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武備和訓 / 卷一・子どもには幼いころから義理と学問を教える

一武士の子どもに總卷の比より義理を敎て、假にも利に聰からん事を禁むべし、天下にも換がたき義の一字なるに、同じ武士にて明智光秀がごとく、雪と墨とにかわる事は、是利を重むじて、義をかろんずるが故也、(利とは道なくしてみだりに人の國郡をかすむるごときの軍術などを習聞をいへり、武士軍學する事は勿論の事なれば、まづ王覇の論を尋聞て七書の義をきはめ、其後和軍を習ふべし、)君君の道を盡す時、臣臣の道を致す事は勿論なれば、忠とするに足らず、君道なき時、臣二心なきを以忠とはいふ也、光秀其性勇敢にして、誠少く、學問に志ざれば、仁義の道をしらず、僅十餘日の天下を貪りて、其名を禽獸に同ふしたり、吁慮べしや、かならず、武士の子たらん者には、利慾を戒め、學問して、仁義の勇を曉さすべき事、間斷あるべからず、

新字:一武士の子どもに総巻の比より義理を教て、仮にも利に聰からん事を禁むべし、天下にも換がたき義の一字なるに、同じ武士にて明智光秀がごとく、雪と墨とにかわる事は、是利を重むじて、義をかろんずるが故也、(利とは道なくしてみだりに人の国郡をかすむるごときの軍術などを習聞をいへり、武士軍学する事は勿論の事なれば、まづ王覇の論を尋聞て七書の義をきはめ、其後和軍を習ふべし、)君君の道を尽す時、臣臣の道を致す事は勿論なれば、忠とするに足らず、君道なき時、臣二心なきを以忠とはいふ也、光秀其性勇敢にして、誠少く、学問に志ざれば、仁義の道をしらず、僅十余日の天下を貪りて、其名を禽獣に同ふしたり、吁慮べしや、かならず、武士の子たらん者には、利慾を戒め、学問して、仁義の勇を暁さすべき事、間断あるべからず、

書き下し

一武士の子どもに總卷の比より義理を敎て、假にも利に聰からん事を禁むべし、天下にも換がたき義の一字なるに、同じ武士にて明智光秀がごとく、雪と墨とにかわる事は、是利を重むじて、義をかろんずるが故也、(利とは道なくしてみだりに人の國郡をかすむるごときの軍術などを習聞をいへり、武士軍學する事は勿論の事なれば、まづ王覇の論を尋聞て七書の義をきはめ、其後和軍を習ふべし、)君君の道を盡す時、臣臣の道を致す事は勿論なれば、忠とするに足らず、君道なき時、臣二心なきを以忠とはいふ也、光秀其性勇敢にして、誠少く、學問に志ざれば、仁義の道をしらず、僅十餘日の天下を貪りて、其名を禽獸に同ふしたり、吁慮べしや、かならず、武士の子たらん者には、利慾を戒め、學問して、仁義の勇を曉さすべき事、間斷あるべからず、

現代語訳

一つ、武士の子どもには、総角(幼いころ)から義理を教え、かりそめにも利に聡いことを禁じるべきです。天下にも換えがたい義の一字なのに、同じ武士でも明智光秀のように、雪と墨ほどにも変わってしまうのは、利を重んじて義を軽んじたためです。(ここでいう利とは、道なくしてみだりに人の国や郡をかすめ取るような軍術などを習い聞くことをいいます。武士が軍学をするのはもちろんのことですから、まず王道と覇道の論を尋ね聞いて、七書(武経七書)の意味を究め、その後に日本の軍法を習うべきです。)君が君の道を尽くすときに、臣が臣の道を尽くすことはもちろんで、それは忠とするには足りません。君に君の道がないときに、臣が二心のないことを忠というのです。光秀はその性質が勇敢でありながら誠が少なく、学問に志さなかったので、仁義の道を知らず、わずか十日余りの天下を貪って、その名を禽獣と同じにしてしまいました。ああ、恐れるべきではありませんか。かならず、武士の子たる者には、利欲を戒め、学問をして、仁義の勇を悟らせることを、絶え間なく行わなければなりません。

解説

幼いころから義理を教え、利欲を戒めて学問させることを説く章です。明智光秀を、勇敢でも誠と学びが足りず、利に傾いた例として挙げています。ここでは、君主が道を尽くしていないときでも、臣が二心を持たないことが忠だとも述べます。現代の組織でも、上司が不完全なときの振る舞いに人の真価が表れます。管理職は、自分の若手育成で、数字だけでなく誠実さと学びの習慣を、早い段階から根づかせることが重要です。
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この章句が説くこと

『武備和訓』片島武矩義理明智光秀利欲学問

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