晏子春秋 / 雑下・柏常騫禳梟死將為景公請壽晏子識其妄
騫曰能,今且大祭,為君請壽,故將往,以聞。」晏子曰:「嘻!亦善矣,能為君請壽也。雖然,吾聞之,維以政與德而順乎神,為可以益壽。今徒祭,可以益壽乎?然則福兆有見乎?」對曰:「得壽地將動。」晏子曰:「騫,昔吾見維星絕,樞星散,地其動,汝以是乎?」柏常騫俯,有間,仰而對曰,「然。」晏子曰:「為之無益,不為無損也。汝薄斂,毋費民,且無令君知之。」
新字:騫曰能,今且大祭,為君請寿,故将往,以聞。」晏子曰:「嘻!亦善矣,能為君請寿也。雖然,吾聞之,維以政与徳而順乎神,為可以益寿。今徒祭,可以益寿乎?然則福兆有見乎?」対曰:「得寿地将動。」晏子曰:「騫,昔吾見維星絶,枢星散,地其動,汝以是乎?」柏常騫俯,有間,仰而対曰,「然。」晏子曰:「為之無益,不為無損也。汝薄斂,毋費民,且無令君知之。」
書き下し
騫曰く、能くす、と。今且に大祭して、君の為に寿を請わんとす。故に将に往きて、以て聞せんとす」と。晏子曰く、「嘻、亦た善し。能く君の為に寿を請う。然りと雖も、吾之を聞く、維れ政と徳とを以て神に順うは、以て寿を益す可しと為す。今徒だ祭るのみにして、以て寿を益す可けんか。然らば則ち福兆の見るもの有りや」と。対えて曰く、「寿を得れば地将に動かんとす」と。晏子曰く、「騫、昔吾維星の絶え、枢星の散ずるを見たり。地其れ動かんとす。汝は是を以てするか」と。柏常騫俯して、間有りて、仰ぎて対えて曰く、「然り」と。晏子曰く、「之を為すも益無く、為さざるも損無きなり。汝は斂を薄くし、民を費やす毋く、且つ君をして之を知らしむる無かれ」と。
現代語訳
『私はできると答えました。いま大祭をして、君のために寿命を願おうとしています。それで出かけて、お知らせしようとしているのです』」。晏子は言いました。「ああ、それも結構だ。君のために寿命を願えるのだな。しかしながら、私はこう聞いている。政と徳によって神に従うことが、寿命を延ばすことになる、と。いまただ祭るだけで、寿命を延ばせるのか。ならば、福の兆しは現れているのか」。柏常騫は「寿命を得るなら地が動くでしょう」と答えました。晏子は言いました。「柏常騫よ、以前、私は維星が絶え、枢星が散るのを見た。地が動くのはそのためだ。あなたはそれを見て言ったのか」。柏常騫はうつむき、しばらくして顔を上げ、「そうです」と答えました。晏子は言いました。「それをしても益はなく、しなくても損はない。あなたは税を軽くし、民を費やさせず、このことを君に知らせないようにしなさい」。
解説
この章句が説くこと
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説苑・辨物斉の景公、露寝の台を為(つく)る。成りて通ぜず。柏常騫曰わく、「台を為ること甚だ急にして、台成るに、君何為(なんす)れぞ通ぜざる。」公曰わく、「然り。梟昔者(さきに)鳴き、其の声為さざる無し。吾之を悪むこと甚だし、是を以て通ぜざるなり。」柏常騫曰わく、「臣請う禳(はら)いて之を去らん。」公曰わく、「何を具えん。」対えて曰わく、「新室を築き、為に白茅を置かん。」公をして室を為らしめ、成りて、白茅を置く。柏常騫夜事を用う。明日公に問いて曰わく、「今昔(こよい)梟の声を聞きしか。」公曰わく、「一たび鳴きて復た聞かず。」人をして往きて之を視しむれば、梟陛に当たりて翼を布き地に伏して死せり。公曰わく、「子の道此くの若く其れ明らかなるかな。亦た能く寡人の寿を益すか。」対えて曰わく、「能く」と。