弁名 / 仁
人性雖殊乎。然無知愚賢不肖。皆有相愛相輔相成之心。運用營爲之才者一矣。故資治於君。資養於民。農工商賈。皆相資爲生。不能去其群獨立於無人之鄕者。唯人之性爲然。夫君者群也。是其所以群人而統一之者。非仁乎安能焉。
新字:人性雖殊乎。然無知愚賢不肖。皆有相愛相輔相成之心。運用営為之才者一矣。故資治於君。資養於民。農工商賈。皆相資為生。不能去其群独立於無人之郷者。唯人之性為然。夫君者群也。是其所以群人而統一之者。非仁乎安能焉。
書き下し
人の性殊なりと雖も、然れども知愚賢不肖と無く、皆相愛し相輔け相成すの心、運用営為の才有る者は一なり。故に治を君に資り、養を民に資り、農工商賈、皆相資りて生を為す。其の群を去りて無人の郷に独立すること能はざる者は、唯だ人の性のみ然りと為す。夫れ君なる者は群なり。是れ其の人を群して之を統一する所以の者は、仁に非ずんば安んぞ能くせんや。
現代語訳
人の性はそれぞれ違うが、知恵のある者も愚かな者も、賢い者も不肖の者も、みな互いに愛し、助け、成し遂げ合う心と、物事を運び営む才を持っている点では同じである。だから治めることは君主に頼り、養うことは民に頼り、農・工・商はみな互いに頼り合って生きている。群れを離れて人のいない土地で独りで生きることができないのは、人の性だけがそうなのである。そもそも君とは群(群れをまとめる者)である。人々を群れとしてまとめ統一するのは、仁でなければどうしてできようか。
解説
人の性は千差万別でも、互いに助け合う心と働く才能は誰にでもある、と徂徠は言う。だから人は君主・農民・職人・商人として役割を分け合い、頼り合って生きる。独りで生きられないのが人の性であり、その群れをまとめる者が「君」である。君の語源を「群」に求め、仁を集団をまとめる力と見る。助け合う心や才能は自然に備わっていても、それをまとめ上げる人がいなければ群れは動かない。チームのリーダーの仕事とは、多様な人の才能をつなぎ、皆が互いに頼れる場を作ることなのである。
この章句が説くこと
仁群君分業協働チーム
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『徂徠先生答問書』卷上是のみに限らず。世界の惣体を士農工商の四民に立候事も、古者聖人の御立候事にて、天地自然に四民有之候にては無御座候。農は田を耕して、世界の人を養ひ、工は家器を作りて世界の人につかはせ、商は有無をかよはして世界の人の手伝をなし、士は是を治めて乱れぬやうにいたし候。各其自の役をのみいたし候へ共、相互に助けあひて、一色かけ候ても国土は立不申候。されば人はものすきなる物にて、はなれ〴〵に別なる物にては無之候へば、満世界の人こと〴〵く人君の民の父母となり給ふを助け候役人に候。如是御覧候はゞよく相済可申事に候。此故に士大夫の事を君子と申候。君子と申候は、子は男子の通称にて君徳ある男子と申事にて候。孔子の君子仁を去ていづくんぞ名を成んと被仰候も、君子といふ名は仁よりつけたる物と申事にて御座候。
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