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武家家訓集 / 北条早雲廿一箇条第5条

一拜みをする事身のおこなひ也、只こゝろを直にやはらかに持、正直憲法にして上たるをば敬ひ、下たるをばあはれみ、あるをばあるとし、なきをばなきとし、ありのまゝなる心持、佛意冥虛にもかなふと見えたり、たとひいのらずとも、此心持あらば、神明の加護有之べし、いのるとも心まがらば、天道にはなされ申さんとつゝしむべし、

新字:一拝みをする事身のおこなひ也、只こゝろを直にやはらかに持、正直憲法にして上たるをば敬ひ、下たるをばあはれみ、あるをばあるとし、なきをばなきとし、ありのまゝなる心持、仏意冥虚にもかなふと見えたり、たとひいのらずとも、此心持あらば、神明の加護有之べし、いのるとも心まがらば、天道にはなされ申さんとつゝしむべし、

書き下し

一拜みをする事身のおこなひ也、只こゝろを直にやはらかに持、正直憲法にして上たるをば敬ひ、下たるをばあはれみ、あるをばあるとし、なきをばなきとし、ありのまゝなる心持、佛意冥虛にもかなふと見えたり、たとひいのらずとも、此心持あらば、神明の加護有之べし、いのるとも心まがらば、天道にはなされ申さんとつゝしむべし、

現代語訳

礼拝をすることは、身の行いです。ただ心を素直にやわらかく持ち、正直で法にかなって、上の者を敬い、下の者をあわれみ、あるものはあるとし、ないものはないとする、ありのままの心持ちでいれば、仏の御心にも、人知れぬ道理にもかなうと見えます。たとえ祈らなくても、この心持ちがあれば、神仏の加護があるでしょう。祈ったとしても心が曲がっていれば、天の道から見放されるでしょうから、慎みなさい。

解説

祈りの形より心の持ち方を重んじる条です。礼拝は身の行いにすぎず、大切なのは、心を素直で柔らかくし、正直に法にかなって、上を敬い下をあわれみ、ある物をあるとし、ない物をないとするという、ありのままの態度だと言います。それがあれば祈らなくても神明の加護があり、心が曲がっていれば祈っても天道に見放される、という結びです。第一条の信仰を、形式から内面の誠実さへ引き取る位置にあります。現代の仕事では、儀礼や形式的な手続きより、事実をありのままに報告し、上下に偏りなく接する誠実さが信頼の基礎になる、という話に通じます。

この章句が説くこと

正直誠実ありのまま祈り神明の加護武家家訓集

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