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武治提要 / 武德・第8段

物に三の用あり。此三全く備るを德と云。一に云く德、二に云く能、三に云く道也。たとへば劔に不測の靈あつて、其氣星斗を射、或は妖魅のこれがために退くごときは、劔の德なり。鐵冑を截斷し、犀甲を貫串なすは、劔の能なり。行藏人に從て其用をなすは劔の道なり。動靜周旋に威儀の則とすべきものあり、言行に端正嚴肅の以て懼るべきものあるは、將の德なり。危に臨て不恐、策を出して不差、小を帥て大を討、百戰百勝の全利をなすごときは、將の能なり。自ら彊て不息、材能を以て高ぶらず、諫を容て不拒、愚者を矜て敎育に不倦ごときは、將の道なり。三のもの相合して、これを武德と稱す。此三のものを得るにあらざるときは、得て安んずるの極に至るべからず。

新字:物に三の用あり。此三全く備るを徳と云。一に云く徳、二に云く能、三に云く道也。たとへば剣に不測の霊あつて、其気星斗を射、或は妖魅のこれがために退くごときは、剣の徳なり。鉄冑を截断し、犀甲を貫串なすは、剣の能なり。行蔵人に従て其用をなすは剣の道なり。動静周旋に威儀の則とすべきものあり、言行に端正厳粛の以て懼るべきものあるは、将の徳なり。危に臨て不恐、策を出して不差、小を帥て大を討、百戦百勝の全利をなすごときは、将の能なり。自ら彊て不息、材能を以て高ぶらず、諫を容て不拒、愚者を矜て教育に不倦ごときは、将の道なり。三のもの相合して、これを武徳と称す。此三のものを得るにあらざるときは、得て安んずるの極に至るべからず。

書き下し

物に三の用あり。此三全く備るを德と云。一に云く德、二に云く能、三に云く道也。たとへば劔に不測の靈あつて、其氣星斗を射、或は妖魅のこれがために退くごときは、劔の德なり。鐵冑を截斷し、犀甲を貫串なすは、劔の能なり。行藏人に從て其用をなすは劔の道なり。動靜周旋に威儀の則とすべきものあり、言行に端正嚴肅の以て懼るべきものあるは、將の德なり。危に臨て不恐、策を出して不差、小を帥て大を討、百戰百勝の全利をなすごときは、將の能なり。自ら彊て不息、材能を以て高ぶらず、諫を容て不拒、愚者を矜て敎育に不倦ごときは、將の道なり。三のもの相合して、これを武德と稱す。此三のものを得るにあらざるときは、得て安んずるの極に至るべからず。

現代語訳

物には三つの用がある。この三つが全く備わるのを徳という。一に徳、二に能、三に道である。たとえば剣に不測の霊があって、その気が星や斗を射、あるいは妖魅がこのために退くのは、剣の徳である。鉄の冑を断ち切り、犀の甲を貫き通すのは、剣の能である。出処進退が人に従ってその用をなすのは、剣の道である。動静や周旋に威儀の則とすべきものがあり、言行に端正厳粛で畏れるべきところがあるのは、将の徳である。危うきに臨んで恐れず、策を出して誤らず、小をもって大を討ち、百戦百勝の全き利をなすのは、将の能である。自ら強めて息まず、材能をもって高ぶらず、諫めを容れて拒まず、愚かな者をいたわって教育に倦まないのは、将の道である。この三つが合わさったものを武徳と称する。この三つを得ていなければ、得て安んずる極みに至ることはできない。

解説

物には徳・能・道の三つの用があり、揃って徳と呼ぶと言います。剣を例に、不測の霊があること、鉄冑を断つ切れ味、人に従って働く使われ方をそれぞれ徳・能・道とし、将にも当てはめます。威儀と端正さは徳、危うきに臨んで策を誤らない働きは能、自ら励み、諫めを聞き、愚者を育てて倦まない姿勢は道です。人柄、実力、成長し続ける姿勢の三つがそろって初めて人を安んじさせるという整理は、管理職の評価軸としてそのまま使えます。部下を育てる手間を惜しまないことが道に含まれている点は、現代の管理職にも響きます。

この章句が説くこと

徳能道剣のたとえ威儀諫言教育武治提要

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