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武人訓抄録 / 忠義を宗とし士道を修める

一凡士臣の君主につかふまつる道、忠義を宗として、不誣るゝ事なくば、何れの術をもてすとも、强て謗るべきにはあらず、然れども、士は士の道を修し、士の敎を承て、つかへむ事最も慊かるべし、放下戲論の技術はいふにたらず、たとひ老釋の道をもて、其君に崇信せられ、又は閑偸の能を得て、其主に寵遇せらるとも、士道の本意とは爲べからず、其可否よろしく辨正せば、造次にも顚沛にも、武義の德、弓馬の藝、懈たらず精練し、よく天爵を脩て後、人爵のいたるを需べし、

新字:一凡士臣の君主につかふまつる道、忠義を宗として、不誣るゝ事なくば、何れの術をもてすとも、強て謗るべきにはあらず、然れども、士は士の道を修し、士の教を承て、つかへむ事最も慊かるべし、放下戯論の技術はいふにたらず、たとひ老釈の道をもて、其君に崇信せられ、又は閑偸の能を得て、其主に寵遇せらるとも、士道の本意とは為べからず、其可否よろしく弁正せば、造次にも顛沛にも、武義の徳、弓馬の芸、懈たらず精練し、よく天爵を脩て後、人爵のいたるを需べし、

書き下し

一凡士臣の君主につかふまつる道、忠義を宗として、不誣るゝ事なくば、何れの術をもてすとも、强て謗るべきにはあらず、然れども、士は士の道を修し、士の敎を承て、つかへむ事最も慊かるべし、放下戲論の技術はいふにたらず、たとひ老釋の道をもて、其君に崇信せられ、又は閑偸の能を得て、其主に寵遇せらるとも、士道の本意とは爲べからず、其可否よろしく辨正せば、造次にも顚沛にも、武義の德、弓馬の藝、懈たらず精練し、よく天爵を脩て後、人爵のいたるを需べし、

現代語訳

すべて臣下が主君に仕える道は、忠義を根本とし、偽りがなければ、どのような方法を用いても、あえてそしるべきではありません。しかし、士は士の道を修め、士の教えを受けて仕えることが最もふさわしいことです。道化や戯論のような技術は論じるに足りません。たとえ老荘や釈氏の道で主君に信じ崇められ、あるいは余技の才能で主君に寵愛されたとしても、士道の本意とはなりません。その可否をよく弁えて正し、とっさの時にも倒れそうな時にも、武義の徳と弓馬の芸を怠らず練り上げ、よく天から授かった徳を修めた後に、人から与えられる爵位が来るのを待つべきです。

解説

仕える者の根本は忠義であり、そのうえで士は士の道を修めて仕えるのが筋だと説く章です。主君に気に入られる余技や、他の教えに寄った処世は士道の本意ではないとします。孟子の天爵と人爵の区別を踏まえ、先に徳と技を積めば地位は後からついてくると言います。現代でも、上司への受けや社内での立ち回りを先にすると、本業の実力が空洞化します。管理職は、評価を得る手段より先に、自分の職分の力を磨いているかを点検したいものです。

この章句が説くこと

忠義士道天爵人爵武義弓馬

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