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武学啓蒙 / 論・軍法の由来と水錬を怠らぬ心

按ずるに、軍法、武功と云こと、遠くは、天神降臨の昔しより細矛千足の邦にして、弓箭の道、四海に勝れたる神威、數千の、世を累ねても、たへず、今に三つの裁配八重の法、及び方圓の規矩等の、くさ〱、神武、軍法本、大星の大事、めたか、をたか、をこしずみの傳へ、歷々としてあり、是まつりごとの本なり、故に不廷を、異域に、征伐ありし事迹、遺唐諸賢の前、遙の上世にあり、異域の法傳は、吉備、大江あり、其後、大江傳、最も著る、其書の略、幸ひ家に傳ふるあれども、中古の時、知識と云こと、釋氏に屬せしにより、物事、皆彼道と、混淆し、本末紛亂せしこと、一ならず、近古には甲州の一流あり、繼承の諸人、潤色の功、やゝ備るものと云べし、方今文明の化、舶來の兵書、孫吳以下、誠に、汗牛充棟せり、此時もし兵機を知れる學者、徒らに、學者めきたるを、事とせず、平心にして、本を考へ、俗をしらべ、能其術を、ひろめば、萬につき、たらざる所なかるべし、又水戰の學は、海ある邊疆、こゝに、すぎたる、要務なし、予營て、家に傳る、四邊詳覽圖説に、本づき、三島諸流に、わたり、諸外國の軍器に及び、彼此を斟酌し、當海管見、並に、神功餘勇志等を、編めり、最も水學に志あらんものは、水煉と云こと、必幼年に、早く試むべし、やむことを得ざる時は、浮道具、なきにはあらず、但自然に、しくものなきこと、絲竹の、肉に、及ばざる如し、たとひ、いかなる、强勇ありとも、水心なきものは、水戰に、恥を受ること、多かるべし、盛衰記、鞆の六郎、信長記の、岩成の類、みるべし、昔しの水陸、武功、拔群なりし人の如くには、あらずとも、其願なきは、武士にあらずと、知べし、(水れんのこと、予が、武備要畧にくはしく、これをろんぜり、)又、次にある、容家と云もの、中古、足利氏の盛なりし時、武士のために、設けたる禮にて、百箇條、二十五段、三儀、五綱など云、

新字:按ずるに、軍法、武功と云こと、遠くは、天神降臨の昔しより細矛千足の邦にして、弓箭の道、四海に勝れたる神威、数千の、世を累ねても、たへず、今に三つの裁配八重の法、及び方円の規矩等の、くさ〱、神武、軍法本、大星の大事、めたか、をたか、をこしずみの伝へ、歴々としてあり、是まつりごとの本なり、故に不廷を、異域に、征伐ありし事迹、遺唐諸賢の前、遥の上世にあり、異域の法伝は、吉備、大江あり、其後、大江伝、最も著る、其書の略、幸ひ家に伝ふるあれども、中古の時、知識と云こと、釈氏に属せしにより、物事、皆彼道と、混淆し、本末紛乱せしこと、一ならず、近古には甲州の一流あり、継承の諸人、潤色の功、やゝ備るものと云べし、方今文明の化、舶来の兵書、孫呉以下、誠に、汗牛充棟せり、此時もし兵機を知れる学者、徒らに、学者めきたるを、事とせず、平心にして、本を考へ、俗をしらべ、能其術を、ひろめば、万につき、たらざる所なかるべし、又水戦の学は、海ある辺疆、こゝに、すぎたる、要務なし、予営て、家に伝る、四辺詳覧図説に、本づき、三島諸流に、わたり、諸外国の軍器に及び、彼此を斟酌し、当海管見、並に、神功余勇志等を、編めり、最も水学に志あらんものは、水煉と云こと、必幼年に、早く試むべし、やむことを得ざる時は、浮道具、なきにはあらず、但自然に、しくものなきこと、糸竹の、肉に、及ばざる如し、たとひ、いかなる、強勇ありとも、水心なきものは、水戦に、恥を受ること、多かるべし、盛衰記、鞆の六郎、信長記の、岩成の類、みるべし、昔しの水陸、武功、抜群なりし人の如くには、あらずとも、其願なきは、武士にあらずと、知べし、(水れんのこと、予が、武備要略にくはしく、これをろんぜり、)又、次にある、容家と云もの、中古、足利氏の盛なりし時、武士のために、設けたる礼にて、百箇条、二十五段、三儀、五綱など云、

