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武道初心集 / 從僕著具

小身なる武士は。不慮の變有之刻も。人多く召連候義無之ゆゑ。鎗壹本より外には。持する義成らず候。もし其鎗折損じ候に於ては。持鎗に事を欠は定り事に候。去るに依て。兼て袋鎗の身を支度仕り。柄には竹を仕すげ候てなり共。當用の間に合せ候心掛尤に候。且又少々疵有之候ても。作り丈夫にして。寸の延たる刀を用意して。下人共にさゝせ。若黨には胴丸鉢鐵。小者中間には胸懸。鉢卷。又は鐵笠など。輕き身の圍ひを致して取らせ候は。小身武士の心掛共可申候。扨又太刀打の勝負を遂るには。具足冑の上といふ見合も無之候へば。大方は刀を打折。指替に事を欠事も無くては不叶候。去るに依て。我が指替の刀を若黨にさゝせ。若黨の刀を草履取。又は馬の口取などにさゝせて召連尤に候。初心の武士心得のため仍如件。

新字:小身なる武士は。不慮の変有之刻も。人多く召連候義無之ゆゑ。鎗壱本より外には。持する義成らず候。もし其鎗折損じ候に於ては。持鎗に事を欠は定り事に候。去るに依て。兼て袋鎗の身を支度仕り。柄には竹を仕すげ候てなり共。当用の間に合せ候心掛尤に候。且又少々疵有之候ても。作り丈夫にして。寸の延たる刀を用意して。下人共にさゝせ。若党には胴丸鉢鉄。小者中間には胸懸。鉢巻。又は鉄笠など。軽き身の囲ひを致して取らせ候は。小身武士の心掛共可申候。扨又太刀打の勝負を遂るには。具足冑の上といふ見合も無之候へば。大方は刀を打折。指替に事を欠事も無くては不叶候。去るに依て。我が指替の刀を若党にさゝせ。若党の刀を草履取。又は馬の口取などにさゝせて召連尤に候。初心の武士心得のため仍如件。

書き下し

小身なる武士は。不慮の變有之刻も。人多く召連候義無之ゆゑ。鎗壹本より外には。持する義成らず候。もし其鎗折損じ候に於ては。持鎗に事を欠は定り事に候。去るに依て。兼て袋鎗の身を支度仕り。柄には竹を仕すげ候てなり共。當用の間に合せ候心掛尤に候。且又少々疵有之候ても。作り丈夫にして。寸の延たる刀を用意して。下人共にさゝせ。若黨には胴丸鉢鐵。小者中間には胸懸。鉢卷。又は鐵笠など。輕き身の圍ひを致して取らせ候は。小身武士の心掛共可申候。扨又太刀打の勝負を遂るには。具足冑の上といふ見合も無之候へば。大方は刀を打折。指替に事を欠事も無くては不叶候。去るに依て。我が指替の刀を若黨にさゝせ。若黨の刀を草履取。又は馬の口取などにさゝせて召連尤に候。初心の武士心得のため仍如件。

現代語訳

小身の武士は、不慮の変事があるときも、多くの人を召し連れることがないので、鎗一本よりほかは持たせることができません。もしその鎗が折れ損じれば、持ち鎗に事欠くのは決まったことです。そのため、かねて袋鎗の身(穂先)を支度し、柄には竹を仕立てて挿げてでも、当座の間に合わせる心がけがもっともです。かつまた、少し疵があっても、作りが丈夫で、寸の延びた刀を用意して、下人たちに差させ、若党には胴丸・鉢鉄、小者・中間には胸懸・鉢巻、または鉄笠など、軽い身の囲いを作って与えておくのは、小身の武士の心がけと言うべきです。さてまた、太刀打ちの勝負をするには、具足・冑の上でという見合いもないので、おおかたは刀を打ち折り、差し替えに事欠くことがあってはなりません。そのため、自分の差し替えの刀を若党に差させ、若党の刀を草履取り、または馬の口取りなどに差させて召し連れるのがもっともです。初心の武士の心得のために、以上のとおりである。

解説

小身の武士が少ない供回りでどう備えるかを、具体的に述べた段です。鎗が折れたときのために穂先だけでも支度し、竹の柄を挿げてでも間に合わせる。刀は多少の疵があっても丈夫で長いものを用意し、若党や小者にも軽い防具を持たせる。さらに刀が折れる前提で、差し替えの刀を家来に差させて連れ歩くとあります。壊れることを見込んだ予備を、人的にも物的にも用意する発想です。現代なら、主力の担当者が欠けたときの代役やバックアップ、予備の機材といった備えにあたります。少人数の組織ほど、一つ欠けたときの手当てが要ります。

この章句が説くこと

予備小身従者備え代役武道初心集

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