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武学啓蒙 / 武士の心得べき二十一箇條・二十一箇条その二・応対と虚言の戒め

一おほせ、いださるゝことあらば、遠くに伺候したりとも、早く あつと、おへんじを、もふし、やがて、お前へ、まひり、お側へ、はひより、いかにも、謹で承り、さて、いそぎ、まかりいで、その旨を、もふし、とゝのへ、おへんじ、ありのまゝに、言上し、私の口才を、まじゆべからず、但しことにより、此おへんじは、何と、もふし、よからんやと、思ふことあらば、宿老朋輩にも、問はかりて後に、もふしあぐべき儀、品と事とによりて、差響あるものと、心得べし、一お通りにて、物語などする人の、ほとりに居るは、よろしからず、まづは、かやうの場は、外へ、さくるやうにすべし、まして、我身、雜談虛笑などしては、上々のことは、もふすも、さらなり、朋輩にても、心ある人には、これらの、すじより、みかぎらるゝこと、あるものと、心得べし、一あまたに、つきあひて、事なかれと、いふ言あり、何ごとにも、通例には、己を出さず、人にしたがふを、よしとすべし、わけて、わかきものは、此心得、わするべからず、一少しの、ひまにも、家業の、ぎんみに、心をよせ、むだに、月日を、つひやす、まじきは、農工商、みな、しかることあり、まして、士なるもの、きつと心得べし、一宿老の、かた〱、おゑんは、勿論、伺候の時など、通らざれば、あたわざる用あらば、腰を折、或は手をつき、通るべし、はゞからぬ躰にて、あたりを、ふみならし、通るは、以の外の無禮なり、諸侍、いづれにも、禮儀ていねいに、いたすべきこと、一上へは、いふに及ばず、下へたいしても、虛言を、きつと愼むべし、もし人になゞされて、一言半句の虛も、一期の恥、すゝぎがたしと、心得べし、一奉公の、すきま、あらば、武藝は、いふまでもなし、大凡ものゝ本をも、よみ、歌の道なども、少しく學ぶべし、無手に、いやしくしては、一言にて、胸中の、あさまなるを、人に知れて、用を、かくこと、あるものと、心得べし、

新字:一おほせ、いださるゝことあらば、遠くに伺候したりとも、早く あつと、おへんじを、もふし、やがて、お前へ、まひり、お側へ、はひより、いかにも、謹で承り、さて、いそぎ、まかりいで、その旨を、もふし、とゝのへ、おへんじ、ありのまゝに、言上し、私の口才を、まじゆべからず、但しことにより、此おへんじは、何と、もふし、よからんやと、思ふことあらば、宿老朋輩にも、問はかりて後に、もふしあぐべき儀、品と事とによりて、差響あるものと、心得べし、一お通りにて、物語などする人の、ほとりに居るは、よろしからず、まづは、かやうの場は、外へ、さくるやうにすべし、まして、我身、雑談虚笑などしては、上々のことは、もふすも、さらなり、朋輩にても、心ある人には、これらの、すじより、みかぎらるゝこと、あるものと、心得べし、一あまたに、つきあひて、事なかれと、いふ言あり、何ごとにも、通例には、己を出さず、人にしたがふを、よしとすべし、わけて、わかきものは、此心得、わするべからず、一少しの、ひまにも、家業の、ぎんみに、心をよせ、むだに、月日を、つひやす、まじきは、農工商、みな、しかることあり、まして、士なるもの、きつと心得べし、一宿老の、かた〱、おゑんは、勿論、伺候の時など、通らざれば、あたわざる用あらば、腰を折、或は手をつき、通るべし、はゞからぬ体にて、あたりを、ふみならし、通るは、以の外の無礼なり、諸侍、いづれにも、礼儀ていねいに、いたすべきこと、一上へは、いふに及ばず、下へたいしても、虚言を、きつと慎むべし、もし人になゞされて、一言半句の虚も、一期の恥、すゝぎがたしと、心得べし、一奉公の、すきま、あらば、武芸は、いふまでもなし、大凡ものゝ本をも、よみ、歌の道なども、少しく学ぶべし、無手に、いやしくしては、一言にて、胸中の、あさまなるを、人に知れて、用を、かくこと、あるものと、心得べし、

