弁名 / 德
有曰以德。曰尙德。曰知德。曰德不孤。曰懷德。曰好德。曰亂德之類。皆指有德之人也。又有對怨而言者。如曰以德報怨。曰有德色。皆指恩惠而言之。
新字:有曰以徳。曰尚徳。曰知徳。曰徳不孤。曰懐徳。曰好徳。曰乱徳之類。皆指有徳之人也。又有対怨而言者。如曰以徳報怨。曰有徳色。皆指恩恵而言之。
書き下し
徳を以てすと曰ひ、徳を尚ぶと曰ひ、徳を知ると曰ひ、徳は孤ならずと曰ひ、徳を懐ふと曰ひ、徳を好むと曰ひ、徳を乱すと曰ふの類、皆有徳の人を指すなり。又た怨に対して言ふ者有り。徳を以て怨みに報ゆと曰ひ、徳色有りと曰ふが如き、皆恩恵を指して之を言ふ。
現代語訳
「徳によって」「徳を尊ぶ」「徳を知る」「徳は孤立しない」「徳を思う」「徳を好む」「徳を乱す」といった類は、みな徳のある人を指している。また「怨み」に対して言う場合がある。「徳で怨みに報いる」「恩を着せる顔つき(徳色)がある」などは、みな恩恵を指して言ったものである。
解説
経書に見える「徳」の用法を徂徠は二つに整理する。「徳を尚ぶ」「徳は孤ならず」などの徳は、抽象的な善さではなく、徳を備えた人そのものを指す。一方、「徳を以て怨みに報ゆ」の徳は、怨みと対になる恩恵の意味である。同じ字でも文脈で指すものが違い、それを一つの抽象概念として読むと意味を取り違える。「徳は孤ならず」も、徳のある人には仲間が集まるという具体的な話になる。組織の議論でも、抽象語が人を指すのか行為を指すのかを確かめるだけで、ずいぶん話がかみ合うようになる。
この章句が説くこと
徳恩恵論語用例人望怨み
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