書き下し

按ずるに、軍法、武功と云こと、遠くは、天神降臨の昔しより細矛千足の邦にして、弓箭の道、四海に勝れたる神威、數千の、世を累ねても、たへず、今に三つの裁配八重の法、及び方圓の規矩等の、くさ〱、神武、軍法本、大星の大事、めたか、をたか、をこしずみの傳へ、歷々としてあり、是まつりごとの本なり、故に不廷を、異域に、征伐ありし事迹、遺唐諸賢の前、遙の上世にあり、異域の法傳は、吉備、大江あり、其後、大江傳、最も著る、其書の略、幸ひ家に傳ふるあれども、中古の時、知識と云こと、釋氏に屬せしにより、物事、皆彼道と、混淆し、本末紛亂せしこと、一ならず、近古には甲州の一流あり、繼承の諸人、潤色の功、やゝ備るものと云べし、方今文明の化、舶來の兵書、孫吳以下、誠に、汗牛充棟せり、此時もし兵機を知れる學者、徒らに、學者めきたるを、事とせず、平心にして、本を考へ、俗をしらべ、能其術を、ひろめば、萬につき、たらざる所なかるべし、又水戰の學は、海ある邊疆、こゝに、すぎたる、要務なし、予營て、家に傳る、四邊詳覽圖説に、本づき、三島諸流に、わたり、諸外國の軍器に及び、彼此を斟酌し、當海管見、並に、神功餘勇志等を、編めり、最も水學に志あらんものは、水煉と云こと、必幼年に、早く試むべし、やむことを得ざる時は、浮道具、なきにはあらず、但自然に、しくものなきこと、絲竹の、肉に、及ばざる如し、たとひ、いかなる、强勇ありとも、水心なきものは、水戰に、恥を受ること、多かるべし、盛衰記、鞆の六郎、信長記の、岩成の類、みるべし、昔しの水陸、武功、拔群なりし人の如くには、あらずとも、其願なきは、武士にあらずと、知べし、(水れんのこと、予が、武備要畧にくはしく、これをろんぜり、)又、次にある、容家と云もの、中古、足利氏の盛なりし時、武士のために、設けたる禮にて、百箇條、二十五段、三儀、五綱など云、

現代語訳

按じますに、軍法や武功ということは、遠くは天神降臨の昔から、細矛千足の国として、弓箭の道が四海に勝れた神威として、数千の代を重ねても絶えず、今に三つの裁配、八重の法、および方円の規矩などのくさぐさ、神武、軍法本、大星の大事、めたか、おたか、おこしずみの伝えが、はっきりと残っています。これは政の本です。ゆえに、朝廷に従わない者を異国で征伐された事跡は、遣唐使の諸賢より前の、はるかな上世にあります。異国の法の伝えには吉備(吉備真備)や大江がおり、その後、大江伝が最も著名です。その書の概略は、幸いわが家に伝わるものがありますが、中古の時代に、知識ということが仏教に属するようになったため、物事がみなその道と混ざり合い、本末が乱れたことは一つではありません。近古には甲州の一流があり、受け継いだ人々が手を加えた功は、ややそなわったというべきです。今、文明の世となり、舶来の兵書は、孫呉(孫子・呉子)以下、まことに汗牛充棟(蔵書が非常に多いこと)です。この時、もし兵の機微を知る学者が、いたずらに学者ぶることを事とせず、平静な心で本を考え、世俗を調べ、よくその術を広めれば、万事につき足りないところはないでしょう。また、水戦の学は、海のある辺境では、これに過ぎる要務はありません。私は家に伝わる『四辺詳覧図説』に基づいて営み、三島の諸流にわたり、諸外国の軍器にも及び、あれこれ斟酌して、『当海管見』ならびに『神功余勇志』などを編みました。とりわけ水学に志のある者は、水錬(泳ぎの鍛錬)ということを必ず幼年のうちに早く試すべきです。やむを得ないときには浮き道具がないではありませんが、ただ自然のままに及ぶものがないのは、糸竹(管弦)が肉声に及ばないようなものです。たとえどれほど強勇でも、水心(水に慣れた心)のない者は、水戦で恥を受けることが多いのです。『盛衰記』の鞆の六郎、『信長記』の岩成の類を見てください。昔の水陸の武功が抜群だった人のようにはなれなくとも、その願いのない者は武士ではないと知りなさい。(水錬のことは、私の『武備要略』にくわしく論じました。)また、次にある容家というもの、中古の足利氏が盛んだったとき、武士のために設けた礼で、百箇条、二十五段、三儀、五綱などと言います。

解説

軍法の由来を神代にさかのぼって述べ、その伝えが残ることを政の本としています。国の来歴を誇る書きぶりは当時の見方として読み、ここで学べるのは、学者ぶらず平静に原典を調べ、実用に広めよという姿勢です。また水戦と水錬を幼年に試せと説く点は、備えは早く、体で覚えるものという教えです。管理職に置き換えれば、舶来の理論を並べるより自社の現場に合う形で身につけること、そして想定外の事態に備えた訓練を、余裕のある平時に始めることが大切です。
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人生を、一行の式にしてみた。

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この章句が説くこと

『武学啓蒙』力丸東山軍法水錬水戦備え

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