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武家拾要記抄録 / 明倫篇・家長・物頭の心得と家中の統制

一弓馬の家長と生れては、朝には寅の刻に起て身を清め、衣服をあらため諸人に對し、終日禮義おこたらず、飲食時を失ふべからず、物頭物奉行たるものは、まづ其家の法度軍法をよく心得、太平の時に當りて制法軍利の手番までよく吟味すべし、家老物頭たる者、その外同役の者は、相互に軍令云合すべし、聊私の意趣遺恨あるべからず、一下々には其主人たる者、法度軍令等よく申ふくむべし、尤家中の中間小者、戰場にをゐては、わが主人の左右を離れずして、鎗脇を救ふべし、若その主人討死したりとも、其組を離れず、敵を討取る者をば是を賞すべし、若主人をすてゝ逃去る者は、その科重かるべし、

新字:一弓馬の家長と生れては、朝には寅の刻に起て身を清め、衣服をあらため諸人に対し、終日礼義おこたらず、飲食時を失ふべからず、物頭物奉行たるものは、まづ其家の法度軍法をよく心得、太平の時に当りて制法軍利の手番までよく吟味すべし、家老物頭たる者、その外同役の者は、相互に軍令云合すべし、聊私の意趣遺恨あるべからず、一下々には其主人たる者、法度軍令等よく申ふくむべし、尤家中の中間小者、戦場にをゐては、わが主人の左右を離れずして、鎗脇を救ふべし、若その主人討死したりとも、其組を離れず、敵を討取る者をば是を賞すべし、若主人をすてゝ逃去る者は、その科重かるべし、

書き下し

一弓馬の家長と生れては、朝には寅の刻に起て身を清め、衣服をあらため諸人に對し、終日禮義おこたらず、飲食時を失ふべからず、物頭物奉行たるものは、まづ其家の法度軍法をよく心得、太平の時に當りて制法軍利の手番までよく吟味すべし、家老物頭たる者、その外同役の者は、相互に軍令云合すべし、聊私の意趣遺恨あるべからず、一下々には其主人たる者、法度軍令等よく申ふくむべし、尤家中の中間小者、戰場にをゐては、わが主人の左右を離れずして、鎗脇を救ふべし、若その主人討死したりとも、其組を離れず、敵を討取る者をば是を賞すべし、若主人をすてゝ逃去る者は、その科重かるべし、

現代語訳

一つ、弓馬の家の長として生まれたなら、朝は寅の刻に起きて身を清め、衣服を改めて人に対し、終日礼義を怠ってはなりません。飲食の時を失ってはなりません。物頭・物奉行である者は、まずその家の法度・軍法をよく心得、太平の時にあたっても、制法・軍利の手番(手順)まで十分に吟味すべきです。家老・物頭である者、そのほか同役の者は、互いに軍令を言い合わせるべきです。少しも私的な意趣や遺恨があってはなりません。一つ、下々には、その主人たる者が法度・軍令などをよく言い含めるべきです。とりわけ家中の中間・小者は、戦場においては主人の左右を離れず、鑓脇を救うべきです。もしその主人が討死しても、その組を離れず、敵を討ち取った者は賞すべきです。もし主人を捨てて逃げ去る者は、その科は重いものとすべきです。

解説

家の長が朝早く起きて身を清め、終日礼儀を怠らず、飲食の時を失わないという生活の規律から始まり、役職者が規則や手順を平時から吟味すること、同役同士が意思疎通し私的な遺恨を持たないこと、下の者に主人がよく言い含めることを説きます。戦場の働きへの賞罰も定められます。現代の管理職にとっても、自分の生活を整えることは判断力の土台です。平時に手順を見直し、同僚との間に私情を持ち込まず、現場の担当者にまで方針を伝え切る姿勢が、いざというときの組織の動きを決めます。
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この章句が説くこと

『武家拾要記抄録』山本屠竜軒家長の心得規律同役平時の備え

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