書き下し

一おほせ、いださるゝことあらば、遠くに伺候したりとも、早く あつと、おへんじを、もふし、やがて、お前へ、まひり、お側へ、はひより、いかにも、謹で承り、さて、いそぎ、まかりいで、その旨を、もふし、とゝのへ、おへんじ、ありのまゝに、言上し、私の口才を、まじゆべからず、但しことにより、此おへんじは、何と、もふし、よからんやと、思ふことあらば、宿老朋輩にも、問はかりて後に、もふしあぐべき儀、品と事とによりて、差響あるものと、心得べし、一お通りにて、物語などする人の、ほとりに居るは、よろしからず、まづは、かやうの場は、外へ、さくるやうにすべし、まして、我身、雜談虛笑などしては、上々のことは、もふすも、さらなり、朋輩にても、心ある人には、これらの、すじより、みかぎらるゝこと、あるものと、心得べし、一あまたに、つきあひて、事なかれと、いふ言あり、何ごとにも、通例には、己を出さず、人にしたがふを、よしとすべし、わけて、わかきものは、此心得、わするべからず、一少しの、ひまにも、家業の、ぎんみに、心をよせ、むだに、月日を、つひやす、まじきは、農工商、みな、しかることあり、まして、士なるもの、きつと心得べし、一宿老の、かた〱、おゑんは、勿論、伺候の時など、通らざれば、あたわざる用あらば、腰を折、或は手をつき、通るべし、はゞからぬ躰にて、あたりを、ふみならし、通るは、以の外の無禮なり、諸侍、いづれにも、禮儀ていねいに、いたすべきこと、一上へは、いふに及ばず、下へたいしても、虛言を、きつと愼むべし、もし人になゞされて、一言半句の虛も、一期の恥、すゝぎがたしと、心得べし、一奉公の、すきま、あらば、武藝は、いふまでもなし、大凡ものゝ本をも、よみ、歌の道なども、少しく學ぶべし、無手に、いやしくしては、一言にて、胸中の、あさまなるを、人に知れて、用を、かくこと、あるものと、心得べし、

現代語訳

一、仰せ出されることがあれば、遠くに伺候していても、早く「はっ」とお返事を申し上げ、やがて御前へ参り、お側へ這い寄り、できるだけつつしんで承り、さて急いで退出し、その旨を取り計らい、整え、お返事をありのままに言上し、自分の口才を交えてはなりません。ただし事によっては、このお返事は何と申してよいだろうかと思うことがあれば、宿老や朋輩にも相談したうえで申し上げるべきです。品と事によって差し響きがあると心得なさい。一、お通りで物語などをする人のそばに居るのはよくありません。まず、このような場は避けるようにしなさい。まして自分が雑談や虚笑などしては、上々のことは申すまでもなく、朋輩でも心ある人には、こうした筋から見限られることがあると心得なさい。一、「大勢に付き合って事なかれ」という言葉があります。何事にも通例では、己を出さず、人に従うのをよしとしなさい。とりわけ若い者はこの心得を忘れてはなりません。一、少しの暇にも家業の吟味に心を寄せ、無駄に月日を費やしてはなりません。農工商もみなそうであり、まして士たる者はきっと心得なさい。一、宿老の方々のお縁はもちろん、伺候の時など、通らなければならない用があれば、腰を折り、あるいは手をついて通りなさい。はばからぬ様子で辺りを踏み鳴らして通るのは、もってのほかの無礼です。諸侍のどなたに対しても、礼儀を丁寧にすべきこと。一、上へはいうまでもなく、下に対しても虚言をきっと慎みなさい。もし人に非難されて、一言半句の虚でも、一生の恥、すすぎがたいと心得なさい。一、奉公の暇があれば、武芸はいうまでもなく、おおよそ書物をも読み、歌の道なども少し学びなさい。無手に、いやしくしていては、一言で胸中の浅さを人に知られ、用を欠くことがあると心得なさい。

解説

命を受けるときは素早く応じ、聞いた内容を自分の口才で飾らずにありのまま伝え、迷えば先輩や同僚に相談してから答えるという、報連相の基本が説かれます。下の者に対しても虚言を慎み、一言の偽りも一生の恥と心得よとする点が重要です。管理職は、上への報告で自分に都合のよい脚色をしないこと、部下への約束で誇張しないことが信用の土台になります。暇があれば書を読み教養を磨く勧めも、人間の厚みを作る実践です。
『人生の方程式』の表紙

人生を、一行の式にしてみた。

志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。

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この章句が説くこと

『武学啓蒙』力丸東山二十一箇条応対虚言礼儀

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