武治提要 / 武勇・第2段
武勇は士道百行の括要にして、立志は百行の淵源なり。勇薄ときは其志立難く、其志不立ときは勇亦ならず。志立て其勇なり、其勇成て其志亦立、勇と志と相表裏す。
書き下し
武勇は士道百行の括要にして、立志は百行の淵源なり。勇薄ときは其志立難く、其志不立ときは勇亦ならず。志立て其勇なり、其勇成て其志亦立、勇と志と相表裏す。
現代語訳
武勇は士道のあらゆる行いを一つにくくる要であり、志を立てることはあらゆる行いの源です。勇が薄いときは、その志は立てにくく、志が立たないときは、勇もまた成りません。志が立って勇が成り、勇が成って志もまた立ちます。勇と志は表と裏の関係にあります。
解説
この段は短く、勇と志が互いに支え合う関係にあると述べています。勇が薄ければ志は立てにくく、志が立たなければ勇も成らず、どちらが先とも言えない表裏の関係です。前の段で勇を扱い、次の段から志を立てる話に入るので、その橋渡しの役目もある一節です。仕事に引き寄せると、やりたいことが定まらない人が踏み出せないのは当然で、踏み出す勇気がなければ志も言葉だけに終わる、と読めます。部下に志を問うだけでなく、小さな一歩を踏み出せる場を用意することも、管理職の役目になります。
この章句が説くこと
志勇表裏士道行動武治提要
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『文武訓』武訓下いかなる大事にのぞんでも、かたく此道を守り、心を動かすべからず。勇気をふるひおこして、強敵に俄にあひてたたかふとも、心をしづかにしてうごかすべからず。勇者は、其かうべをうしなふと此道をわすれずして、心にかなしみうれふべからず。死にのぞんでもおそるまじき理をあきらめ、平生勇気をやしなふべし。義ありて性剛強なる人は、此志をたもちやすし。柔弱なる人も、常に義をたつとび、此志を保ちて失はざるべし。士の子も、わかき時より武勇に志なければ、節にのぞんで心つたなくして恐る。四民ともに、常に気を養ひて、心をうごかさざる工夫をわするべからず。気の強弱は、人の生れつきによれども、勇にして節義を守る志は忘るべからず。勇者はおそれず。又、勇士は、其かうべをうしなふにわすれずとは、死にのぞむまで、この義を守る志をわすれずとなり。
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『山鹿語類』士道・在勤行其所志職分を知て志を立、道に志有て其道の次第をきくことを得ると云とも、勤め行ふ所を専とす。而して勤行ふ事大方の志にては遂ること難し。今少の不入事を致し、ならへるわざすら是を改んとするには、甚力を不入しては安じがたし。殊に利害の間、色欲の妄動、名根の所萌、因循すること久しきを以て、更に間断する所なく其意妄りに先ず。こゝに於て我に大力量あらずしては、必ず引おとされて、其誠を尽す事不可叶。我に大力量を出さしむるは、志の浅深によることなり。志所浅くしては、勤むる所深かる不可也。志は自省みて人の人たらざる所をたしかに辱る処深からざれば、此志不出也。故に中庸に、子曰、好学近乎知、力行近乎仁、知耻近乎勇と出せり。孟子曰、富貴不能淫、貧賤不能移、威武不能屈、此之謂大丈夫と云へり。富貴は人の大に所好にして、貧賤は人の大に所悪、威武は人の大に所恐にして、此間に聊か心を付る処なきに不有ば、大丈夫と云可らず。大丈夫と云は、是士の道に志して、其志す所をたしかに行ひつとめたるものゝ事也。其厚く正しき所如此つとめずしては、士の本の立と云べからざる也。
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『十善法語』巻第二・不偸盜戒総シテ世ノ怯弱臆病ト云ハ。ミナ道ヲ心得ヌ者ノ類シヤ。若十善戒法ヲ真実ニ護持スル者有ハ。必勇猛剛强ノ徳ヲ長ス。儒書ニモ自ラ反フシテ縮カラスハ。褐寛博ト雖トモ我惴レサランヤ。自ラ反シテ縮クハ。千万人ト雖トモ我ユカント有ル。カウシヤ。直キ処カラ出タ勇カ誠ノ勇シヤ。又仁者ハ必勇アリ。勇者ハ必シモ仁アラストアル。カウシヤ。仁慈ノ余カラ出タ勇テナケレハ皆暴虎馮河ノ勇ト名クルシヤ。
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