晏子春秋 / 雑下・景公成柏寢而師開言室夕晏子辨其所以然
景公新成柏寢之室,使師開鼓琴。師開左撫宮,右彈商,曰:「室夕。」公曰:「何以知之?」師開對曰:「東方之聲薄,西方之聲揚。」公召大匠曰:「立室何為夕?」大匠曰:「立室以宮矩為之。」於是召司空曰:「立宮何為夕?」司空曰:「立宮以城矩為之。」明日,曼子朝,公曰:「先君太公以營丘之封立城,曷為夕?」晏子對曰:「古之立國者,南望南斗,北戴樞星,彼安有朝夕哉?然而以今之夕者,周之建國,國之西方,以尊周也。」公蹴然曰:「古之臣乎!」
新字:景公新成柏寝之室,使師開鼓琴。師開左撫宮,右弾商,曰:「室夕。」公曰:「何以知之?」師開対曰:「東方之声薄,西方之声揚。」公召大匠曰:「立室何為夕?」大匠曰:「立室以宮矩為之。」於是召司空曰:「立宮何為夕?」司空曰:「立宮以城矩為之。」明日,曼子朝,公曰:「先君太公以営丘之封立城,曷為夕?」晏子対曰:「古之立国者,南望南斗,北戴枢星,彼安有朝夕哉?然而以今之夕者,周之建国,国之西方,以尊周也。」公蹴然曰:「古之臣乎!」
書き下し
景公新たに柏寝の室を成し、師開をして琴を鼓せしむ。師開左に宮を撫し、右に商を弾じて曰く、「室夕なり」と。公曰く、「何を以て之を知るか」と。師開対えて曰く、「東方の声は薄く、西方の声は揚がる」と。公大匠を召して曰く、「室を立つること何為れぞ夕なる」と。大匠曰く、「室を立つるは宮の矩を以て之を為す」と。是に於て司空を召して曰く、「宮を立つること何為れぞ夕なる」と。司空曰く、「宮を立つるは城の矩を以て之を為す」と。明日、曼子朝す。公曰く、「先君太公、営丘の封を以て城を立つ、曷為れぞ夕なる」と。晏子対えて曰く、「古の国を立つる者は、南は南斗を望み、北は枢星を戴く。彼安くんぞ朝夕有らんや。然り而して今の夕なる者を以てするは、周の国を建つるや、国の西方にし、以て周を尊ぶなり」と。公蹴然として曰く、「古の臣なるかな」と。
現代語訳
景公は新しく柏寝の部屋を完成させ、師開に琴を弾かせました。師開は左手で宮の音を、右手で商の音を奏で、「この部屋は夕(西にかたよっています)」と言いました。公が「どうしてわかるのか」と尋ねると、師開は「東の方角の音は薄く、西の方角の音は高く響くからです」と答えました。公は大工の棟梁を呼び、「部屋を建てるのに、なぜ夕になったのか」と問います。棟梁は「部屋は宮殿の定規に従って造りました」と答えました。そこで司空を呼んで「宮殿を建てるのに、なぜ夕なのか」と問うと、司空は「宮殿は城の定規に従って造りました」と答えます。翌日、晏子が朝廷に出ると、公は「先君の太公は営丘に封ぜられて城を築いた。なぜ夕なのか」と尋ねました。晏子は答えます。「昔の国づくりをする者は、南は南斗を望み、北は北極星を戴きました。そこに朝も夕もありましょうか。それでも今のように夕になっているのは、周が国を建てたとき、その国の西の方角に合わせて周を尊んだからです。」公は居ずまいを正して、「古の臣だな」と言いました。
解説
この章句が説くこと
