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武道初心集 / 軍法戰法一

武士たらむものは。假令小身たり共。然るべき武者師を撰びて。兵法の傳授を致し。軍法戰法の奧秘に至るまで。委細に覺悟仕り罷在べき事に候。小身武士の軍法だて。不相應に思はるゝなど。申す者も有之候へ共。それは大きなる不吟味と可申候。子細を申すに。古今國郡の守護と仰がれ。良將の名を得玉ふ人々の中には。微賤孤獨より起りて。大業を立玉へる方々。いか程も有之候。然れば今とても。小身より仕出て立身を遂。一方の將とも罷成事の有間敷に非ず候。其上兵學を學び候へば。元來賢き者は益賢くなり。少々鈍き生れ付の者も。左のみ鈍なる事を申さぬ程には罷成物にて候。然れば武士は必ず兵學を仕るべき事に候。然りといへ共。兵法の修行を惡く仕り損ひ候へば功者づき候程我が智に高ぶり。寄障る人を見こなし。實理にもあらぬ。

新字:武士たらむものは。仮令小身たり共。然るべき武者師を撰びて。兵法の伝授を致し。軍法戦法の奥秘に至るまで。委細に覚悟仕り罷在べき事に候。小身武士の軍法だて。不相応に思はるゝなど。申す者も有之候へ共。それは大きなる不吟味と可申候。子細を申すに。古今国郡の守護と仰がれ。良将の名を得玉ふ人々の中には。微賤孤独より起りて。大業を立玉へる方々。いか程も有之候。然れば今とても。小身より仕出て立身を遂。一方の将とも罷成事の有間敷に非ず候。其上兵学を学び候へば。元来賢き者は益賢くなり。少々鈍き生れ付の者も。左のみ鈍なる事を申さぬ程には罷成物にて候。然れば武士は必ず兵学を仕るべき事に候。然りといへ共。兵法の修行を悪く仕り損ひ候へば功者づき候程我が智に高ぶり。寄障る人を見こなし。実理にもあらぬ。

書き下し

武士たらむものは。假令小身たり共。然るべき武者師を撰びて。兵法の傳授を致し。軍法戰法の奧秘に至るまで。委細に覺悟仕り罷在べき事に候。小身武士の軍法だて。不相應に思はるゝなど。申す者も有之候へ共。それは大きなる不吟味と可申候。子細を申すに。古今國郡の守護と仰がれ。良將の名を得玉ふ人々の中には。微賤孤獨より起りて。大業を立玉へる方々。いか程も有之候。然れば今とても。小身より仕出て立身を遂。一方の將とも罷成事の有間敷に非ず候。其上兵學を學び候へば。元來賢き者は益賢くなり。少々鈍き生れ付の者も。左のみ鈍なる事を申さぬ程には罷成物にて候。然れば武士は必ず兵學を仕るべき事に候。然りといへ共。兵法の修行を惡く仕り損ひ候へば功者づき候程我が智に高ぶり。寄障る人を見こなし。實理にもあらぬ。

現代語訳

武士たる者は、たとえ小身であっても、しかるべき武者師を選んで兵法の伝授を受け、軍法戦法の奥義に至るまで、詳しく覚悟しておくべきです。小身の武士が軍法を立てるのは不相応だと言う者もいますが、それは大きな考え違いというべきです。そのわけを申せば、古今、国や郡の守護と仰がれ、良将の名を得られた人々の中には、微賤孤独から身を起こして大業を成し遂げられた方々がいくらでもいます。ですから、今でも、小身から出世して一方の将ともなることがないとは言えません。そのうえ兵学を学べば、もともと賢い者はますます賢くなり、少し鈍い生まれつきの者も、さほど鈍いとは言われない程度にはなるものです。ですから武士は必ず兵学をするべきなのです。しかしながら、兵法の修行をうまくできないと、功者になるほど自分の知恵に高ぶり、人を見下し、実理でもない、

解説

友山は、小身の武士こそ師を選んで兵学を学び、奥義まで覚悟しておけと勧めます。理由は、名将の中にも微賤から身を起こした人が多く、今も小身から出世して一方の将になる可能性があるからです。さらに兵学は、賢い者をいっそう賢くし、鈍い者も人並みにすると、学ぶことの効用を述べます。最後は但し書きで、修行を中途半端にすると、功者になるほど知恵に高ぶる弊害を予告します。現代では、学びの機会は立場にかかわらず開かれるべきだという励ましとして読めます。同時に、少し知識がついた段階が最も危ういという、研修を設計する側の注意点も示しています。

この章句が説くこと

兵学小身学び出世修行武道初心集

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