晏子春秋 / 雑下・田無宇請求四方之學士晏子謂君子難得
田桓子見晏子獨立于牆陰,曰:「子何為獨立而不憂?何不求四方之學士可者而與坐?」晏子曰:「共立似君子,出言而非也。嬰惡得學士之可者,而與之坐。且君子之難得也,若華山然,名山既多矣,松柏既茂矣,望之然,盡目力不知厭。而世有所美焉,固欲登彼之上,仡仡然不知厭。小人者與此異,若部婁之未登,善。登之無蹊,維有楚棘而已,遠望無見也,俛就則傷要,嬰惡能無獨立焉?且人何憂,靜處遠慮,見歲若月,學問不厭,不知老之將至,安用從酒?」田桓子曰:「何謂從酒?」晏子曰:「無客而飲,謂之從酒。今若子者,晝夜守尊,謂之從酒也。」
新字:田桓子見晏子独立于牆陰,曰:「子何為独立而不憂?何不求四方之学士可者而与坐?」晏子曰:「共立似君子,出言而非也。嬰悪得学士之可者,而与之坐。且君子之難得也,若華山然,名山既多矣,松柏既茂矣,望之然,尽目力不知厭。而世有所美焉,固欲登彼之上,仡仡然不知厭。小人者与此異,若部婁之未登,善。登之無蹊,維有楚棘而已,遠望無見也,俛就則傷要,嬰悪能無独立焉?且人何憂,静処遠慮,見歳若月,学問不厭,不知老之将至,安用従酒?」田桓子曰:「何謂従酒?」晏子曰:「無客而飲,謂之従酒。今若子者,昼夜守尊,謂之従酒也。」
書き下し
田桓子晏子の牆陰に独り立つを見て曰く、「子何為れぞ独り立ちて憂えざる。何ぞ四方の学士の可なる者を求めて与に坐せざる」と。晏子曰く、「共に立てば君子に似たるも、言を出だせば非なり。嬰悪くんぞ学士の可なる者を得て、之と坐せん。且つ君子の得難きや、華山の若く然り。名山既に多く、松柏既に茂る。之を望みて然り、目力を尽くして厭くを知らず。而して世に美とする所有り、固より彼の上に登らんと欲し、仡仡然として厭くを知らず。小人は此れと異なり、部婁の未だ登らざるが若き、善し。之に登るに蹊無く、維れ楚棘有るのみ。遠く望めども見る無く、俛して就けば則ち要を傷つく。嬰悪くんぞ独り立つこと無きを能わんや。且つ人何ぞ憂えん。静処して遠慮し、歳を見ること月の若し。学問厭かず、老の将に至らんとするを知らず。安んぞ酒に従うを用いん」と。田桓子曰く、「何をか酒に従うと謂う」と。晏子曰く、「客無くして飲む、之を酒に従うと謂う。今子の若き者は、昼夜尊を守る、之を酒に従うと謂うなり」と。
現代語訳
田桓子は、晏子が垣根の陰に一人で立っているのを見て言いました。「あなたはなぜ一人で立って、憂えないのですか。なぜ各地の学士のよい者を探して、共に座らないのですか。」晏子は言いました。「並んで立てば君子に似ていても、口を開けば間違っています。私はどうして、よい学士を得て共に座れましょう。しかも君子は得がたいもので、華山のようです。名山はすでに多く、松や柏はすでに茂っています。望み見ても、目の力を尽くして飽きることがありません。世の人はそこに美を見て、もとよりその頂に登りたいと思い、勇んで飽きることがありません。小人はこれと異なり、小さな丘のようで、まだ登らないうちはよく見えます。しかし登ろうにも道はなく、あるのは棘ばかりです。遠くを望んでも何も見えず、身をかがめて進めば腰を傷めます。私がどうして一人で立たずにいられましょう。それに、人はなにを憂えることがありましょう。静かな場所で遠くを思い、一年を一月のように見て、学問に飽きず、老いが来るのも知りません。どうして酒に従う必要がありましょう。」田桓子が「酒に従うとは何ですか」と尋ねると、晏子は言いました。「客もいないのに飲むこと、これを酒に従うと言います。今のあなたのように、昼も夜も酒樽を守っているのを、酒に従うと言うのです。」
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『初学訓』巻之三一善を行ふに、愛敬の心を本とすべし。其人に随ひて、愛敬に厚薄有るべし。一学問するに、道を知らんことを以て心とし、善を行ひて、人を愛し助くるを以て事とすべし。是、学問の要とする所、本を務むるなり。其目的は、君子とならんことを期するを以て志とすべし。然らずして、才学のみに心を用ひ、是を以て、みづから誇り、人を侮る故、書を読まざる時より、心ざま、かへつて悪しくなりもて行けり。是、君子となることを好まずして、小人となることを学ぶなり。書を読むによつて、かへつて小人となるは口をし。もし如斯ならば、学問すれば人品悪しくなると、俗人のいへるも宜なり。かかる学問は、せざるに如かず。されども、それによつて学問せざるは、たとへば噎によつて食せざるが如し。食は日用の物なり。むせたるは、食する人の過なり。