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『晏子春秋』諫上・景公夜聽新樂而不朝晏子諫晏子朝し、杜扃・望羊は朝に待つ。晏子曰く、「君奚の故に朝せざるか」と。対えて曰く、「君は夜に発して以て朝す可からず」と。晏子曰く、「何の故ぞ」と。対えて曰く、「梁丘据歌人虞を入れ、斉音を変えたり」と。晏子朝を退き、宗祝に命じて礼を修めしめて虞を拘う。公之を聞きて怒りて曰く、「何の故にして虞を拘うるか」と。晏子曰く、「新楽を以て君を淫せしむればなり」と。公曰く、「諸侯の事、百官の政は、寡人願わくは以て子に請わん。酒醴の味、金石の声は、願わくは夫子与ること無かれ。夫れ楽は、何ぞ必ずしも夫の故ならんや」と。対えて曰く、「夫れ楽亡べば礼之に従い、礼亡べば政之に従い、政亡べば国之に従い、国衰う。臣は君の政に逆らうの行いを懼る。歌有り、紂は北裡を作り、幽・厲の声あり、顧みるに夫れ淫にして鄙なれば偕に亡ぶ。君は奚ぞ夫の故を軽く変えんや」と。公曰く、「不幸にして社稷の業を有し、言を択ばずして之を出せり、請う命を受けん」と。
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『晏子春秋』諫下・景公登路寢台不終不說晏子諫景公路寝の台に登り、終うる能わずして、陛に息み、忿然として色を作し、説ばず、曰く、「孰か高台を為りて、人を病ましむること之れ甚だしき」と。晏子曰く、「君身に節して高くする勿からんことを欲せば、人をして之を高くせしめて罪する勿れ。今高ければ之に従うに罪を以てし、卑ければ亦た之に従うに罪を以てす。敢えて問う、人をして此の如くならしむるは可ならんか。古者の宮室を為るや、以て生に便なるに足る、以て奢侈と為さず、故に身に節し、民に謂う。夏の衰うるに及びて、其の王桀徳行に背棄し、璿室玉門を作為す。殷の衰うるや、其の王紂傾宮霊台を作為し、卑狭なる者は罪有り、高大なる者は賞有り、是を以て身に及べり。今君は高きも亦た罪有り、卑きも亦た罪有り、夏殷の王より甚だし。民力殫き乏しけれども、罪を免れず。嬰国の流失して、公の享けざるを得んことを恐る」と。公曰く、「善し、寡人自ら知る、誠に財を費やし民を労し、以て功無しと為し、又た従いて之を怨む、是れ寡人の罪なり。夫子の教えに非ざれば、豈に社稷を守るを得んや」と。遂に下り、再拝し、果たして台に登らず。
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『晏子春秋』諫下・景公自矜冠裳遊處之貴晏子諫景公西曲潢を為る。其の深さ軌を滅し、高さ三仞、木を横たえて龍蛇とし、木を立てて鳥魯とす。公黼黻の衣、素繡の裳を衣て、一衣にして五彩具わり、球玉を帯びて冠且、被髪乱首にして、南面して立ち、傲然たり。晏子見ゆ。公曰く、「昔仲父の霸は何如」と。晏子首を抑えて対えず。公又た曰く、「昔仲父の霸は何如」と。晏子対えて曰く、「臣之を聞く、維れ翟人は龍蛇と比すと。今君木を横たえて龍蛇とし、木を立てて鳥魯とす、亦た室の一就なり、何ぞ霸に在るに暇あらんや。且つ公室の美を伐り、衣服の麗を矜り、一衣にして五彩具わり、球玉を帯びて冠且、被髪乱首なるは、亦た室の一容なり。万乗の君にして、一心に邪に壱にす、君の魂魄亡せり、誰と与にか霸を図らんや」と。公堂を下りて晏子に就きて曰く、「梁丘据、裔款は室の成るを以て寡人に告ぐ、是を以て窃かに此の服を襲い、据款と笑いを為す、又た夫子をして及ばしむ、寡人請う室を改め服を易え、而して敬んで命を聴かん、其れ可ならんか」と。晏子曰く、「夫れ二子は君を営わすに邪を以てす、公安んぞ道を知るを得んや。且つ木を伐るに其の根よりせざれば、則ち蘖又た生ず。公何ぞ二子の者を去りて、耳目をして淫せしむる毋からざる」と。
