武家拾要記抄録 / 明倫篇・軍の編成の呼び名と新参者の迎え方
一天子の御旗を勅旗と云、日のはたと申は旗に日輪の象ある錦の御旗也、手長の旗と云は神名又家の紋なし、將軍家に勅定ありて、異國追討の時下し賜はる御旗の事也、一一軍の勢は一萬二千五百人也、是より內の勢をば人數何ほどゝいふ、但制札等には五十に及ぶ人數をば軍勢ともかくべし、それより內の勢をば手勢何ほどなど書べし、又兵五人を伍と云、五伍二十五人を兩と云、四兩百人を卒と云、五卒五百人を旅と云、五旅二千五百人を師と云、五師一萬二千五百人を軍と云、三萬七千五百人を三軍といふ、一新參の人には、まづ其家の法度をならしむべし、さてその家になつけしむべし、少の過をば尤むべからず、凡人の道は己を盡すを貴しとす、かるがゆへに君君たらずといふとも、臣もつて臣たらずんばあるべからずといふは、臣たる者の敎也、臣臣たらずといふとも、君もつて君たらずんばあるべからずといふは、君たる人のみちなり、
新字:一天子の御旗を勅旗と云、日のはたと申は旗に日輪の象ある錦の御旗也、手長の旗と云は神名又家の紋なし、将軍家に勅定ありて、異国追討の時下し賜はる御旗の事也、一一軍の勢は一万二千五百人也、是より内の勢をば人数何ほどゝいふ、但制札等には五十に及ぶ人数をば軍勢ともかくべし、それより内の勢をば手勢何ほどなど書べし、又兵五人を伍と云、五伍二十五人を両と云、四両百人を卒と云、五卒五百人を旅と云、五旅二千五百人を師と云、五師一万二千五百人を軍と云、三万七千五百人を三軍といふ、一新参の人には、まづ其家の法度をならしむべし、さてその家になつけしむべし、少の過をば尤むべからず、凡人の道は己を尽すを貴しとす、かるがゆへに君君たらずといふとも、臣もつて臣たらずんばあるべからずといふは、臣たる者の教也、臣臣たらずといふとも、君もつて君たらずんばあるべからずといふは、君たる人のみちなり、
書き下し
一天子の御旗を勅旗と云、日のはたと申は旗に日輪の象ある錦の御旗也、手長の旗と云は神名又家の紋なし、將軍家に勅定ありて、異國追討の時下し賜はる御旗の事也、一一軍の勢は一萬二千五百人也、是より內の勢をば人數何ほどゝいふ、但制札等には五十に及ぶ人數をば軍勢ともかくべし、それより內の勢をば手勢何ほどなど書べし、又兵五人を伍と云、五伍二十五人を兩と云、四兩百人を卒と云、五卒五百人を旅と云、五旅二千五百人を師と云、五師一萬二千五百人を軍と云、三萬七千五百人を三軍といふ、一新參の人には、まづ其家の法度をならしむべし、さてその家になつけしむべし、少の過をば尤むべからず、凡人の道は己を盡すを貴しとす、かるがゆへに君君たらずといふとも、臣もつて臣たらずんばあるべからずといふは、臣たる者の敎也、臣臣たらずといふとも、君もつて君たらずんばあるべからずといふは、君たる人のみちなり、
現代語訳
一つ、天子の御旗を勅旗といいます。日の旗と申すのは、旗に日輪の形のある錦の御旗です。手長の旗というのは、神の名も家の紋もなく、将軍家に勅定があって、異国追討の時に下し賜る御旗のことです。一つ、一軍の勢は一万二千五百人です。これより少ない勢は人数何ほどといいます。ただし制札などには、五十に及ぶ人数を軍勢とも書いてよく、それより少ない勢は手勢何ほどなどと書くべきです。また兵五人を伍といい、五伍二十五人を両といい、四両百人を卒といい、五卒五百人を旅といい、五旅二千五百人を師といい、五師一万二千五百人を軍といい、三万七千五百人を三軍といいます。一つ、新参の人には、まずその家の法度を習わせるべきです。そしてその家に馴染ませるのです。小さな過ちは咎めてはなりません。およそ人の道は己を尽くすことを貴びます。そのため、君が君らしくなくても、臣は臣として振る舞わなければならないというのは、臣たる者の教えです。臣が臣らしくなくても、君は君として振る舞わなければならないというのは、君たる人の道です。
