弁名 / 清廉不欲
清者謂不爲惡所汚也。如伯夷陳文子。可以見已。不欲者寡欲也。謂不汚財利也。廉者廉隅之義。故謂取舍分辨截然也。後世遂以不汚財利爲廉。後世之廉。卽古之不欲也。學者察諸。
新字:清者謂不為悪所汚也。如伯夷陳文子。可以見已。不欲者寡欲也。謂不汚財利也。廉者廉隅之義。故謂取舎分弁截然也。後世遂以不汚財利為廉。後世之廉。即古之不欲也。学者察諸。
書き下し
清は悪の汚す所と為らざるを謂ふなり。伯夷・陳文子の如き、以て見るべきのみ。不欲は寡欲なり。財利に汚れざるを謂ふなり。廉は廉隅の義、故に取舎の分弁截然たるを謂ふなり。後世遂に財利に汚れざるを以て廉と為す。後世の廉は、即ち古の不欲なり。学者諸を察せよ。
現代語訳
清とは、悪に汚されないことをいう。伯夷や陳文子(悪に染まるのを避けて身を引いた人々)を見ればわかる。不欲とは欲が少ないことで、財貨や利益に汚れないことをいう。廉とは物の角(かど)のことで、だから取るべきものと捨てるべきものの区別がきっぱりしていることをいう。後世はついに財利に汚れないことを廉とするようになった。後世の廉は、つまり古の不欲である。学ぶ者はよく考えよ。
解説
清・廉・不欲という、いずれも潔さを表す語を徂徠は分ける。清は悪に染まらないこと、不欲は財利に汚れないこと、廉はもとは物の角を意味し、取るものと捨てるものの区別がきっぱりしていることだった。後世は財利に汚れないことを廉と呼ぶようになったが、それは古でいう不欲だという。清廉潔白は、賄賂を取らないことだけではない。何を引き受け何を断るか、その線引きを曖昧にしないことも廉である。曖昧な線引きは、やがて大きな不正の入口にもなるのである。
この章句が説くこと
清廉不欲財利倫理弁名
関連する章句
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『山鹿語類』士道・清廉此間自然に義を存する味あり。人の気質に因て、天性清廉にして、聊の貪なきものなり。是又其質人にすぐるゝ処ありといへども、学びつとめて此質を清廉に至るが如く致して、此に存心にあらざれば、広く推して物に及ぼす事能はざる也。清廉の器あらんには、利害にをいて更に放心することあるべからざれば、大丈夫のつとめ尤も爰にありぬべし。古の伯夷叔斉が言行、殆んど清廉の至極と云べし。孟子曰。伯夷目不視悪色。耳不聴悪声。非其君不事。非其民不使。治則進。乱則退。横政之所出。横民之所止。不忍居也。思与郷人処。如以朝衣朝冠坐於塗炭也。当紂之時。居北海之浜。以待天下之清也。故聞伯夷之風者。頑夫廉。懦夫有立志といへり。されば伯夷は聖之清なる者とは、無所雑謂なれば也。
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『山鹿語類』士道・清廉師曰。大丈夫内清廉を守らざれば、公につかへ父兄にしたがつて、利害此に萠して、天性の心を放し失つべし。清廉と云は、外の賄賂内の財貨さらに心に不付して、世人の難行所に卓爾と立て更に不屈、これを清廉と云へり。内に清廉なる処あらざれば、外少しの利害に奪はれて、其守りを失ひ、心こゝに放失すべし。されば孔子は忍渇於盗泉之水、曽参は回車於勝母之閭と云へる、是清廉の云に非ずや。さしも万鍾の禄を辞するばかり高尚なる行跡ある人も、一紙半銭の事の至てわづかなる処に、内に驚吝の情生ずるは、清廉の心薄くして、鄙吝の情こゝに生ずれば也。
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『臣軌』卷下 廉潔章清静無為なれば、則ち天これに時を与う。恭廉節を守れば、則ち地これに財を与う。君子は富貴と雖も、養を以て身を傷つけず。貧賤と雖も、利を以て廉を毀たず。吏たるを知る者は、法を奉じて以て人を利す。吏たるを知らざる者は、法を枉げて以て人を侵す。官を理むるは平に如くは莫く、財に臨むは廉に如くは莫し。廉平の徳は、吏の宝なり。
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『山鹿語類』士道・清廉古人云。彼清廉之士。一榻白雲。半窓明月。金穴百丈。而不操。銅山万仞。而不瞬と云へり。若し清廉の志あらざれば、人の不知不見、取ても害あらざらん処においては、自然に吝嗇の心生じつべし。昔し延陵の季子出てあそぶ。道にをいて人の遺せる金あり。是を見て傍に柴を負へる人あるに云けるは、是をひろつて利せよと。此人大に怒て曰。何ぞ汝位高く其詞いやしきや。我薪を負ふの雑人たりと云へども、人のおとせる金を拾て利するの心なしといへり。季子大に驚て其姓名を問けれども、ついに不答と也。負薪はわづかの利にして、おとしてある処の黄金は甚重しといへども、清廉の志あらん大丈夫は、不可得ものをうる処なし。
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『長短経』臣行故に礼に曰く『欲は縦にす可からず、志は満たす可からず』と。古語に云う「廉士は財を愛せざるに非ず。之を取るに道を以てす」と。詩に云う「切するが如く磋するが如く、琢するが如く磨するが如し」と。皆な矯偽の謂いなり。若し其の愚態を肆にし、其の鄙情に随い、名づけて任真と曰いて之を賢とせば、此れ先王の罪人なり。故に吾れ以為えらく、矯偽なる者は礼義の端なり。任真なる者は貪鄙の主なり。夫れ強いて仁する者、庸ぞ誣う可けんや。〕
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