武学啓蒙 / 武士の恥べき十七箇條・恥ずべき十七箇条その一から十まで
一には、戰場に、おくれを、とるは、いふまでもなし、常にて惡き虛偽を、つき、或は人の、なかごとを、わるく、いひなすこと、平生の戒め、虛僞の恥たる、道理を知らしむるは、武士の根本を、正すなるべし、二には、頭を、はられても、はりても、其首尾、わきまへざること、前後、分別なき、ふつごうと云ことを恥る、戒めなるべし、三には、ざしきにても、路次にても、武道、たてひきの禮を忘るゝこと、人として、禮なき、死せずして、何をかせんと云こと、人々皆同じけれども、わけて武士には、弓箭とる身の格といへる、一派の直道あり、此義を、しらず、胡亂の言行、慮外なるは、狗士とよばれて、大なる恥とす、此等のたぐひを、戒むるなるべし、四には、主、親、兄弟の、かたきを、忘るゝこと、手ぢかく義をみて、せざるを、恥とするなるべし、復讐のことは、余嘗て論ずるものあれども、其言ながきゆへ、こゝには、もらせり、五には、かんにんすべき義を、かんにんせず、又かんにんすまじき義を、かんにんすること、武士道、ふぎんみにして、心の守なく、物事、大はづなるを、恥とするなるべし、六には、わびごとすべき義を、緩怠にして、わびごとせざる、ふこゝろがけのこと、早く己が非義、あやまちと云ことをも、なほざりにする不屆を、恥とするなるべし、七には、祓官の者等の、わろきことをも、打やりしにし、又ほむべき筋をも、よそにすること、凡そ人に上たる身分の、賞罰、正しからざるを、恥とするなるべし、八には、兵器なれども、不義、とんよく、のみにして、人を、だしぬくこと、戰場といふとも、わけもなき、唯一己の慾心、人を奸計に、のするを、恥とするなるべし、九には、人の、てがらをねたみ、或は、みかたの陷るを、みぬ、かほすること、己に、まされるを嫉む、女氣性と、人の、すきまあるを喜ぶ、盜根性を、恥とするなるべし、十には、小身者、及び武の功名、高からざる人、色このむこと、
新字:一には、戦場に、おくれを、とるは、いふまでもなし、常にて悪き虚偽を、つき、或は人の、なかごとを、わるく、いひなすこと、平生の戒め、虚偽の恥たる、道理を知らしむるは、武士の根本を、正すなるべし、二には、頭を、はられても、はりても、其首尾、わきまへざること、前後、分別なき、ふつごうと云ことを恥る、戒めなるべし、三には、ざしきにても、路次にても、武道、たてひきの礼を忘るゝこと、人として、礼なき、死せずして、何をかせんと云こと、人々皆同じけれども、わけて武士には、弓箭とる身の格といへる、一派の直道あり、此義を、しらず、胡乱の言行、慮外なるは、狗士とよばれて、大なる恥とす、此等のたぐひを、戒むるなるべし、四には、主、親、兄弟の、かたきを、忘るゝこと、手ぢかく義をみて、せざるを、恥とするなるべし、復讐のことは、余嘗て論ずるものあれども、其言ながきゆへ、こゝには、もらせり、五には、かんにんすべき義を、かんにんせず、又かんにんすまじき義を、かんにんすること、武士道、ふぎんみにして、心の守なく、物事、大はづなるを、恥とするなるべし、六には、わびごとすべき義を、緩怠にして、わびごとせざる、ふこゝろがけのこと、早く己が非義、あやまちと云ことをも、なほざりにする不届を、恥とするなるべし、七には、祓官の者等の、わろきことをも、打やりしにし、又ほむべき筋をも、よそにすること、凡そ人に上たる身分の、賞罰、正しからざるを、恥とするなるべし、八には、兵器なれども、不義、とんよく、のみにして、人を、だしぬくこと、戦場といふとも、わけもなき、唯一己の慾心、人を奸計に、のするを、恥とするなるべし、九には、人の、てがらをねたみ、或は、みかたの陥るを、みぬ、かほすること、己に、まされるを嫉む、女気性と、人の、すきまあるを喜ぶ、盗根性を、恥とするなるべし、十には、小身者、及び武の功名、高からざる人、色このむこと、
書き下し
