晏子春秋 / 雑下・景公毀晏子鄰以益其宅晏子因陳桓子以辭
晏子使魯,景公為毀其鄰,以益其宅。晏子反,聞之,待於郊,使人復於公曰:「臣之貪頑而好大室也,乃通於君,故君大其居,臣之罪大矣。」公曰:「夫子之鄉惡而居小,故為夫子為之,欲夫子居之,以慊寡人也。」晏子對曰:「先人有言曰:『毋卜其居,而卜其鄰舍。』今得意於君者,慊其居則毋卜。已沒氏之先人卜與臣鄰,吉,臣可以廢沒氏之卜乎?夫大居而逆鄰歸之心,臣不願也,請辭。」卒復其舊宅。公弗許,因陳桓子以請,乃許之。
新字:晏子使魯,景公為毀其鄰,以益其宅。晏子反,聞之,待於郊,使人復於公曰:「臣之貪頑而好大室也,乃通於君,故君大其居,臣之罪大矣。」公曰:「夫子之郷悪而居小,故為夫子為之,欲夫子居之,以慊寡人也。」晏子対曰:「先人有言曰:『毋卜其居,而卜其鄰舎。』今得意於君者,慊其居則毋卜。已没氏之先人卜与臣鄰,吉,臣可以廃没氏之卜乎?夫大居而逆鄰帰之心,臣不願也,請辞。」卒復其旧宅。公弗許,因陳桓子以請,乃許之。
書き下し
晏子魯に使いす。景公為に其の鄰を毀ち、以て其の宅に益す。晏子反り、之を聞き、郊に待ち、人をして公に復せしめて曰く、「臣の貪頑にして大室を好むや、乃ち君に通ず。故に君其の居を大にす。臣の罪大なり」と。公曰く、「夫子の郷は悪くして居は小なり。故に夫子の為に之を為す。夫子の之に居らんことを欲し、以て寡人を慊くするなり」と。晏子対えて曰く、「先人言有り、『其の居を卜する毋く、其の鄰舎を卜せよ』と。今君に意を得たる者、其の居に慊くならば則ち卜すること毋し。已に没氏の先人、臣と鄰たらんことを卜して吉なり。臣没氏の卜を廃す可けんや。夫れ居を大にして鄰の帰する心に逆らうは、臣願わざるなり。請う、辞せん」と。卒に其の旧宅に復す。公許さず、陳桓子に因りて以て請い、乃ち之を許す。
現代語訳
晏子が魯に使いしている間に、景公は晏子のために隣家を取り壊し、その屋敷を広げました。晏子は帰国してそれを聞き、郊外で待ち、人を遣わして公に申し上げさせました。「私が貪欲で頑固で、大きな家を好むことが君に伝わってしまったので、君は私の住まいを広げてくださいました。私の罪は大きいです。」公は「そなたの住む里は環境が悪く、家も小さい。だからそなたのためにしたのだ。そなたがここに住み、私を満足させてほしい」と言いました。晏子は答えました。「昔の人はこう言いました。『住まいを占うのではなく、隣近所を占え』と。いま君の意にかなった者は、住まいに満足すれば占いなど要りません。すでに没氏の先人が、私と隣になることを占って吉でした。私が没氏の占いを無駄にしてよいでしょうか。住まいを広げて、隣人が私に寄せる心に逆らうことは、私の望むところではありません。どうかお断りいたします。」こうして晏子は旧宅に戻りました。公は許さなかったので、陳桓子を通して願い出て、ようやく許されました。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『晏子春秋』雑下・田桓子疑晏子何以辭邑晏子答以君子之事也/景公欲更晏子宅晏子辭以近市得所求諷公省刑景公晏子に邑を賜う。晏子辞す。田桓子晏子に謂いて曰く、「君歓然として子に邑を与う。必ず受けずして以て君を恨ましむるは何ぞや」と。晏子対えて曰く、「嬰聞く、節を上に受くる者は、寵君に長じ、倹を処に居る者は、名外に広しと。夫れ寵を長じ名を広むるは、君子の事なり。嬰独り庸ぞ能く已まんや」と。景公晏子の宅を更めんと欲し、曰く、「子の宅は市に近く、湫隘囂塵にして、以て居る可からず。請う、諸を爽塏なる者に更めん」と。晏子辞して曰く、「君の先臣容る。臣以て之を嗣ぐに足らず。臣に於て侈なり。且つ小人市に近ければ、朝夕求むる所を得。小人の利なり。敢えて裡旅を煩わさんや」と。公笑いて曰く、「子市に近し。貴賤を識るか」と。対えて曰く、「既に竊かに之を利す。敢えて識らざらんや」と。公曰く、「何か貴く何か賤き」と。是の時や、公刑に繁く、踊を鬻ぐ者有り。敵対えて曰く、「踊貴くして屨賤し」と。公愀然として容を改め、公是が為に刑を省く。君子曰く、「仁人の言、其の利博きかな。晏子の一言にして、斉侯刑を省く。詩に曰く、『君子如し祉あらば、乱庶わくは遄やかに已まん』と。其れ是れを之謂うか」と。
