武道便蒙録 / 卷之二・将を輔けとし君の三つの害を戒める
○孫子曰、夫將者國之輔也、輔周則國必强、輔隙則國必弱、故軍之所以患於君者三、不知軍之不可以進而謂之進、不知軍之不可以退、而謂之退、是謂麋軍、不知三軍之事、而同三軍之政、士惑矣、不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣、三軍既惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂亂軍引勝、故知勝有五、知可以與戰不可以與戰者勝、識衆寡之用者勝、上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、將能而君不御者勝、此五者知勝之道也、輔は車の兩旁の夾木なり、國の將あるは、車の輔あるが如し、倚賴を相ひ爲す、周は密なり、才智つぶさに具るなり、言ふ心は、大將は國の輔佐、輔佐の才智周く備れば、敵乘ずるとあたはず、故に國必强し、或人の云く、輔は星の名、所謂四輔星あつて、北辰を周圍す、將の君に事ふると、輔星の北極をめぐつて、而してこれを輔佐するが如し、輔隙なるときは、國必弱しとは、隙は間隙なり、かくるところあるなり、言ふ心は將不肖なるときは、敵入隙に乘じて入る故に、其國必よはし、故に軍の君に患ふるゆゑんの者三ッ、言ふ心は、患は害なり、軍をくつがへし、大將をころすは、みな多くは、君のいたす所に出ず、軍の國君の專ら制せらるゝに害ある所以のもの殆ど三ッの指すべきあり、元弘の帝、楠正成を用ひて、而も其智謀を用ひざるが如し、是謂麋軍は、人君の軍の進退をよくわきまゑず、
新字:○孫子曰、夫将者国之輔也、輔周則国必強、輔隙則国必弱、故軍之所以患於君者三、不知軍之不可以進而謂之進、不知軍之不可以退、而謂之退、是謂麋軍、不知三軍之事、而同三軍之政、士惑矣、不知三軍之権、而同三軍之任、則軍士疑矣、三軍既惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂乱軍引勝、故知勝有五、知可以与戦不可以与戦者勝、識衆寡之用者勝、上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、将能而君不御者勝、此五者知勝之道也、輔は車の両旁の夾木なり、国の将あるは、車の輔あるが如し、倚頼を相ひ為す、周は密なり、才智つぶさに具るなり、言ふ心は、大将は国の輔佐、輔佐の才智周く備れば、敵乗ずるとあたはず、故に国必強し、或人の云く、輔は星の名、所謂四輔星あつて、北辰を周囲す、将の君に事ふると、輔星の北極をめぐつて、而してこれを輔佐するが如し、輔隙なるときは、国必弱しとは、隙は間隙なり、かくるところあるなり、言ふ心は将不肖なるときは、敵入隙に乗じて入る故に、其国必よはし、故に軍の君に患ふるゆゑんの者三ッ、言ふ心は、患は害なり、軍をくつがへし、大将をころすは、みな多くは、君のいたす所に出ず、軍の国君の専ら制せらるゝに害ある所以のもの殆ど三ッの指すべきあり、元弘の帝、楠正成を用ひて、而も其智謀を用ひざるが如し、是謂麋軍は、人君の軍の進退をよくわきまゑず、
書き下し
○孫子曰、夫將者國之輔也、輔周則國必强、輔隙則國必弱、故軍之所以患於君者三、不知軍之不可以進而謂之進、不知軍之不可以退、而謂之退、是謂麋軍、不知三軍之事、而同三軍之政、士惑矣、不知三軍之權、而同三軍之任、則軍士疑矣、三軍既惑且疑、則諸侯之難至矣、是謂亂軍引勝、故知勝有五、知可以與戰不可以與戰者勝、識衆寡之用者勝、上下同欲者勝、以虞待不虞者勝、將能而君不御者勝、此五者知勝之道也、輔は車の兩旁の夾木なり、國の將あるは、車の輔あるが如し、倚賴を相ひ爲す、周は密なり、才智つぶさに具るなり、言ふ心は、大將は國の輔佐、輔佐の才智周く備れば、敵乘ずるとあたはず、故に國必强し、或人の云く、輔