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『大和俗訓』巻之二・為学下一楊子曰学者所以求為君子也。言ふ意は、学問をするは何の為ぞや。君子とならんが為なり。君子とは有徳人を云ふ。君子の字義は、易の正義に、人の君となりて万民を子のごとくする徳ある人をいへり。賤くして下にありても、其徳あれば君子と称す君子となるとは人となるなり。学ばざる人は云ふにたらず。学んでも君子とならずんば、学ばざるに同じくして、人と生れたるかひなし。君子となる事容易からず。しかれども、志を立ておこたらずんば、必其功あるべし。古語にも、志あるものは其事つひに成るといへり。学は終身のことなり。一息もいまだ残れる内は、此志怠るべからず。是人の一生の間のつとめなり。
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『益軒家訓』聖学須勤凡人たるものは、聖人の教を貴び受け、強く志を立て、人の道を学び知り、勤め行ひて君子とならん事を思ひ、常に心にかけて怠るべからず。これ聖学に志すの道なり。其学問の法は、書を読み古を考へ、人に問ひ己におもひ、人の諫いましめを聴用ひ、常に我が身を顧て、我が愚なる事を知り、わが不善なる事を知り、わが過を改めて善にうつるべし。君子の過ちや日月の食の如し、過つや人皆之を見、更むるや人皆之を仰ぐ。また小人の過つや、かならず文る。過をはぢて蔽ひかくすは小人の心なり、甚卑し。古語に聖人に非ずんば誰か能く過ち無からん、過ちて能く改むる、善焉より大なるは莫しといへり。仮にも我を智ありとし、善也と思ふべからず。わが身のちからをたのみて、人を愚なりとし、侮るべからず。諫を拒ぎ、我を是とすべからず。
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『翁問答』下卷之本心きたなくけがれて身の行ひよこしまなるをば、凡夫の口にも犬畜生など云ていやしみぬれば、正真の学問の志なき人はまことの人にあらざれば其はぢを知るべし、学問はせぬがよしといへる人にむかひて、わとのは犬畜生のごとき悪人なりとそしらば、必さしちがふべくいかりをなすべし、又心いさぎよく行儀正しき君子なりとほめたらんは、必ずえみをふくみてよろこぶべし、然るときは学問はせぬがよしと云へるは、其人の本意にあらず、只学問の本然をしらず、書物をよむばかりを学問とわきまへたるあやまりなり
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『初学訓』巻之三一人となりては、稚き時より、其父兄となる人は、其子弟に、書を読ませ、道を学ばしむべし。学問の道は他なし、只道を知りて、善悪を明らかにわかち、善を行ひ悪を去るにあり。故に、君子の学問は、仁心を保ち、つねに善を行ふを宗とす。善を行はざれば、博学にして経伝に明らかなるも、無用のことなり。大人は、善を行へば、其ほどこしひろし。然れども、極めて賤しき乞丐といへども、善を行ふに志あれば、其分に随ひて、其功多し。故に、学問する人は、只つねに善をするに志ありて、日々、善を行ふをつとめとすべし。
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論語・学而篇子曰く、「君子重からざれば則ち威あらず、学べば則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ、過てば則ち改むるに憚ること勿かれ。」
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