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『晏子春秋』雑下・景公欲為晏子築室于宮內晏子稱是以遠之而辭/景公以晏子妻老且惡欲納愛女晏子再拜以辭景公晏子に謂いて曰く、「寡人朝昔に相見えんと欲し、夫子の為に室を子の閨内に築かんと欲す。可なるか」と。晏子対えて曰く、「臣之を聞く、隠れて顕れ、近くして結ぶは、維れ至賢のみ。臣の如き者は、其の容止を飾りて以て命を待つも、猶お罪戻を恐る。今君之を近づくるは、是れ之を遠ざくるなり。請う、辞せん」と。景公愛女有り、晏子に嫁せんことを請う。公乃ち往きて晏子の家に燕し、酒を飲み、酣にして、公其の妻を見て曰く、「此れ子の内子か」と。晏子対えて曰く、「然り、是なり」と。公曰く、「嘻、亦た老いて且つ悪し。寡人に女有り、少くして且つ姣なり。請う、以て夫子の宮に満たさん」と。晏子席を違りて対えて曰く、「乃ち此れ則ち老いて且つ悪し。嬰之と居ること故し。故に其の少くして姣なるに及べり。且つ人固より壮を以て老に托し、姣を以て悪に托す。彼嘗て托して嬰之を受けたり。君賜うこと有りと雖も、嬰をして其の托に倍かしむ可けんや」と。再拝して辞す。
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『晏子春秋』雑下・景公以晏子食不足致千金而晏子固不受晏子方に食す。景公使者をして至らしめ、食を分かちて之に食わしむ。使者飽かず、晏子も亦飽かず。使者反りて、之を公に言う。公曰く、「嘻、晏子の家、是くの若く其れ貧しきか。寡人知らず、是れ寡人の過ちなり」と。吏をして千金と市租とを致さしめ、以て賓客に奉ぜんことを請う。晏子辞す。三たび之を致すも、終に再拝して辞して曰く、「嬰の家貧しからず。君の賜を以て、沢三族を覆い、延びて交遊に及び、以て百姓を振う。君の賜厚し。嬰の家貧しからざるなり。嬰聞く、夫れ厚く之を君に取りて之を民に施せば、是れ臣、君に代わりて民に君たるなり。忠臣は為さず。厚く之を君に取りて民に施さざれば、是れ筐篋の蔵を為すなり。仁人は為さず。進みては君に取り、退きては罪を士に得、身死して財他人に遷るは、是れ宰蔵を為すなり。智者は為さず。夫れ十総の布、一豆の食、中に足れば免れん」と。景公晏子に謂いて曰く、「昔吾が先君桓公、書社五百を以て管仲に封ず。辞せずして受く。子の之を辞するは何ぞや」と。晏子曰く、「嬰聞く、聖人も千慮に必ず一失有り、愚人も千慮に必ず一得有りと。意うに管仲の失にして、嬰の得なる者か。故に再拝して敢えて命を受けず」と。
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『晏子春秋』雑下・景公祿晏子平陰與槁邑晏子願行三言以辭景公晏子に禄するに平陰と槁邑とを以てし、市に反る者十一社なり。晏子辞して曰く、「吾が君宮室を治むるを好み、民の力弊れたり。又盤遊玩好を好みて以て女子を飭り、民の財竭きたり。又師を興すを好み、民の死近し。其の力を弊らし、其の財を竭くし、其の死を近づく。下の其の上を疾むこと甚だし。此れ嬰の敢えて受けざる所以なり」と。公曰く、「是れ則ち可なり。然りと雖も、君子独り富と貴とを欲せざらんや」と。