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武備和訓 / 卷四・小幡景憲の問いが示す君父への道

一先生香西氏曰、一人の少年ありて、小幡景憲に一番鎗を可衝道を問、景憲(武田軍術の權輿たり、關ケ原合戰の時、井伊兵少の手におゐて一番鎗をつけり、)少年の問に應て曰、喩ば一丈ばかりなる岸崖の下に、劔を繁く樹て、汝其岸上に望み、君父其後にありて、岸の下なる劔の中に飛入と責らるゝ時、汝直に飛入むや、又君父の命に乘き、其塲を去むや、少年曰、人倫として爭か君父の命には背き候はん、若難を恐れて君父を恐れざる者は、それ禽獸なるべしと、景憲曰、善哉ゝゝ、

新字:一先生香西氏曰、一人の少年ありて、小幡景憲に一番鎗を可衝道を問、景憲(武田軍術の権輿たり、関ケ原合戦の時、井伊兵少の手におゐて一番鎗をつけり、)少年の問に応て曰、喩ば一丈ばかりなる岸崖の下に、剣を繁く樹て、汝其岸上に望み、君父其後にありて、岸の下なる剣の中に飛入と責らるゝ時、汝直に飛入むや、又君父の命に乗き、其塲を去むや、少年曰、人倫として争か君父の命には背き候はん、若難を恐れて君父を恐れざる者は、それ禽獣なるべしと、景憲曰、善哉ゝゝ、

書き下し

一先生香西氏曰、一人の少年ありて、小幡景憲に一番鎗を可衝道を問、景憲(武田軍術の權輿たり、關ケ原合戰の時、井伊兵少の手におゐて一番鎗をつけり、)少年の問に應て曰、喩ば一丈ばかりなる岸崖の下に、劔を繁く樹て、汝其岸上に望み、君父其後にありて、岸の下なる劔の中に飛入と責らるゝ時、汝直に飛入むや、又君父の命に乘き、其塲を去むや、少年曰、人倫として爭か君父の命には背き候はん、若難を恐れて君父を恐れざる者は、それ禽獸なるべしと、景憲曰、善哉ゝゝ、

現代語訳

一つ、先生の香西氏が言うことには、一人の少年が小幡景憲に、一番槍を突くべき道を問いました。景憲(武田軍術の始まりの人です。関ヶ原の合戦の時、井伊の少ない兵の手で一番槍をつけました)は少年の問いに答えて言いました。たとえば、一丈ばかりの崖の下に剣を隙間なく立てて、おまえがその崖の上に臨み、君父がその後ろにいて、崖の下の剣の中に飛び込めと責められる時、おまえはすぐに飛び込むか、それとも君父の命に背いてその場を去るか。少年は言いました。人倫として、どうして君父の命に背きましょうか。もし難を恐れて君父を恐れない者は、禽獣でしょう。景憲は、善いかな善いかな、と言いました。

解説

一番槍の道を問う少年に、小幡景憲が君父の命に従うかを問い返した逸話です。原文は君父の命を絶対とする当時の人倫観を示しており、歴史的な文脈として読みます。現代では、無条件の服従を勧める話ではなく、勇気の源は恐れの有無ではなく、何を最も重んじるかにあると受け取れます。管理職は、困難な指示を出す側として、部下が何のために動くのかという目的と信頼関係を示す責任があります。命じる前に、納得できる理由と安全への配慮を用意したいものです。
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この章句が説くこと

『武備和訓』片島武矩小幡景憲一番槍君父勇気

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