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『晏子春秋』問上・景公問欲善齊國之政幹霸王晏子對以官未具景公晏子に問いて曰く、「吾善く斉国の政を治め、以て霸王の諸侯を幹さんと欲す、可なるか」と。晏子対えて曰く、「宮未だ具わらざるなり。臣数しば以て聞すれども、君肯えて聴かざるなり。臣聞く、仲尼、居処惰倦し、廉隅正しからざれば、則ち季次・原憲侍る。気鬱して疾み、志意通ぜざれば、則ち仲由・卜商侍る。徳盛んならず、行厚からざれば、則ち顔回・騫・雍侍る。今君の朝臣は万人、兵車は千乗なるに、善からざる政の下に失い民に霣墜する所の者衆し、未だ能士の敢えて以て聞する者有らず、臣故に官未だ具わらずと曰う」と。公曰く、「寡人今夫子に従いて斉国の政を善くせんと欲す、可なるか」と。対えて曰く、「嬰聞く、国に具宮有りて、然る後に其の政善くすべし」と。公色を作して説ばずして曰く、「斉国小なりと雖も、則ち何ぞ官具わらずと謂う」と。対えて曰く、「此れ臣の復する所に非ざるなり。
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『晏子春秋』諫下・景公為台成又欲為鐘晏子諫/景公為泰呂成將以燕饗晏子諫景公台を為り、台成りて、又鐘を為らんと欲す。晏子諫めて曰く、「国に君たる者は民の哀しみを楽しまず。君欲に勝えず、既に台を築けり、今復た鐘を為るは、是れ民に重斂するなり、民必ず哀しまん。夫れ民の哀しみを斂めて以て楽しみと為すは、不祥にして、国に君たる所以に非ざるなり」と。公乃ち止む。景公泰呂成り、晏子に謂いて曰く、「吾夫子と燕せんと欲す」と。対えて曰く、「未だ先君を祀らずして以て燕するは、礼に非ざるなり」と。公曰く、「何ぞ礼を以て為さん」と。対えて曰く、「夫れ礼は、民の紀なり、紀乱るれば則ち民失う、紀を乱し民を失うは、危うき道なり」と。公曰く、「善し」と。乃ち以て祀る。
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『晏子春秋』雑上・景公夜從晏子飲晏子稱不敢與景公酒を飲み、夜、晏子の家に移る。前駆門を款きて曰く、「君至る」と。晏子玄端を被て、門に立ちて曰く、「諸侯、微かに故有るを得んか。国家、微かに事有るを得んか。君何為れぞ時に非ずして夜辱くする」と。公曰く、「酒醴の味、金石の声、願わくは夫子と之を楽しまん」と。晏子対えて曰く、「夫れ薦席を布き、簠簋を陳ぶる者は人有り。臣敢えて与らず」と。公曰く、「司馬穣苴の家に移れ」と。前駆門を款きて曰く、「君至る」と。穣苴介胄して戟を操り、門に立ちて曰く、「諸侯、微かに兵有るを得んか。大臣、微かに叛く者有るを得んか。君何為れぞ時に非ずして夜辱くする」と。公曰く、「酒醴の味、金石の声、願わくは夫子と之を楽しまん」と。穣苴対えて曰く、「夫れ薦席を布き、簠簋を陳ぶる者は人有り。臣敢えて与らず」と。公曰く、「梁丘据の家に移れ」と。前駆門を款きて曰く、「君至る」と。梁丘据左に瑟を操り、右に竽を挈げ、行き歌いて出ず。公曰く、「楽しいかな、今夕の吾が飲むや。彼の二子微かりせば、何を以て吾が国を治めん。此の一臣微かりせば、何を以て吾が身を楽しましめん」と。君子曰く、「聖賢の君は、皆益友有りて、偸楽の臣無し。景公は及ぶ能わず、故に両つながら之を用い、僅かに亡びざるを得たり」と。
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