武治提要 / 民政・第1段
民政は仁政の二に過ることなし。仁以て恩澤を下し、政以て規制を立。爰に至て其政正し。外國往古の民政、本朝の今日に取用ゆべきもの少し。これ四民の名分正しからず、且艸昧墾田の用多く、或は暴君の苛政を戒ること多し、故に其敎多くは仁に過たり。民を治の道仁に過るときは、其弊彼必ず奢侈をなし、法を蔑如す。故に武門民政の大意は、能詳に事物の節制を立て、姑息の恩を下さず、豐年には菜色なく、凶年には餓莩なき、これ仁愛の至れるものなり。四海の民をして、戶々豐に富て、悉く貧苦なからしめんことを說ものは、俗儒の空論にして、民政の實務となすべからず。
新字:民政は仁政の二に過ることなし。仁以て恩沢を下し、政以て規制を立。爰に至て其政正し。外国往古の民政、本朝の今日に取用ゆべきもの少し。これ四民の名分正しからず、且艸昧墾田の用多く、或は暴君の苛政を戒ること多し、故に其教多くは仁に過たり。民を治の道仁に過るときは、其弊彼必ず奢侈をなし、法を蔑如す。故に武門民政の大意は、能詳に事物の節制を立て、姑息の恩を下さず、豊年には菜色なく、凶年には餓莩なき、これ仁愛の至れるものなり。四海の民をして、戸々豊に富て、悉く貧苦なからしめんことを説ものは、俗儒の空論にして、民政の実務となすべからず。
書き下し
民政は仁政の二に過ることなし。仁以て恩澤を下し、政以て規制を立。爰に至て其政正し。外國往古の民政、本朝の今日に取用ゆべきもの少し。これ四民の名分正しからず、且艸昧墾田の用多く、或は暴君の苛政を戒ること多し、故に其敎多くは仁に過たり。民を治の道仁に過るときは、其弊彼必ず奢侈をなし、法を蔑如す。故に武門民政の大意は、能詳に事物の節制を立て、姑息の恩を下さず、豐年には菜色なく、凶年には餓莩なき、これ仁愛の至れるものなり。四海の民をして、戶々豐に富て、悉く貧苦なからしめんことを說ものは、俗儒の空論にして、民政の實務となすべからず。
現代語訳
民政は、仁政と政の二つに尽きます。仁によって恩恵を下に及ぼし、政によって規則や制度を立てる。ここまでそろって、その政治は正しいといえます。外国の昔の民政で、本朝の今日に取り入れてよいものは少ないのです。四民の身分や名分が正しくなく、草創期の開墾の話が多く、あるいは暴君の苛政を戒める話が多いので、その教えはたいてい仁に偏っています。民を治めるのに仁に偏りすぎると、その弊害で民は必ず贅沢に走り、法を軽んじます。ゆえに武門の民政の大意は、事物の節度を詳しく立て、その場しのぎの恩恵は与えないことにあります。豊年には飢えた顔色の者がなく、凶年には餓死者がない。これこそ仁愛の至りです。天下の民を戸ごとに豊かにして、貧苦をなくそうと説く者は、俗儒の空論であって、民政の実務とすべきではありません。
解説
この章句が説くこと
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