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武治提要 / 賞罰・第3段

武將三軍を帥て賞すべきもの三、罰すべきもの三。一に云く忠、二に云義、三に云く勇、これ賞すべきものなり。一に云く不忠、二に云不義、三に云く不勇、これ乃罰すべきものなり。而して三等各上中下の三等を具、賞罰の目併て一十八なり。たとへ上功といへども、下等なるときは、下功の上等に或は下るべきことあり、或は中等に配すべきものあり。詳に其情實を盡すにあり。一たびも功に的中せざるの賞あるときは、人これを恨、一たびも罪に的中せざるの刑あるときは、人これを怒る。人恨人怒ときは、大切に臨て其指揮に屬せず。これ大敗の本たり。夙夜に思にあらずんば、衆情を得ること叶べからず。凡君君たらずとも、臣以て臣たらずんばあるべからずと云ものは、聖人人を敎の道にして、澆薄の人情を說にあらず。君の臣を視ること土芥のごときは、臣の君を視ること冠讎のごとしと云は、孟軻戰國の情を說ところなり。武國の俗に於て尤も斟酌せずんばあるべからず。

新字:武将三軍を帥て賞すべきもの三、罰すべきもの三。一に云く忠、二に云義、三に云く勇、これ賞すべきものなり。一に云く不忠、二に云不義、三に云く不勇、これ乃罰すべきものなり。而して三等各上中下の三等を具、賞罰の目併て一十八なり。たとへ上功といへども、下等なるときは、下功の上等に或は下るべきことあり、或は中等に配すべきものあり。詳に其情実を尽すにあり。一たびも功に的中せざるの賞あるときは、人これを恨、一たびも罪に的中せざるの刑あるときは、人これを怒る。人恨人怒ときは、大切に臨て其指揮に属せず。これ大敗の本たり。夙夜に思にあらずんば、衆情を得ること叶べからず。凡君君たらずとも、臣以て臣たらずんばあるべからずと云ものは、聖人人を教の道にして、澆薄の人情を説にあらず。君の臣を視ること土芥のごときは、臣の君を視ること冠讎のごとしと云は、孟軻戦国の情を説ところなり。武国の俗に於て尤も斟酌せずんばあるべからず。

書き下し

武將三軍を帥て賞すべきもの三、罰すべきもの三。一に云く忠、二に云義、三に云く勇、これ賞すべきものなり。一に云く不忠、二に云不義、三に云く不勇、これ乃罰すべきものなり。而して三等各上中下の三等を具、賞罰の目併て一十八なり。たとへ上功といへども、下等なるときは、下功の上等に或は下るべきことあり、或は中等に配すべきものあり。詳に其情實を盡すにあり。一たびも功に的中せざるの賞あるときは、人これを恨、一たびも罪に的中せざるの刑あるときは、人これを怒る。人恨人怒ときは、大切に臨て其指揮に屬せず。これ大敗の本たり。夙夜に思にあらずんば、衆情を得ること叶べからず。凡君君たらずとも、臣以て臣たらずんばあるべからずと云ものは、聖人人を敎の道にして、澆薄の人情を說にあらず。君の臣を視ること土芥のごときは、臣の君を視ること冠讎のごとしと云は、孟軻戰國の情を說ところなり。武國の俗に於て尤も斟酌せずんばあるべからず。

現代語訳

武将が三軍を率いて賞するべきものは三つ、罰するべきものは三つです。一つは忠、二つは義、三つは勇、これが賞するべきものです。一つは不忠、二つは不義、三つは不勇、これが罰するべきものです。そして三つの等級にそれぞれ上中下の三等を備え、賞罰の項目は合わせて十八です。たとえ上の功といっても、下の等級であれば、下の功の上等よりも下がることがあり、あるいは中等に配するべきこともあります。細かくその実情を尽くすことです。一度でも功に当たらない賞があれば、人はこれを恨み、一度でも罪に当たらない刑があれば、人はこれに怒ります。人が恨み、人が怒れば、大事に臨んで、その指揮に従いません。これが大敗の本です。朝晩に思い巡らさなければ、人々の気持ちを得ることはできません。およそ「君が君でなくても、臣は臣でなければならない」というのは、聖人が人を教える道であって、薄情になった人情を説いたものではありません。「君が臣を土芥のように見れば、臣は君を仇のように見る」というのは、孟子が戦国の情を説いたところです。武国の風俗では、とくに斟酌しなければなりません。

解説

この段は、賞罰を忠・義・勇の三つに絞り、それぞれ上中下の三等で計十八の項目に分けて、実情に即して当てはめよと述べています。核心は、功に当たらない賞や、罪に当たらない刑が、人の恨みや怒りを生み、指揮に従わなくなるという指摘です。評価の不公平は、チームの信頼を最も傷つけます。基準を細かく持つことと、実情をよく見ることの両方が大切です。後半の君臣論は戦国の情勢を前提にしたもので、そのまま現代には当てはめず、評価する側が謙虚であるべき、という点だけ読み取るのが適切です。

この章句が説くこと

賞罰忠義勇公正十八等指揮武治提要

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