晏子曰く、「嬰聞く、人臣為る者は、君を先にして身を後にし、国を安んじて家を度り、君を宗として身を処くと。曷為れぞ独り富と貴とを欲せざらん」と。公曰く、「然らば則ち曷を以て夫子に禄せん」と。晏子対えて曰く、「君、漁塩を商し、関市は譏して征せず、耕す者は十に一を取り、刑罰を弛め、死に若たる者は刑し、刑に若たる者は罰し、罰に若たる者は免ぜよ。此の三言の若きは、嬰の禄にして、君の利なり」と。公曰く、「此の三言は、寡人事とする無し。請う、以て夫子に従わん」と。公既に若の三言を行い、人をして大国に問わしむ。大国の君曰く、「斉安し」と。人をして小国に問わしむ。小国の君曰く、「斉我に加えず」と。
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『晏子春秋』雑上・景公使晏子予魯地而魯使不盡受景公、魯君に地を予う。山陰の数百社、晏子をして之を致さしむ。魯、子叔昭伯をして地を受けしむるも、尽くは受けず。晏子曰く、「寡君地を献ずるは、忠廉なり。曷為れぞ尽くは受けざる」と。叔昭伯に曰く、「臣命を君より受く、曰く、『諸侯相見るに、交ごも譲り、其の卑きに処るを争うは、礼の文なり。交ごも委ね、多きを争いて少なきを受くるは、行の実なり。礼は文を前に成し、行は章を後に成すは、交わりの長久なる所以なり。且つ吾聞く、君子は人の歓を尽くさず、人の忠を竭くさず、と。吾是を以て尽くは受けざるなり』と。晏子帰りて公に報ず。公喜びて笑いて曰く、「魯君猶お是くのごときか」と。晏子曰く、「臣聞く、大国は名に貪り、小国は実に貪る、此れ諸侯の通患なり。今魯は卑きに処りて尊きに貪らず、実を辞して多きに貪らず、廉を行いて苟くも得ることを為さず、道義は苟くも合うことを為さず、人の歓を尽くさず、人の忠を竭くさず、以て其の交わりを全うす。君の道義は世俗に殊なり、国は公患を免る」と。公曰く、「寡人魯君を説ぶ、故に之に地を予う。今行い果たして此くのごとし、吾将に人をして之を賀せしめんとす」と。晏子曰く、「不なり。君歓を以て之に地を予えて其の辞を賀すれば、則ち交わり親しからずして、地は徳と為らず」と。公曰く、「善し」と。是に於て魯の幣を重んじて諸侯に比する毋く、其の礼を厚くして賓客に比する毋く、君子魯に于て、而る後に廉を行い地を辞するの以て名を重んず可きを明らかにするなり。
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『春秋左氏伝』昭公三年 踊貴く屨賤し臣に於いて侈れり。且つ小人市に近く、朝夕求むる所を得るは、小人の利なり。敢へて里旅を煩はさんや」と。公笑ひて曰く、「子市に近し、貴賤を識るか」と。對へて曰く、「既に之を利とす、敢へて識らざらんや」と。公曰く、「何か貴く何か賤き」と。是に於いて景公刑を繁くし、踊を鬻(ひさ)ぐ者有り。故に對へて曰く、「踊貴く屨賤し」と。既已に君に告ぐ、故に叔向と語りて之を稱す。景公是が為に刑を省く。君子曰く、「仁人の言、其の利博いかな。晏子一言して齊侯刑を省く。詩に曰く、『君子如し祉(よろこ)べば、亂庶(こひねが)はくは遄(すみ)やかに已まん』と。其れ是を之れ謂ふか」と。晏子晉に如くに及び、公其の宅を更む。反れば則ち成れり。既に拜して乃ち之を毀ち、而して里室を為ること、皆其の舊の如くし、則ち宅人をして之に反らしむ。且つ諺に曰く、『宅を是れ卜するに非ず、唯だ鄰を是れ卜す』と。二三子先づ鄰を卜せり。卜に違ふは不祥なり。君子は非禮を犯さず、小人は不祥を犯さず。古の制なり。吾敢へて諸に違はんや」と。卒に其の舊宅に復す。公許さず。陳桓子に因りて以って請ひ、乃ち之を許す。
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