解説

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
関連する章句
-
『武家拾要記抄録』・善行篇・君に仕える心と、役人の公私の慎み一國君たる人は、國家の風俗治亂の機、存亡得失をかんがみ給ふべし、家老物頭たる者、藝能に他念なく精を入る時は、かならず萬事怠るものなり、終日終夜孝子の心をもちて君につかふまつるべし、役人奉行たるものは、小利を見て大利を忘るゝ事なかれ、食物に其身をわするゝなかれとぞ、尤家中の音物など一切受納すべからず、町人百姓の賄賂はいふに及ばざるもの歟、但三箇の赦免とは、知らずして過ちしたる、又其分に相應せざるあやまち、又前の忠に對してのあやまち也、是等の過は別義赦免と名づけ、許免せらるべし、一合戰の砌、敵の捨置たる道具を拾ひとらざるやうに申付べし、但幕旗其外大切の物などは各別たるべし、又戰塲にをゐて頭分の人は、父子一所に集りゐる事なかれ、但時宜にもよるべし、尤公儀より定めの外小屋がけ一切すべからず、朝暮の起臥は定めの太皷次第たるべし、貝鐘にても同前、惣じて陣中へ、女を一人もめしつるべからず、酒宴遊興すべからず、然れども永陣の時節は、大將御こゝろをつけられ、酒をも給はり、諸卒の心をなぐさめ給ふべし、
-
『武家拾要記抄録』・明倫篇・家長・物頭の心得と家中の統制一弓馬の家長と生れては、朝には寅の刻に起て身を清め、衣服をあらため諸人に對し、終日禮義おこたらず、飲食時を失ふべからず、物頭物奉行たるものは、まづ其家の法度軍法をよく心得、太平の時に當りて制法軍利の手番までよく吟味すべし、家老物頭たる者、その外同役の者は、相互に軍令云合すべし、聊私の意趣遺恨あるべからず、一下々には其主人たる者、法度軍令等よく申ふくむべし、尤家中の中間小者、戰場にをゐては、わが主人の左右を離れずして、鎗脇を救ふべし、若その主人討死したりとも、其組を離れず、敵を討取る者をば是を賞すべし、若主人をすてゝ逃去る者は、その科重かるべし、
-
『武家拾要記抄録』・善行篇・陣中の用意と、堪忍・礼儀の心得一著陣の時、まづ組頭のもとへいたり、法度制禁を聞べし、次に他家の小屋塲、敵地の足塲などをたづね、方角遠近をかんがへ、晝夜まぎれなく、目じるしゝて歸るべし、みだりに私の見物に出る事は法外也、夜は下々の者を小屋のおくに寢させ、われはさし口にあるべし、惣じて下々の者と馬には、食物によく心をつくべし、尤公儀の定めの外にも用意すべし、一深く物見して歸る時、敵の方より惡口すとも、己が耻を雪めん事をのみ思ひて忠義の旨をわするべからず、凡陣中にをゐて、若堪忍しがたき事出來りなば頭横目までことはり、事すみてのちに遺恨をはらすべし、只武道は寢ても寤ても、忠節の志をはげむ事專要たり、其身をわするゝは君を思はざるゆへ也、古人のいはく、胯下の耻は小辱也、漢の功をなすは大功也と、一國替所がへのおりふし、をのれが住たる宿をあらさず、おなじくは疊のおもてをあらため、壁のうはぬりをもし、障子をはりかへてわたすほどにするは、さふらひのたしなみ也、又常におもひよりなき方より、是式をうけたる時はやがて返禮すべし、請べき子細なくては、少の物もうく〱べからず、又へつらひて他へ物を贈るべからず、
