弁道 / 第七則
今試觀天下。孰能孤立不群者。士農工商。相助而食者也。不若是則不能存矣。雖盜賊必有黨類。不若是則亦不能存矣。故能合億萬人者君也。能合億萬人。而使遂其親愛生養之性者。先王之道也。學先王之道而成德於我者。仁人也。
新字:今試観天下。孰能孤立不群者。士農工商。相助而食者也。不若是則不能存矣。雖盗賊必有党類。不若是則亦不能存矣。故能合億万人者君也。能合億万人。而使遂其親愛生養之性者。先王之道也。学先王之道而成徳於我者。仁人也。
書き下し
今試みに天下を観るに、孰か能く孤立して群せざる者ぞ。士農工商は相助けて食む者なり。是くの若くならずんば則ち存すること能はず。盗賊と雖も必ず党類有り。是くの若くならずんば則ち亦た存すること能はず。故に能く億万人を合はする者は君なり。能く億万人を合はせて、其の親愛生養の性を遂げしむる者は、先王の道なり。先王の道を学びて徳を我に成す者は仁人なり。
現代語訳
試みに天下を見渡してみよ。誰が孤立して群れずに生きられようか。士農工商は互いに助け合って食べている者である。そうでなければ生きていけない。盗賊でさえ必ず仲間がいる。そうでなければやはり生きていけない。だから億万の人を一つにまとめられるのが君主である。億万の人をまとめて、親しみ愛し生かし養うという本性を遂げさせるものが先王の道である。先王の道を学んで、その徳を自分の身に成し遂げた者が仁人である。
解説
人は一人では生きられないという観察から、徂徠は君主と道と仁人の関係を一続きに定義する。士農工商は助け合って食べており、盗賊にさえ仲間がいる。億万人をまとめるのが君、まとめた人々に親愛生養の性を遂げさせるのが先王の道、その道を学んで身に徳を成すのが仁人である。社会を分業と協働の網として見る視点は、江戸の経世論として先駆的である。組織の長の役目を、人々が互いに支え合える場を整えることだと捉え直すと、管理職の仕事の意味がはっきりする。
この章句が説くこと
仁人君協働分業先王社会
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