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武備小学抄録 / 可重義輕命事・命の重さと、無駄にしない心得

死生もまた大なり、人の命を捨るは大切至極、何事か是に然哉、雖然戰場に臨て鴻毛より死を輕くするは爲士者の意也、然共勝負當否を辨へず、武功拙きときは必死の塲を不知、故に主君の御爲にもならず、自身勳功にもならで、空く屍を郊原に曝すは匹夫の勇とも、邪宋のつよみとも、不忠不義の犬死とも云也、此所を心によく躰認して武功に鍛鍊工夫をなし其損益を辨へ、死後にも、其功其德を全ふせんと可心懸事、武士の肝要なり、一老若男女有情非情の類、天地の間に形をなすもの滅ずといふ事なし、此所を辨へ能識得ざれば、死に於て迷ふ、故に或は命をおしみてむさき仕方になる事有、能々可心付也、一先祖と我と子孫とは、天地萬物生々して息ざるが如し、此理を識得は可恥のはなはだしき也、一頓死の病によると、

新字:死生もまた大なり、人の命を捨るは大切至極、何事か是に然哉、雖然戦場に臨て鴻毛より死を軽くするは為士者の意也、然共勝負当否を弁へず、武功拙きときは必死の塲を不知、故に主君の御為にもならず、自身勲功にもならで、空く屍を郊原に曝すは匹夫の勇とも、邪宋のつよみとも、不忠不義の犬死とも云也、此所を心によく体認して武功に鍛錬工夫をなし其損益を弁へ、死後にも、其功其徳を全ふせんと可心懸事、武士の肝要なり、一老若男女有情非情の類、天地の間に形をなすもの滅ずといふ事なし、此所を弁へ能識得ざれば、死に於て迷ふ、故に或は命をおしみてむさき仕方になる事有、能々可心付也、一先祖と我と子孫とは、天地万物生々して息ざるが如し、此理を識得は可恥のはなはだしき也、一頓死の病によると、

書き下し

死生もまた大なり、人の命を捨るは大切至極、何事か是に然哉、雖然戰場に臨て鴻毛より死を輕くするは爲士者の意也、然共勝負當否を辨へず、武功拙きときは必死の塲を不知、故に主君の御爲にもならず、自身勳功にもならで、空く屍を郊原に曝すは匹夫の勇とも、邪宋のつよみとも、不忠不義の犬死とも云也、此所を心によく躰認して武功に鍛鍊工夫をなし其損益を辨へ、死後にも、其功其德を全ふせんと可心懸事、武士の肝要なり、一老若男女有情非情の類、天地の間に形をなすもの滅ずといふ事なし、此所を辨へ能識得ざれば、死に於て迷ふ、故に或は命をおしみてむさき仕方になる事有、能々可心付也、一先祖と我と子孫とは、天地萬物生々して息ざるが如し、此理を識得は可恥のはなはだしき也、一頓死の病によると、

現代語訳

死生もまた大事です。人の命を捨てるのは大切この上なく、何事がこれに勝りましょうか。そうではあっても、戦場に臨んで死を鴻毛(鳥の羽毛)より軽く見るのが士たる者の意です。けれども勝負の当否をわきまえず、武功が拙いと必死の場を知らず、そのため主君のためにもならず、自身の勲功にもならず、むなしく屍を野にさらすのは、匹夫の勇とも、邪宋の強みとも、不忠不義の犬死とも言います。ここを心によく体認して武功に鍛錬工夫をし、その損益をわきまえ、死後にもその功徳を全うしようと心がけることが、武士の肝要です。一つ、老若男女、有情・非情の類、天地の間に形をなすもので滅びないものはありません。ここをわきまえ会得しなければ、死に迷います。そのため、命を惜しんで見苦しい振る舞いになることもあります。よくよく心にとめるべきです。一つ、先祖と私と子孫とは、天地万物が生々して休まないのと同じです。この理を会得しないのは、恥のはなはだしいことです。一つ、頓死の病によると、(次の章句へ続きます)

解説

命は何よりも重いとしたうえで、目的も見通しもなく命を捨てるのは犬死にだと戒め、損益を見極めて功徳を残すよう説く章句です。先祖・自分・子孫を連なる流れと見る考えも示されます。歴史的な文脈の言葉ですが、現代では、成果につながらない無理や消耗を美徳としない教えとして読めます。管理職は、部下の長時間労働や根性論に頼る場面で、損益を見極め、続けられる形に仕事を組み直す責任があります。次の世代に何を残すかという視点も持ちたいものです。
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この章句が説くこと

『武備小学抄録』伊奈貞昭義命犬死に匹夫の勇

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