武家拾要記抄録 / 明倫篇・大将の四つの無礼と五つの恥
一大將の無禮は、衆にさきだちて休むこれ一つ、衆にさきだつて食ふ是二つ、山坂險路を馬にてうつ是三つ、衆の勞をおもはざる是四つ也、大將の五つの耻と云は、士卒の是非を辨ぜずして、私の思慮多き是一つ、不實にして士卒疑ひを起し、多言にして萬事胡亂なる是二つ、不仁にして士卒を愛せず、功を賞せず勞を思はず是三つ、心柔弱にして生死を分別せず是四つ、法度正しからずして威嚴行はれず是五つ也、
新字:一大将の無礼は、衆にさきだちて休むこれ一つ、衆にさきだつて食ふ是二つ、山坂険路を馬にてうつ是三つ、衆の労をおもはざる是四つ也、大将の五つの耻と云は、士卒の是非を弁ぜずして、私の思慮多き是一つ、不実にして士卒疑ひを起し、多言にして万事胡乱なる是二つ、不仁にして士卒を愛せず、功を賞せず労を思はず是三つ、心柔弱にして生死を分別せず是四つ、法度正しからずして威厳行はれず是五つ也、
書き下し
一大將の無禮は、衆にさきだちて休むこれ一つ、衆にさきだつて食ふ是二つ、山坂險路を馬にてうつ是三つ、衆の勞をおもはざる是四つ也、大將の五つの耻と云は、士卒の是非を辨ぜずして、私の思慮多き是一つ、不實にして士卒疑ひを起し、多言にして萬事胡亂なる是二つ、不仁にして士卒を愛せず、功を賞せず勞を思はず是三つ、心柔弱にして生死を分別せず是四つ、法度正しからずして威嚴行はれず是五つ也、
現代語訳
一つ、大将の無礼とは、皆に先立って休むのが一つ、皆に先立って食うのが二つ、山坂の険しい道を馬で打って進むのが三つ、皆の労苦を思わないのが四つです。大将の五つの恥というのは、士卒の是非を弁えず、私の思慮が多いのが一つ、不実で士卒に疑いを起こさせ、多言で万事が出鱈目なのが二つ、不仁で士卒を愛さず、功を賞せず労を思わないのが三つ、心が柔弱で生死を弁えないのが四つ、法度が正しくなく威厳が行われないのが五つです。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
李衛公問対・卷中卒未だ親附せざるに之を罰すれば、則ち服せず。已に親附するも罰行われざれば、則ち用うべからず。
-
論語・衛霊公篇子曰わく、身をもって厚くし、人を責むること薄ければ、すなわち怨み遠し。
-
『新論』國體中或ひと曰く、末をして強を養はしめば、恐らくは尾大の患を生ぜんと。臣謂へらく、英雄の天下を用ゐるや、時を相て弛張す。羈絆を解脱して其の為さんと欲する所を縦にすと雖も、而も天下敢へて動揺せざる者は、其の襟胸恢廓にして、天下の変に処するに足り、紀綱振粛して、天下の死命を制するに足ればなり。今天下既に幕府の英断を知り、感憤激励す。孰か敢へて俯伏して命を奉ぜざらん。是に於て大いに赤心を推して、天下と其の休戚を同じくし、天下をして各々自ら其の強を養ふを得しめば、天下豈に奔走して令に趨かざる者有らんや。万一兇頑桀驁にして強を恃み命を拒む者有らば、則ち天下の忠義の士を率ゐて、以て之を征討せば、一指揮して定むべきなり。且つ夫れ所謂強を国邑に養ふとは、豈に必ずしも尽く旧制を革め都城を空しくして皆之を遣はし帰すの謂ならんや。前賢往々兵は宜しく土着すべしと論ず。其の見卓なりと雖も、而も郡県の制を以て封建の勢を論ず。未だ施行すべからざる者有り。臣別に見る所有り、今未だ具に論ぜず。
-
呂氏春秋・論威③凡そ軍は其の衆きを欲し、心は其の一なるを欲す。三軍心を一にすれば、則ち令、敵無からしむ可し。令能く敵無き者は、其の兵の天下に於けるや、亦た敵無し。古の至兵、民の令を重んずること、天下より重く、天子より貴し。其の民心に藏せられ、肌膚に捷するや、深痛執固にして、搖蕩す可からず、物の之を能く動かすもの莫し。此の若ければ則ち敵胡ぞ勝つに足らん。故に曰く、其の令彊き者は其の敵弱く、其の令信なる者は其の敵詘す、と。先づ之に此に勝てば、則ち必ず之に彼に勝つ。
-
『長短経』禁令孫子曰く「卒未だ専ら親しまずして之を罰すれば、則ち服せず。服せざれば則ち用い難し。卒已に専ら親しみて罰行われざれば、則ち用うべからず。故に曰く、卒を視ること嬰児の如し、故に之と深渓に赴くべし。卒を視ること愛子の如し、故に之と俱に死すべし。厚くして使うこと能わず、愛して令すること能わず、乱れて理むることを知らざれば、譬えば驕子の若く、用うべからざるなり」と。経に曰く「兵は賞を以て表と為し、罰を以て裏と為す」と。又た曰く「之に令するに文を以てし〔文は恵なり〕、之を斉うるに武を以てす〔武は法なり〕。是れ必ず取ると謂う」と。故に武侯の軍禁に七有り。〔孫子曰く「無法の懸、無政の令」と。司馬法に曰く「敵を見て誓いを作し、功を贍て賞を作す」と。此れ蓋し囲急の時、格するに常制を以てすべからず。其の敵国の理戎、中野に周旋するは、機要綱目、予め令せざるを得ず。〕一に曰く軽、二に曰く慢、三に曰く盗、四に曰く欺、五に曰く背、六に曰く乱、七に曰く誤。此れ軍を治むるの禁なり。
-
論語・憲問篇子曰く、『詐を逆(むか)えず、不信を億(はか)らず。抑も亦た先覚なる者、是れ賢か。』