公曰わく、「能く幾何をか益さん。」対えて曰わく、「天子は九、諸侯は七、大夫は五」と。公曰わく、「亦た徴兆の見わるる有りや。」対えて曰わく、「寿を得れば、地且に動かんとす。」公喜び、百官をして騫の求むる所を趣(すみ)やかに具えしむ。柏常騫出でて晏子に塗(みち)に遭い、馬前に拝して辞して曰わく、「騫君の為に梟を禳いて之を殺し、君騫に謂いて曰わく、子の道此くの若く其れ明らかなるかな、亦た能く寡人の寿を益すかと。騫曰わく能くと。今且に大祭せんとし、君の為に寿を請う、故に将に往かんとす。以て聞かしむ。」晏子曰わく、「嘻(ああ)、亦た善いかな。能く君の為に寿を請うなり。然りと雖も、吾之を聞く、惟だ政と徳とを以て神に順うを、以て寿を益すべしと為すと。今徒に祭れば以て寿を益すべけんや。然らば則ち福の名は見わるる有りや。」対えて曰わく、「寿を得れば地将に動かんとす。」晏子曰わく、「騫よ、昔吾維星の絶え、枢星の散ずるを見たり。地其れ動かんとするか。汝是を以てするか。」柏常騫俯して間有り、仰いで対えて曰わく、「然り。」晏子曰わく、「之を為すも益無く、為さざるも損無きなり。賦斂を薄くし、民を費やす無かれ、且つ君をして之を知らしめよ。」
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『晏子春秋』問下・柏常騫問道無滅身無廢晏子對以養世君子柏常騫、周を去りて斉に之き、晏子に見えて曰く、「騫は周室の賤史なり。其の不肖を量らず、君子に事えんことを願う。敢えて問う、道を正し行いを直くすれば則ち世に容れられず、道を隠し行いを危うくすれば則ち忍びず。道も亦滅ぶこと無く、身も亦廃せらるること無き者は、何若」と。晏子対えて曰く、「善いかな。君に事うるを問うか。嬰之を聞く、一を執りて浩倨なれば、則ち取られず。進むを軽んじ苟くも合すれば、則ち信ぜられず。直易にして諱む無ければ、則ち速かに傷つく。新たに始めて利を好めば、則ち敝れざる無し。且つ嬰聞く、世を養う君子は、軽きに従いては進むと為さず、重きに従いては退くと為さず、行いを省みて伐らず、利を譲りて誇らず、物を陳べて専らにする勿く、象を見て強いる勿し。道は滅びず、身は廃せられず」と。
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『晏子春秋』雑下・柏常騫禳梟死將為景公請壽晏子識其妄景公路寝の台を為り、成りて、踴らず。柏常騫曰く、「君台を為ること甚だ急なり。台成りて、君何為れぞ踴らざる」と。公曰く、「然り。梟有り、昔者鳴く。其の声為さざる無し。吾之を悪むこと甚だし。是を以て踴らざるなり」と。柏常騫曰く、「臣請う、禳いて之を去らん」と。公曰く、「何の具ぞ」と。対えて曰く、「新室を築き、為に白茅を置け」と。公室を為らしめ、成り、白茅を置く。柏常騫夜に事を用い、明日、公に問いて曰く、「今昔梟の声を聞きしか」と。公曰く、「一たび鳴きて復た聞かず」と。人をして往きて之を視しむるに、梟は陛に当たり、翼を布き地に伏して死す。公曰く、「子の道此の若く其れ明なり。亦た能く寡人の寿を益さんか」と。対えて曰く、「能くす」と。公曰く、「能く益すこと幾何ぞ」と。対えて曰く、「天子は九、諸侯は七、大夫は五」と。公曰く、「子亦た徴兆の見るもの有りや」と。対えて曰く、「寿を得れば、地且に動かんとす」と。公喜び、百官をして騫の求むる所を趣具せしむ。柏常騫出で、晏子に塗に遭い、馬前に拝す。騫辞して曰く、「君の為に梟を禳いて之を殺せり。君騫に謂いて曰く、『子の道此の若く其れ明なり。亦た能く寡人の寿を益さんか』と。
