武家家訓集 / 北条早雲廿一箇条第4条
一手水をつかはぬさきに、厠より廐庭門外迄見めぐり、先掃除すべき所を、にあひの者にいひ付、手水をはやくつかふべし、水はありものなればとて、たゞうがひし捨べからず、家のうちなればとて、たかく聲ばらひする事、人にはゞからぬ體にて、聞にくし、ひそかにつかふべし、天に跼地に蹐すといふ事あり、
新字:一手水をつかはぬさきに、厠より厩庭門外迄見めぐり、先掃除すべき所を、にあひの者にいひ付、手水をはやくつかふべし、水はありものなればとて、たゞうがひし捨べからず、家のうちなればとて、たかく声ばらひする事、人にはゞからぬ体にて、聞にくし、ひそかにつかふべし、天に跼地に蹐すといふ事あり、
書き下し
一手水をつかはぬさきに、厠より廐庭門外迄見めぐり、先掃除すべき所を、にあひの者にいひ付、手水をはやくつかふべし、水はありものなればとて、たゞうがひし捨べからず、家のうちなればとて、たかく聲ばらひする事、人にはゞからぬ體にて、聞にくし、ひそかにつかふべし、天に跼地に蹐すといふ事あり、
現代語訳
手水(洗顔・手洗い)を使う前に、厠から馬屋、庭、門の外まで見て回り、まず掃除すべき所を、ふさわしい者に言い付けてから、早く手水を使いなさい。水はいくらでもあるからといって、ただうがいをして捨ててはなりません。家の中だからといって、高く咳払いをするのは、人に遠慮しない様子で聞きづらいものです。ひそやかに使いなさい。「天は高いのに身をかがめ、地は固いのに足をそっと運ぶ」という言葉があります。
解説
洗顔の前にまず家の内外を見回り、掃除の指図を出す段です。厠から馬屋、庭、門の外までという範囲に、ただ身を整えるだけでなく家全体を把握する目があります。水を粗末にせず、咳払いを高くせず、静かに使えというのは、水への節約と人への気遣いの二つです。末尾の「天に跼まり地に蹐す」は、世間に対して恐れ慎む心を表す語で、身を縮めて暮らす謙虚さを示します。現代の職場でも、一日の初めに現場を巡り、整理整頓を指示し、小さな音や資源の使い方にまで気を配ることが、組織の気風を形づくります。
この章句が説くこと
見回り掃除節約気遣い謙虚武家家訓集
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