弁道 / 第二十三則
孔子明言吾道。吾道者先王之道也。故孔子曰。文王既歿。文不在茲乎。夫先王之道。安天下之道也。安天下之道在仁。故曰一以貫之。何以謂貫之。仁一德也。然亦大德也。故可能貫衆德焉。先王之道多端矣。唯仁可以貫之矣。辟如緡貫錢然。故曰貫。若一理也一心也誠也。則一而已矣。何必曰貫。故曾子曰忠恕而已矣。忠恕爲仁之方故也。曰而已矣者。猶之堯舜之道孝弟而已矣。孝弟豈盡於堯舜之道乎。則忠恕豈盡於道乎。然由是以求之庶足以盡之矣。古人言語皆如此。後世理學者流。無有運用營爲之意。急欲盡其理於目前也。故忠恕爲理之虛象。而有天忠恕聖人忠恕學者忠恕種種之說。豈曾子時語意邪。
新字:孔子明言吾道。吾道者先王之道也。故孔子曰。文王既歿。文不在茲乎。夫先王之道。安天下之道也。安天下之道在仁。故曰一以貫之。何以謂貫之。仁一徳也。然亦大徳也。故可能貫衆徳焉。先王之道多端矣。唯仁可以貫之矣。辟如緡貫銭然。故曰貫。若一理也一心也誠也。則一而已矣。何必曰貫。故曽子曰忠恕而已矣。忠恕為仁之方故也。曰而已矣者。猶之堯舜之道孝弟而已矣。孝弟豈尽於堯舜之道乎。則忠恕豈尽於道乎。然由是以求之庶足以尽之矣。古人言語皆如此。後世理学者流。無有運用営為之意。急欲尽其理於目前也。故忠恕為理之虚象。而有天忠恕聖人忠恕学者忠恕種種之説。豈曽子時語意邪。
書き下し
孔子明らかに吾が道と言ふ。吾が道とは先王の道なり。故に孔子曰く、「文王既に没す、文茲に在らずや」と。夫れ先王の道は天下を安んずるの道なり。天下を安んずるの道は仁に在り。故に一以て之を貫くと曰ふ。何を以て之を貫くと謂ふ。仁は一徳なり。然れども亦た大徳なり。故に能く衆徳を貫くべし。先王の道は多端なり。唯仁以て之を貫くべし。辟へば緡の銭を貫くが如く然り。故に貫くと曰ふ。若し一理なり一心なり誠なりとせば、則ち一のみ。何ぞ必ずしも貫くと曰はん。故に曾子曰く、「忠恕のみ」と。忠恕は仁の方たるが故なり。「のみ」と曰ふは、猶ほ「堯舜の道は孝弟のみ」のごとし。孝弟豈に堯舜の道を尽くさんや。則ち忠恕豈に道を尽くさんや。然れども是に由りて以て之を求むれば、庶はくは以て之を尽くすに足らん。古人の言語は皆此くの如し。後世の理学者流は、運用営為の意有る無く、急に其の理を目前に尽くさんと欲するなり。故に忠恕は理の虚象と為りて、天の忠恕、聖人の忠恕、学者の忠恕、種種の説有り。豈に曾子の時の語意ならんや。
現代語訳
孔子ははっきり「わが道」と言っている。わが道とは先王の道である。だから孔子は「文王はすでに亡くなったが、文はここにあるではないか」と言った。そもそも先王の道は天下を安んずる道である。天下を安んずる道は仁にある。だから「一つで貫く」と言うのである。なぜ「貫く」と言うのか。仁は一つの徳であるが、また大きな徳でもある。だから多くの徳を貫くことができる。先王の道は多方面にわたる。ただ仁だけがそれを貫ける。ちょうど銭差しの紐が銭を貫くようなものである。だから「貫く」と言う。もし一つの理、一つの心、誠だというなら、それは一つのものでしかない。どうしてわざわざ「貫く」と言う必要があろうか。だから曾子は「忠恕だけだ」と言った。忠恕は仁に至る方法だからである。「だけだ」と言うのは、「堯舜の道は孝悌だけだ」と同じ言い方である。孝悌がどうして堯舜の道を尽くそうか。それなら忠恕がどうして道を尽くそうか。しかしそこから求めていけば、ほぼ尽くすことができるだろう。古人の言葉はみなこのようなものである。後世の理学者たちには、運用し営むという考えがなく、急いでその理を目の前で尽くそうとする。だから忠恕は理の抽象的な影となり、天の忠恕、聖人の忠恕、学ぶ者の忠恕などさまざまな説が生まれた。どうして曾子の時代の言葉の意味であろうか。
解説
この章句が説くこと
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論語・雍也篇宰我問いて曰く、「仁者は之に告げて『井に仁有り』と曰うと雖も、其れ之に従わんか。」子曰く、「何為れぞ其れ然らんや。君子は逝かしむ可きも、陥る可からず。欺く可きも、罔う可からず。」
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論語・八佾篇子曰く、人にして仁ならずんば、礼を如(いかん)せん;人にして仁ならずんば、楽を如せん。
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論語・憲問篇「克・伐・怨・欲、行われずんば、以て仁と為す可きか。」子曰く、「以て難しと為す可し。仁は則ち吾知らざるなり。」
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論語・里仁篇子曰わく、不仁者は久しく約に処るべからず、長く楽に処るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利とす。
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論語・微子篇微子これを去り、箕子これに為に奴となり、比干諫めて死す。孔子曰わく、殷に三仁有り。
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