弁名 / 元亨利貞
利有數義。如曰君子喩於義。小人喩於利。曰放於利而行。曰見利思義。皆謂營生而有所得。是財利之利也。如曰利用厚生。曰利器。皆謂善治其器。使輕便於用之。用亦器也。是銳利之利也。如易曰利有攸往。利涉大川。皆謂作其事有成功。是吉利之利也。如利物。利天下。謂使其得益被澤。是利益之利也。
新字:利有数義。如曰君子喩於義。小人喩於利。曰放於利而行。曰見利思義。皆謂営生而有所得。是財利之利也。如曰利用厚生。曰利器。皆謂善治其器。使軽便於用之。用亦器也。是鋭利之利也。如易曰利有攸往。利渉大川。皆謂作其事有成功。是吉利之利也。如利物。利天下。謂使其得益被沢。是利益之利也。
書き下し
利に数義有り。「君子は義に喩り、小人は利に喩る」と曰ひ、「利に放りて行ふ」と曰ひ、「利を見て義を思ふ」と曰ふが如き、皆生を営みて得る所有るを謂ふ。是れ財利の利なり。「用を利し生を厚くす」と曰ひ、「利器」と曰ふが如き、皆善く其の器を治め、之を用ふるに軽便ならしむるを謂ふ。用も亦た器なり。是れ鋭利の利なり。易に「往く攸有るに利し」「大川を渉るに利し」と曰ふが如き、皆其の事を作して成功有るを謂ふ。是れ吉利の利なり。「物を利す」「天下を利す」の如きは、其れをして益を得て沢を被らしむるを謂ふ。是れ利益の利なり。
現代語訳
「利」にはいくつかの意味がある。「君子は義に敏く、小人は利に敏い」「利によって行動する」「利を見たら義を思う」などは、みな生計を営んで得るところがあることをいう。これは財利の利である。「用を利し、生活を豊かにする」「利器」などは、器物をよく整えて使いやすく便利にすることをいう。「用」もまた器である。これは鋭利の利である。易の「往くところがあるのによろしい」「大川を渡るのによろしい」などは、事を行って成功することをいう。これは吉利の利である。「物を利する」「天下を利する」などは、相手に益を得させ恩恵を被らせることをいう。これは利益の利である。
解説
この章句が説くこと
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『呻吟語』内篇・存心・大利も小義に換へず大利も小義に換へず、況んや小利を以て大義を壞るをや。貪る者は以て戒む可し。
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『大和俗訓』巻之四・心術下一利は天地より生じて、天下の人にあたへ養ひ給ふ理なれば、天下の公物なり。われ一人の私ものにすべからず。人とともに同じく利を得れば、人々各其所を得て害なし。身に私して、我一人利を得んとすれば、争出来て、かへつて我が身の害となる。義を行ひて自ら来る利は、真の利なり。わが益となる。むさぼり求むる利は、真の利にあらず。必身の禍となる。是利を求むるには非ず、害を求むるなり。
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『五常訓』巻之四・義一義は天理の公なり。利は人欲の私なり。二の者は、各別の事にて、雪と墨との如し。然れども、義を専らにして、わが身に私せず、人のため宜しくすれば、利を求めざれども、自ら我が為よからずと云ふ事なし。故に易にも、利者義之和也と云ふ。大学に、国は利を以て利とせず、義を以て利とすといへり。利欲を恣にして、我が身ひとつを利せんとすれば、必人に害ありて、我が身の禍となる。古語にも福は禍のかくるる所といへり。愚者は、此理にくらくして、唯われ一人の為よからん事を計れども、是即わが身の害となる。眼前の利をはかりて、後来のわざはひを知らず。
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『慎思録』巻之六近世の俗儒、名を好み異を立つるを以て心と為す者は、義利公私の弁を知らず、徒に利を言はざるを以て高しと為す。故に大学の所謂国は利を以て利と為さず、義を以て利と為すの言を疑ひて、以て利を言ふの事にして、君子の言に非ずと為す。知らず、利は是れ身を養ひ民を養ひ、国家に無かるべからざるの事、即ち是れ義の和なることを。故に君子も亦利を欲せざるに非ず。蓋し義有りて利自ら来たれば、則ち義に於いて害無し。只義を舎てて利を取り、利の為に義を行ふ者は、不可なり。苟も義を以て主と為せば、則ち利も亦義なり。利を以て主と為せば、則ち義も亦利なり。公私の間に在るのみ。蓋し利は人に施すべくして、己に専らにすべからず。夫子罕に利を言ふは、利を言はざるに非ざるなり。
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