武治提要 / 武事・第4段
文武の學皆悉く然りといへども、戰法軍術に於ては、殊更逐一に件々條々を愼思明辨せずんばあるべからず。これ今日に於て其當否の迹著明ならず、且頓に死生存亡のかゝる處にして、一たび其機を發してよりはこれを挽回すること易からざればなり。
新字:文武の学皆悉く然りといへども、戦法軍術に於ては、殊更逐一に件々条々を慎思明弁せずんばあるべからず。これ今日に於て其当否の迹著明ならず、且頓に死生存亡のかゝる処にして、一たび其機を発してよりはこれを挽回すること易からざればなり。
書き下し
文武の學皆悉く然りといへども、戰法軍術に於ては、殊更逐一に件々條々を愼思明辨せずんばあるべからず。これ今日に於て其當否の迹著明ならず、且頓に死生存亡のかゝる處にして、一たび其機を發してよりはこれを挽回すること易からざればなり。
現代語訳
文武の学はみなそうであるが、戦法・軍術では、特に一つ一つの件々条々を慎み思い、明らかに弁えなければならない。これは今日においてその当否の跡が著しくは明らかでなく、かつ、にわかに死生存亡のかかるところで、一たびその機を発してからは、これを挽回することが容易でないからである。
解説
文武の学はどれも同じだが、戦法・軍術は一件ずつを慎んで思い、明らかに弁えなければならない、と言います。理由は二つで、今日その当否の跡が著しくは明らかでないこと、そして死生存亡にかかわり、一度機を発してからは挽回が難しいことです。やり直しが利かない決断ほど、事前の検討を厚くするという筋です。現代の仕事でも、取り返しのつかない投資や人事は、小さな試行より前に念入りに検討する必要があります。逆に、やり直せる決断は早く動くという線引きの感覚を養う手がかりになります。
この章句が説くこと
軍術慎思明弁死生存亡挽回取り返しのつかない決断武治提要
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