりません。「君が君らしくなくても、臣は臣らしくなければならない」といいます。また「鹿を追う者は山を見ない」といいます。また「下の者は上を計ってはならない」といいます。一、召し使う者への折檻は、小さな過ちのときは戒め、大きな過ちに及べば、身の破滅は疑いありません。太公が「二葉のうちに去らなければ、やがて斧を使うことになる」と言っています。ただし、小さな過ちで折々折檻に及べば、その場合に応じて相手が屈してしまうかもしれません。『呂氏春秋』に「命令が苛酷なら聞かれず、禁止が多ければ行われない」とあります。一、百姓に対して、定められた所務(年貢などの務め)のほかに、道理に外れたことをしてはなりません。『軍識』に「上が虐げれば下は切迫して刻薄になり、税は重く頻繁で、刑罰は限りなく、民は互いに傷つけ合う」とあります。
解説
この章句が説くこと
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