-
『武家拾要記抄録』・明倫篇・大将の三つの評判と良将の謀略・知略一大將の三つの采幣といふは、平生自國他國共に、武士道上中下批判よき是一つ、人をよくつかふ是二つ、人をよく見知り諸役を勤めさせ、忠節手柄の品にしたがひて、恩賞厚き是三つ也、又大將うたがひある時は士卒必疑ひをなすもの也、かるがゆへに謀豫定まる時は、士卒の心專强し、尤士卒の艱難をみて怠るべからず、天の時は地の利にしかず、地の利は人の和にしかず、人の和は將の謀にしかず、將の謀は勢ひに乘にしかず、己が死を遁れん爲に人質を捨るは將の耻也、をのれが望みありとて主人の先途を見すて、命をおしむは勇士のはぢなり、謀略と云は、大將信ありて士卒うたがはず、城取陣取等まで堅固に構へ、備へをよく立て人數の手組手分手配等、よく調り軍法正しきをいふ、知略と云は良將の方術なり、亂れたる敵を見ては、これに當るに眞を以てし、眞なる敵を見ては、位を以てこれを攻め、伏兵をもつて是をうち、雷皷して追ふの類をいふ、それ良將は內忠信にして禮をつとむ、故にをのづから威ありて、嚴も亦行はれずといふことなし、忠臣は君の威を益す事を思ひて、己が威を益すことを思はず、君の賞を行ひて、をのれが賞を行はずと也、
-
『武家拾要記抄録』・明倫篇・陣中の礼節と約束を守り通す心一陣中にをゐては、萬事批判なき樣につゝしむべし、又足半は誰人のはきても無禮とせず、惣じて出陣の時、片時も大將の跡に殘るべからず、歸陣の刻大將の先に歸るべからず。戰場にて命をおしまず合戰すといへども、生死は時の運によれり、忠臣は生死の運を待までもなし、大將馬に離れ給ふ事ある時は、己が馬を進らせ、其身は其所に止りて、むかふ敵を防ぐこと武士の名譽也、敗軍の時味方手負ある時は、其家人をよび出し退かしむべし、若し家人も來らず、其疵大事の手ならばみづから退くべし、敵頻に襲ひ來らば其首をあげ、刀脇指さし物までも添て返すべし、勿論此時敵と鎗を合するは、一入の働き也、一人と軍師を謀りて、彼敗るゝ時は己も亦死し、人と身上をはかりて、彼亡る時は己も亦ほろぶ、一たび人と約諾しては、身を終るまであらためず、一度人と親昵しては、盛衰存亡を以て、心を易へざるは、勇士の道也、
-
『武家拾要記抄録』・善行篇・番所の務めと、勇に走りすぎない戒め一番所にて、しきりにねふたき時は早々さますべし、又番代りにゆく時、いかほど雨風はげしくとも、あまやどりすべからず、張番所或は門前へ乞食來らば、はやく追出すべし、惣じて大事の番所へ、親類たりとも、他所より來れる人は、遠慮すべき事也、一軍頭にて若武者の臆したるよりは、少氣早なるほどはよし、されどみだりに進むばかりをよしとおもふべからず、下知につかざれば功も不忠となるべし、軍不案內の人は、日比覺ゝの沙汰ある人につきてとふべし、又初心の人を手引し、足塲道筋など見に出る時は、先にたちてゆき、跡にさがりて歸るべし、假令難儀におよぶとても、初心の人を捨置ては歸るべからず、凡勇士は己が功にほこらず、眼は采幣につけ、耳は金鼓によせて、進退みな號令にまかすべし、