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武人訓抄録 / 虚心に義理を察する

一武學致精の要は、唯心を虛にし氣を平かにして徐に義理の所在を察するにあり、若夫可取ものは、樵夫漁者の言といへども、所不廢あり、若夫可疑ものは、賢君良將の言といへども、亦さらに審繹を加へ、骨髓の美談と毛髮の小說と、其さかひをよく〱躰認し、事々物々本源を糺し、名聞遊戲の私意を離れて、取舍自然の公理にしたがはむとのみ、日新に工夫し平生に思慮すべし、

新字:一武学致精の要は、唯心を虚にし気を平かにして徐に義理の所在を察するにあり、若夫可取ものは、樵夫漁者の言といへども、所不廃あり、若夫可疑ものは、賢君良将の言といへども、亦さらに審繹を加へ、骨髄の美談と毛髪の小説と、其さかひをよく〱体認し、事々物々本源を糺し、名聞遊戯の私意を離れて、取舎自然の公理にしたがはむとのみ、日新に工夫し平生に思慮すべし、

書き下し

一武學致精の要は、唯心を虛にし氣を平かにして徐に義理の所在を察するにあり、若夫可取ものは、樵夫漁者の言といへども、所不廢あり、若夫可疑ものは、賢君良將の言といへども、亦さらに審繹を加へ、骨髓の美談と毛髮の小說と、其さかひをよく〱躰認し、事々物々本源を糺し、名聞遊戲の私意を離れて、取舍自然の公理にしたがはむとのみ、日新に工夫し平生に思慮すべし、

現代語訳

武学を精密にする要は、ただ心を虚しくし気を平らかにして、ゆっくりと義理のあるところを察することにあります。取るべきものは、きこりや漁師の言葉であっても廃してはなりません。疑うべきものは、賢君や良将の言葉であっても、さらに詳しく吟味を加え、骨髄に当たる美談と毛髪にすぎない小説との境をよくよく体認し、事々物々の根本を糺し、名声や遊びの私意を離れて、取捨を自然の公理に従わせようとだけ、日々新たに工夫し、普段から思慮しなさい。

解説

虚心で義理を察し、きこりや漁師の言でも良ければ採り、賢君良将の言でも疑わしければ吟味せよ、と説く章です。権威や出所でなく、中身の理で判断する姿勢です。名声や遊びの私意を離れ、取捨を公理に従わせるという点が要です。現代の組織では、役職や経験の長さで意見の重みが決まりがちです。管理職は、若手や現場の一言に本質があり得ると考え、逆に大物の発言も事実と根拠で確かめるべきです。心を静めて聞く習慣が、判断の質を保ちます。

この章句が説くこと

虚心義理吟味取捨公理私意

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