武治提要 / 民政・第2段
本朝の民政、歷代因循して大に審なり。步、畝、町、里、貢、賦、徭役の品少しき損益あるのみ。凡民政は貨財の用を司る。故に淸廉正直の士を撰て、其職となすこと大本なり。而して如此の人多く得難し。其間、正直の士十に一二を擧て、監察の任を置、詳に糺明するときは、其他の中人亦これに化すべし。
新字:本朝の民政、歴代因循して大に審なり。歩、畝、町、里、貢、賦、徭役の品少しき損益あるのみ。凡民政は貨財の用を司る。故に清廉正直の士を撰て、其職となすこと大本なり。而して如此の人多く得難し。其間、正直の士十に一二を挙て、監察の任を置、詳に糺明するときは、其他の中人亦これに化すべし。
書き下し
本朝の民政、歷代因循して大に審なり。步、畝、町、里、貢、賦、徭役の品少しき損益あるのみ。凡民政は貨財の用を司る。故に淸廉正直の士を撰て、其職となすこと大本なり。而して如此の人多く得難し。其間、正直の士十に一二を擧て、監察の任を置、詳に糺明するときは、其他の中人亦これに化すべし。
現代語訳
本朝の民政は、歴代の慣習を受け継いで、すでに十分に整っています。歩、畝、町、里、貢、賦、徭役といった品目は、わずかな増減があるだけです。およそ民政は、財貨の出し入れを預かるものです。そのため、清廉で正直な人物を選んでその職に就けることが大本になります。しかし、そのような人はなかなか得がたいものです。その中から正直な者を十人に一、二人ほど取り立てて監察の任に置き、細かく糺明させれば、他の並の人々もそれに感化されるでしょう。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『武治提要』民政・第10段貢賦と訟訴と、これ民政の大綱なり。貢賦を以て其體を正し、訟獄を以て其情を正す。爰に於て民其處を得るに至る。貢賦の數を定るの本は、民に過分の餘財あらざれども、衣食居にたり、訟訴の決斷は、民其理非を枉べからざることを自知するを極とす。其道乃其司職と監官との明暗にあり。故に民政の大本、其人を得るにあり。其人を得るときは、條目の微細はやむことなくして、其事物より生ず、强て作爲すべからず。
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『武治提要』民政・第1段民政は仁政の二に過ることなし。仁以て恩澤を下し、政以て規制を立。爰に至て其政正し。外國往古の民政、本朝の今日に取用ゆべきもの少し。これ四民の名分正しからず、且艸昧墾田の用多く、或は暴君の苛政を戒ること多し、故に其敎多くは仁に過たり。民を治の道仁に過るときは、其弊彼必ず奢侈をなし、法を蔑如す。故に武門民政の大意は、能詳に事物の節制を立て、姑息の恩を下さず、豐年には菜色なく、凶年には餓莩なき、これ仁愛の至れるものなり。四海の民をして、戶々豐に富て、悉く貧苦なからしめんことを說ものは、俗儒の空論にして、民政の實務となすべからず。
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『武治提要』民政・第4段或は山林、河海、都城、塞關、街衢、防堤、鄕里、市鄽、神祉、佛院等の制令のごとき、或は鳥獸、魚鼈、穀鹽、菜菓、材木、薪蒭のごときに至て、皆民政のよる處なり。各其節制あつて、或は民の欲を正して、天物を暴せしめず、或は征賦を出さしめて、其國恩を償はしむるが如き、皆やむことを得ざるの道にして、其詳なること布て方策にあり。
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『武治提要』民政・第9段俳優娼妓等の天下にあるは、譬ば塵芥の家にあるが如し、勤て斷絕せんことを期するときは害あり。俗正しく武德能下に行はるゝときは、丈夫豈これに淫するを慊とせんや。然れども其規制を立て、尊貴の風をなさしむべからず。民間に賄賂行はれて、訟訴理非を失するものは、下のあやまちにあらず、全く上のあやまちにあり。監察を審にして、其情を正すにあり。俗を損すること、賄賂を大なりとす。
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『武治提要』民政・第7段三民に孝弟篤實の者あるときは、これを稱して表すること、俗を美にするの道にして、武治の善政なり、民間の風俗は只淳朴にして、邪義邪法なく、事物野鄙なるを以て美也とす。伍法を明にして、其俗を正すこと、蓋し仁政の大なるもの也。
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『武治提要』民政・第11段貨財は農に生じて、士に入、士より出て工商に至り、以て天下に行はる。聚斂の疾あらずして、而も天下の府庫富ものは、天下の大幸にして、これ武將の儉德なり。出納を詳にして、其法を明にせずんばあるべからず。
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