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『晏子春秋』問上・景公問欲令祝史求福晏子對以當辭罪而無求景公晏子に問いて曰く、「寡人は意気衰え、身の病甚だし、今吾圭璧犠牲を具え、祝宗をして之を上帝宗廟に薦めしめんと欲す、意うに祀は以て福を幹むべきか」と。晏子対えて曰く、「嬰之を聞く、古者先君の福を幹むるや、政は必ず民に合し、行は必ず神に順い、宮室を節し、敢えて大いに斬伐して以て山林に逼ること無く、飲食を節し、多く畋漁して以て川沢に逼ること無し。祝宗事を用い、罪を辞して敢えて求むる所有らず。是を以て神民具に順い、山川禄を納む。今君の政は民に反し、行は神に悖り、宮室を大にし、多く斬伐して以て山林に逼り、飲食を羨にし、多く畋漁して以て川沢に逼る、是を以て神民俱に怨み、山川禄を収め、司過罪を薦め、而るに祝宗福を祈る、意うに逆ならんか」と。公曰く、「寡人夫子に非ざれば、此れを聞く所無し、請う心を革め行を易えん」と。是に於いて公阜の遊を廃し、海食の献を止む。斬伐する者は時を以てし、畋漁する者は数有り。居処飲食、之を節して羨なる勿し。祝宗事を用い、罪を辞して敢えて求むる所有らず。故に鄰国之を忌み、百姓之に親しみ、晏子没して後に衰う。
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『晏子春秋』外篇上・景公使祝史禳彗星晏子諫斉に彗孛有り。景公祝をして之を禳わしむ。晏子諫めて曰く、「益無きなり。祇だ誣を取るのみ。天道は謟わず、其の命を貳にせず。之を禳うこと若何せん。且つ天の彗有るは、以て穢を除くなり。君に穢徳無くんば、又何ぞ禳わん。若し徳の穢れたらば、之を禳うも何の損ぜん。詩に云う、『維れ此の文王、小心翼翼たり。昭らかに上帝に事え、聿に多福を懐う。厥の徳回ならず、以て方国を受く』と。君に違徳無くんば、方国将に至らんとす。何ぞ彗を患えん。詩に曰く、『我に監みる所無し、夏後及び商。乱を用うるの故に、民卒に流亡す』と。若し徳回乱せば、民将に流亡せんとす。祝史の為すこと、補うこと能う無きなり」と。公説び、乃ち止む。
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『晏子春秋』外篇上・太卜紿景公能動地晏子知其妄使卜自曉公景公太卜に問うて曰く、「汝の道は何をか能くする」と。対えて曰く、「臣は能く地を動かす」と。公晏子を召して之に告げて曰く、「寡人太卜に問う、『汝の道は何をか能くする』と。対えて曰く、『能く地を動かす』と。地は動かす可きか」と。晏子默然として対えず、出でて、太卜に見えて曰く、「昔吾鉤星の四心の間に在るを見たり。地其れ動かんか」と。太卜曰く、「然り」と。晏子曰く、「吾之を言わば、子の死なんことを恐る。默然として対えざれば、君の惶れんことを恐る。子言わば、君臣俱に得ん。君に忠なる者は、豈に必ずしも人を傷つけんや」と。晏子出で、太史走り入りて公に見えて曰く、「臣は能く地を動かすに非ず。地は固より将に動かんとするなり」と。陳子陽之を聞きて曰く、「晏子の默して対えざるは、太卜の死するを欲せざればなり。往きて太卜に見ゆるは、君の惶れんことを恐ればなり。晏子は仁人なり、上に忠にして下に恵むと謂う可し」と。
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