武治提要 / 武勇・第4段
人老るときは得んことを願い、元氣懦弱になつて姑息の仁を行い、其至るに及んでは浮屠を信じ、天堂の樂を期す。梁武昔年鞍馬に策うちし日、誰か臺城の渴を前知するものあらんや。これ皆小勇にして、其本寬大ならず、竟に操を失して、暗愚の極に至る、人心の危きこと如此。武勇の戒尤も深重なり。
新字:人老るときは得んことを願い、元気懦弱になつて姑息の仁を行い、其至るに及んでは浮屠を信じ、天堂の楽を期す。梁武昔年鞍馬に策うちし日、誰か台城の渇を前知するものあらんや。これ皆小勇にして、其本寛大ならず、竟に操を失して、暗愚の極に至る、人心の危きこと如此。武勇の戒尤も深重なり。
書き下し
人老るときは得んことを願い、元氣懦弱になつて姑息の仁を行い、其至るに及んでは浮屠を信じ、天堂の樂を期す。梁武昔年鞍馬に策うちし日、誰か臺城の渴を前知するものあらんや。これ皆小勇にして、其本寬大ならず、竟に操を失して、暗愚の極に至る、人心の危きこと如此。武勇の戒尤も深重なり。
現代語訳
人は老いると、得ることを願うようになり、気力が弱って一時しのぎの情けをかけ、そのきわみには仏を信じて、極楽の楽しみを期待します。梁の武帝がかつて馬に鞭打っていた日に、のちに台城で渇えることを前もって知る者がいたでしょうか。これはみな小さな勇であって、その根本が寛大ではなかったために、ついに操を失い、愚かさの極みに至ったのです。人の心の危ういことはこのようです。武勇への戒めはとりわけ深く重いものです。
解説
この段は、老いとともに勇が衰え、得ることを願い、一時しのぎの情けに流れる危うさを戒めています。例として梁の武帝が挙げられ、若い日に馬上で戦った人物でも、晩年に操を失う例があることを示します。仏を信じて極楽を期すことへの批判は、当時の儒学的な立場からの見方で、ここでは信仰の是非よりも、勇が薄れて安楽に傾く姿への戒めとして読むのがよいでしょう。経営者やベテラン管理職にとっては、実績を積むほど守りに入り、嫌われる決断を避けて場当たりな優しさに頼る危険に重なります。年齢や立場に関わらず、勇を保つ工夫を問う段です。
この章句が説くこと
老い小勇姑息戒め操武治提要
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