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武道初心集 / 陪從

奉公を仕る武士。主君御旅行の御供を致し。泊りへ着候に於ては。其所の者をかたらひ。近所に見ゆる。山林寺宮などを目當にして。東西を問尋ね御本陣より何方に當りて。いか樣の廣き塲所有之。道筋は箇樣とまでをも。日の暮前に何となく見分致し。篤と心得罷在義肝要に候。子細は。夜中急火などの節。主君俄に御立退被成刻。御先に立て。御案内可申上が爲に候。扨又其身歩行にて御供を勤る節は。上り坂にては御先に立。下り坂にては御跡に立心得などは。尤輕き事ながらも。奉公の一つに候。右の如くの義を以て。手懸りと致し思案をめぐらし。迚も奉公を仕る身と罷成からは何がな一奉公もがなと。朝暮油斷なく心掛勵み候は。武士の本意に候。初心の武士心得のため仍如件。

新字:奉公を仕る武士。主君御旅行の御供を致し。泊りへ着候に於ては。其所の者をかたらひ。近所に見ゆる。山林寺宮などを目当にして。東西を問尋ね御本陣より何方に当りて。いか様の広き塲所有之。道筋は箇様とまでをも。日の暮前に何となく見分致し。篤と心得罷在義肝要に候。子細は。夜中急火などの節。主君俄に御立退被成刻。御先に立て。御案内可申上が為に候。扨又其身歩行にて御供を勤る節は。上り坂にては御先に立。下り坂にては御跡に立心得などは。尤軽き事ながらも。奉公の一つに候。右の如くの義を以て。手懸りと致し思案をめぐらし。迚も奉公を仕る身と罷成からは何がな一奉公もがなと。朝暮油断なく心掛励み候は。武士の本意に候。初心の武士心得のため仍如件。

書き下し

奉公を仕る武士。主君御旅行の御供を致し。泊りへ着候に於ては。其所の者をかたらひ。近所に見ゆる。山林寺宮などを目當にして。東西を問尋ね御本陣より何方に當りて。いか樣の廣き塲所有之。道筋は箇樣とまでをも。日の暮前に何となく見分致し。篤と心得罷在義肝要に候。子細は。夜中急火などの節。主君俄に御立退被成刻。御先に立て。御案内可申上が爲に候。扨又其身歩行にて御供を勤る節は。上り坂にては御先に立。下り坂にては御跡に立心得などは。尤輕き事ながらも。奉公の一つに候。右の如くの義を以て。手懸りと致し思案をめぐらし。迚も奉公を仕る身と罷成からは何がな一奉公もがなと。朝暮油斷なく心掛勵み候は。武士の本意に候。初心の武士心得のため仍如件。

現代語訳

奉公をする武士は、主君のお旅の供をして、泊まりの地に着いたときは、その土地の者と親しくなり、近所に見える山林や寺社を目当てにして、東西を尋ね、御本陣からどちらの方角にあたって、どのような広い場所があるか、道筋はこうだということまでを、日の暮れる前にそれとなく見分して、よく心得ておくことが肝要です。そのわけは、夜中に急な火事などがあって主君が急に立ち退かれるとき、先に立ってご案内を申し上げるためです。また、自分が徒歩で供を勤めるときは、上り坂では先に立ち、下り坂では後ろに立つ心得などは、ごく軽いことですが、これも奉公の一つです。このようなことを手がかりとして思案をめぐらし、せっかく奉公をする身になったからには、何か一つでも奉公がしたいと、朝晩油断なく心がけ励むのが、武士の本意です。初心の武士の心得のために、以上のとおりである。

解説

この段は、お旅の供の場面で、主君の身を守るために何ができるかを、細かく具体的に示しています。泊まりの地に着いたら日の暮れる前に、山林や寺社を目印にして本陣の周囲を見分し、夜中の急火にそなえて退き先と道筋を頭に入れておく。歩いて供をするときは、上り坂では先に立ち、下り坂では後ろに立つ、という軽い心得も奉公の一つだとします。友山が求めているのは、命じられていない備えを自分で探すことです。現代でも、出張や会合の会場に着いたら、非常口や避難経路を見ておくことなどがこれに当たります。指示を待たずに一つでも役に立とうとする姿勢が、組織の安全を支えています。

この章句が説くこと

備えお供見分気配り奉公武道初心集

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