一には、戰場に、おくれを、とるは、いふまでもなし、常にて惡き虛偽を、つき、或は人の、なかごとを、わるく、いひなすこと、平生の戒め、虛僞の恥たる、道理を知らしむるは、武士の根本を、正すなるべし、二には、頭を、はられても、はりても、其首尾、わきまへざること、前後、分別なき、ふつごうと云ことを恥る、戒めなるべし、三には、ざしきにても、路次にても、武道、たてひきの禮を忘るゝこと、人として、禮なき、死せずして、何をかせんと云こと、人々皆同じけれども、わけて武士には、弓箭とる身の格といへる、一派の直道あり、此義を、しらず、胡亂の言行、慮外なるは、狗士とよばれて、大なる恥とす、此等のたぐひを、戒むるなるべし、四には、主、親、兄弟の、かたきを、忘るゝこと、手ぢかく義をみて、せざるを、恥とするなるべし、復讐のことは、余嘗て論ずるものあれども、其言ながきゆへ、こゝには、もらせり、五には、かんにんすべき義を、かんにんせず、又かんにんすまじき義を、かんにんすること、武士道、ふぎんみにして、心の守なく、物事、大はづなるを、恥とするなるべし、六には、わびごとすべき義を、緩怠にして、わびごとせざる、ふこゝろがけのこと、早く己が非義、あやまちと云ことをも、なほざりにする不屆を、恥とするなるべし、七には、祓官の者等の、わろきことをも、打やりしにし、又ほむべき筋をも、よそにすること、凡そ人に上たる身分の、賞罰、正しからざるを、恥とするなるべし、八には、兵器なれども、不義、とんよく、のみにして、人を、だしぬくこと、戰場といふとも、わけもなき、唯一己の慾心、人を奸計に、のするを、恥とするなるべし、九には、人の、てがらをねたみ、或は、みかたの陷るを、みぬ、かほすること、己に、まされるを嫉む、女氣性と、人の、すきまあるを喜ぶ、盜根性を、恥とするなるべし、十には、小身者、及び武の功名、高からざる人、色このむこと、
現代語訳
一には、戦場で後れを取るのはいうまでもなく、平時でも悪い虚偽をつき、あるいは人の仲を悪く言いなすこと。平生の戒めであり、虚偽が恥である道理を知らせることは、武士の根本を正すことでしょう。二には、頭をはられても、はっても、その首尾をわきまえないこと。前後の分別がない不都合ということを恥じる戒めでしょう。三には、座敷でも路次でも、武道・立て引きの礼を忘れること。人として礼なき者は死なずして何をかせん、ということは人々みな同じですが、とりわけ武士には「弓箭取る身の格」という一派の直道があります。この義を知らず、でたらめな言行で無礼なのは、狗士と呼ばれて大きな恥とします。この類を戒めるのでしょう。四には、主・親・兄弟の敵を忘れること。身近に義を見てしないのを恥とするのでしょう。復讐のことは私がかつて論じたものがありますが、その言が長いのでここには省きます。五には、堪忍すべき義を堪忍せず、また堪忍してはならない義を堪忍すること。武士道を吟味せず、心の守りがなく、物事が大外れなのを恥とするのでしょう。六には、詫びるべき義をなおざりにして詫びない不心がけ。早く自分の非義・過ちをもなおざりにする不届きを恥とするのでしょう。七には、祓官の者などの悪いことをも打ち捨て、また誉めるべき筋をもよそにすること。およそ人の上に立つ身分の者の賞罰が正しくないのを恥とするのでしょう。八には、兵器でありながら、不義・貪欲のみで人を出し抜くこと。戦場といっても、わけもなく、ただ一己の欲心で人を奸計に乗せるのを恥とするのでしょう。九には、人の手柄を妬み、あるいは味方が陥るのを見て見ぬふりをすること。己に勝る者を嫉む女気性と、人の隙を喜ぶ盗根性を恥とするのでしょう。十には、小身の者、および武の功名の高くない人が色を好むこと、(次へ続く)
解説

人生を、一行の式にしてみた。
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