は星の名、所謂四輔星あつて、北辰を周圍す、將の君に事ふると、輔星の北極をめぐつて、而してこれを輔佐するが如し、輔隙なるときは、國必弱しとは、隙は間隙なり、かくるところあるなり、言ふ心は將不肖なるときは、敵入隙に乘じて入る故に、其國必よはし、故に軍の君に患ふるゆゑんの者三ッ、言ふ心は、患は害なり、軍をくつがへし、大將をころすは、みな多くは、君のいたす所に出ず、軍の國君の專ら制せらるゝに害ある所以のもの殆ど三ッの指すべきあり、元弘の帝、楠正成を用ひて、而も其智謀を用ひざるが如し、是謂麋軍は、人君の軍の進退をよくわきまゑず、
現代語訳
孫子は言います。「そもそも将は国の輔である。輔が周密であれば国は必ず強く、輔に隙があれば国は必ず弱い。だから、軍にとって君主が害となることは三つある。軍が進んではならないことを知らずに進めと命じ、軍が退いてはならないことを知らずに退けと命じる、これを麋軍という。三軍の事を知らずに三軍の政を同じくすれば、士は惑う。三軍の権を知らずに三軍の任を同じくすれば、軍士は疑う。三軍がすでに惑い、かつ疑えば、諸侯の難が至る。これを乱軍引勝という。だから勝を知るには五つある。戦うべきか戦うべきでないかを知る者は勝つ。大勢と小勢の用い方を知る者は勝つ。上下が欲を同じくする者は勝つ。備えをして備えのない敵を待つ者は勝つ。将が有能で君が御さない者は勝つ。この五つが勝を知る道である」。輔とは車の両わきの夾木です。国に将があるのは、車に輔があるようなもので、たがいに頼り合うものです。周とは密なことで、才智がつぶさに備わっていることです。言う心は、大将は国の補佐であり、補佐の才智があまねく備われば、敵は乗じることができないので、国は必ず強いということです。ある人は、輔は星の名であり、いわゆる四輔星があって北辰を取り巻いており、将が君に仕えるさまは、輔星が北極をめぐって補佐するようなものだ、と言います。輔に隙があれば国は必ず弱いとは、隙は間隙であり、欠けるところがあることです。言う心は、将が不肖であれば敵が隙に乗じて入るので、その国は必ず弱いということです。だから、軍にとって君主が害となる理由は三つあります。言う心は、患とは害のことで、軍を覆し大将を殺すことは、多くは君主のしわざから出るものです。軍が君主にもっぱら制せられて害を受けることには、おおよそ三つ指摘できるところがあります。元弘の帝(後醍醐天皇)が楠正成を用いながら、その智謀を用いなかったようなものです。是謂麋軍とは、君主が軍の進退をよくわきまえず、
解説

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『長短経』量才太公曰く「多言多語、悪口悪舌、終日悪を言い、寝臥絶えず、衆の憎む所と為り、人の疾む所と為る。此れ閭巷を要遮し、姦を察し禍を伺わしむ可し。権数事を好み、夜臥し早く起き、劇しと雖も悔いず。此れ妻子の将なり。先に語りて事を察し、権勧して食を与え、実は長にして言を希にし、財物平均なり。此れ十人の将なり。忉忉截截、意を垂れて粛粛たり、諫言を用いず、数しば刑戮を行い、刑すれば必ず血を見、親戚を避けず。此れ百人の将なり。訟弁して勝つを好み、嫉賊侵陵し、人を斤るに刑を以てし、一衆を整えんと欲す。此れ千人の将なり。外貌怍怍として、言語時に出で、人の飢飽を知り、人の劇易に習う。此れ万人の将なり。戦戦慄慄、日に一日を慎み、賢に近づき謀を進め、人をして節を知らしめ、言語慢らず、忠心誠に畢る。此れ十万人の将なり。
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孫子・謀攻篇夫れ将は国の輔なり。輔周なれば則ち国必ず強く、輔隙あれば則ち国必ず弱し。
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