武備小学抄録 / 可重義輕命事・多聞多見・問う恥・心の勝ちを学ぶ
刄にかゝるとに不功者、俗情迷有を辨ふべし、一多聞多見て、知慧を擴むべし、智淺くば肝要を不知、隨分何事も心懸しるべし、一古老の曰武道は我も人も弱氣を見せず、慮外不仕樣可心得事、一亦曰、言葉づかひ惡敷、萬事かさつに不禮なるは、至ておく病ものと必定すべし、一又曰、武道には無限妙術有事を知るべし、たとへ不知之共、妙術あるもの也と計も可知、小成に安んずるは智の不足也、たとへば蛄蜣の丸を轉じて蘇香を賤しんずるにとならず、一心の勝、仕方の負といふ事を知るべし、一萬事口と覺と計にて、心底に得ざれば、不知怠るなり、眞實に躰認してわするべからず、一不知事問に恥べからず、下問に恥とも古人申されしとかや、恥て問ざれば一生しらで過る也、一柱に膠し、船を剉て、劔を求る事をなすべからず、
新字:刄にかゝるとに不功者、俗情迷有を弁ふべし、一多聞多見て、知慧を擴むべし、智浅くば肝要を不知、随分何事も心懸しるべし、一古老の曰武道は我も人も弱気を見せず、慮外不仕様可心得事、一亦曰、言葉づかひ悪敷、万事かさつに不礼なるは、至ておく病ものと必定すべし、一又曰、武道には無限妙術有事を知るべし、たとへ不知之共、妙術あるもの也と計も可知、小成に安んずるは智の不足也、たとへば蛄蜣の丸を転じて蘇香を賤しんずるにとならず、一心の勝、仕方の負といふ事を知るべし、一万事口と覚と計にて、心底に得ざれば、不知怠るなり、真実に体認してわするべからず、一不知事問に恥べからず、下問に恥とも古人申されしとかや、恥て問ざれば一生しらで過る也、一柱に膠し、船を剉て、剣を求る事をなすべからず、
書き下し
刄にかゝるとに不功者、俗情迷有を辨ふべし、一多聞多見て、知慧を擴むべし、智淺くば肝要を不知、隨分何事も心懸しるべし、一古老の曰武道は我も人も弱氣を見せず、慮外不仕樣可心得事、一亦曰、言葉づかひ惡敷、萬事かさつに不禮なるは、至ておく病ものと必定すべし、一又曰、武道には無限妙術有事を知るべし、たとへ不知之共、妙術あるもの也と計も可知、小成に安んずるは智の不足也、たとへば蛄蜣の丸を轉じて蘇香を賤しんずるにとならず、一心の勝、仕方の負といふ事を知るべし、一萬事口と覺と計にて、心底に得ざれば、不知怠るなり、眞實に躰認してわするべからず、一不知事問に恥べからず、下問に恥とも古人申されしとかや、恥て問ざれば一生しらで過る也、一柱に膠し、船を剉て、劔を求る事をなすべからず、
現代語訳
刃にかかる場合と(頓死の病の場合)とで、功のない者は、世俗の情に迷う有りさまをわきまえるべきです。一つ、多く聞き多く見て、知恵を広げるべきです。智が浅ければ肝要を知りません。できるかぎり何事も心がけて知るべきです。一つ、古老の言うには、武道は自分も人も弱気を見せず、無礼のないように心得るべきこと。一つ、また言うには、言葉づかいが悪く、万事がさつで無礼なのは、きわめて臆病な者と必ず見るべきです。一つ、また言うには、武道には限りない妙術があることを知るべきです。たとえ知らなくても、妙術があるとだけは知るべきです。小さな成功に安んじるのは智の不足です。たとえば蛄蜣(ふんころがし)が玉を転がして、蘇合香(香木)を卑しむのと変わりません。一つ、心の勝ち、仕方の負けということを知るべきです。一つ、万事、口と記憶だけで心の底に会得しなければ、知らないのと同じで怠りです。真実に体認して忘れてはなりません。一つ、知らないことを問うのを恥じてはなりません。下の者に問うことを恥じずと古人も申されたとか。恥じて問わなければ一生知らずに過ぎます。一つ、柱に膠し(琴柱を膠で固め)、船に刻んで剣を求める(目印を刻んで剣を探す)ようなことをしてはなりません。
解説

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