晏子春秋 / 問下・魯昭公問安國眾民晏子對以事大養小謹聽節斂/晏子使晉晉平公問先君得眾若何晏子對以如美淵澤
晏子聘于魯。魯昭公問曰:「子大夫儼然辱臨敝邑,竊甚嘉之,寡人受貺,請問安國眾民如何?」晏子對曰:「嬰問傲大賤小則國危,慢聽厚斂則民散。事大養小,安國之器也;謹聽節斂,眾民之術也。」晏子使晉,晉平公饗之文室,既靜矣,以宴,平公問焉,曰:「昔吾子先君得眾若何?」晏子對曰:「君饗寡君,施及使臣,禦在君側,恐懼不知所以對。」平公曰,「聞子大夫數矣,今乃得見,願終聞之。」晏子對曰:「臣聞君子如美淵澤,容之,眾人歸之,如魚有依,極其游泳之樂。若淵澤決竭,其魚動流,夫往者維雨乎,不可復已。」公又問曰:「請問莊公與今君孰賢?」晏子曰:「兩君之行不同,臣不敢知也。」公曰:「王室之不正也,諸侯之專制也,是以欲聞子大夫之言也。」對曰:「先君莊公,不安靜處,樂節飲食,不好鐘鼓,好兵作武,與士同饑渴寒暑。君之強,過人之量。有一過不能已焉,是以不免於難。今君大宮室,美台榭,以辟饑渴寒暑,畏禍,敬鬼神,君之善足以沒身,不足以及子孫矣。」
新字:晏子聘于魯。魯昭公問曰:「子大夫儼然辱臨敝邑,窃甚嘉之,寡人受貺,請問安国衆民如何?」晏子対曰:「嬰問傲大賤小則国危,慢聴厚斂則民散。事大養小,安国之器也;謹聴節斂,衆民之術也。」晏子使晋,晋平公饗之文室,既静矣,以宴,平公問焉,曰:「昔吾子先君得衆若何?」晏子対曰:「君饗寡君,施及使臣,禦在君側,恐懼不知所以対。」平公曰,「聞子大夫数矣,今乃得見,願終聞之。」晏子対曰:「臣聞君子如美淵沢,容之,衆人帰之,如魚有依,極其游泳之楽。若淵沢決竭,其魚動流,夫往者維雨乎,不可復已。」公又問曰:「請問荘公与今君孰賢?」晏子曰:「両君之行不同,臣不敢知也。」公曰:「王室之不正也,諸侯之専制也,是以欲聞子大夫之言也。」対曰:「先君荘公,不安静処,楽節飲食,不好鐘鼓,好兵作武,与士同饑渇寒暑。君之強,過人之量。有一過不能已焉,是以不免於難。今君大宮室,美台榭,以辟饑渇寒暑,畏禍,敬鬼神,君之善足以没身,不足以及子孫矣。」
書き下し
晏子、魯に聘す。魯の昭公問いて曰く、「子大夫、儼然として辱くも敝邑に臨む。竊かに甚だ之を嘉す。寡人貺を受く。請う、国を安んじ民を衆くするは如何と問わん」と。晏子対えて曰く、「嬰聞く、大を傲り小を賤しめば則ち国危うし。聴くに慢にして斂を厚くすれば則ち民散ず、と。大に事え小を養うは、国を安んずるの器なり。聴くを謹み斂を節するは、民を衆くするの術なり」と。晏子、晋に使いす。晋の平公、之を文室に饗し、既に静かにして、以て宴す。平公焉に問いて曰く、「昔、吾が子の先君、衆を得ること若何」と。晏子対えて曰く、「君、寡君を饗し、施し使臣に及ぶ。禦して君の側に在り、恐懼して対うる所以を知らず」と。平公曰く、「子大夫を聞くこと数なり。今乃ち見ゆるを得たり。願わくは終に之を聞かん」と。晏子対えて曰く、「臣聞く、君子は美しき淵沢の如く、之を容るれば、衆人之に帰す。魚の依る有るが如く、其の游泳の楽しみを極む。若し淵沢決け竭くれば、其の魚は流れに動く。夫れ往く者は維れ雨か、復た已む可からず」と。公又問いて曰く、「請う、荘公と今の君と孰れか賢なる」と。晏子曰く、「両君の行いは同じからず。臣、敢えて知らず」と。公曰く、「王室の正しからず、諸侯の専制なる。是を以て子大夫の言を聞かんと欲す」と。対えて曰く、「先君荘公は、安静に処らず、飲食を楽節し、鐘鼓を好まず、兵を好み武を作し、士と饑渇寒暑を同じくす。君の強きこと、人の量に過ぐ。一過有りて已む能わず。是を以て難を免れず。今の君は宮室を大にし、台榭を美にし、以て饑渇寒暑を辟く。禍を畏れ、鬼神を敬す。君の善は以て身を没するに足るも、子孫に及ぶには足らず」と。
現代語訳
晏子が魯を訪れました。魯の昭公は尋ねました。「あなたは威儀を正してわが国にお越しくださり、ひそかにとてもありがたく思っている。私は厚意を受けた。国を安んじ、民を増やすにはどうすればよいか、お尋ねしたい」。晏子は答えました。「私はこう聞いております。大国に傲り小国を見下せば国は危うくなり、訴えを聞くのに怠慢で租税を重くすれば民は離れます。大に仕え小を養うことは、国を安んじる道具であり、訴えを謹んで聞き、取り立てを抑えることは、民を増やす方法です」。晏子が晋に使いしたとき、晋の平公は文室で饗応し、静まってから宴を開きました。平公は尋ねました。「昔のあなたの先君は、どのように人々の心を得ていたのか」。晏子は答えました。「君がわが君を饗応され、その恩が使臣の私にまで及びました。おそばに控え、恐れ入ってどうお答えしてよいかわかりません」。平公は言いました。「あなたの噂はたびたび聞いていた。今ようやくお会いできた。どうか最後まで聞かせてほしい」。晏子は答えました。「私はこう聞いております。君子は美しい淵や沢のようなもので、これを受け入れれば人々が帰してきます。魚に拠り所があるように、泳ぐ楽しみを尽くします。もし淵や沢が決壊して干上がれば、魚は流れに動いてしまいます。去っていく者は雨のようなもので、二度ととどめることはできません」。公はさらに尋ねました。「荘公と今の君とでは、どちらが賢いのか」。晏子は言いました。「二人の君の行いは同じではありません。私にはわかりません」。公は言いました。「王室は正しさを失い、諸侯は勝手にふるまっている。だからこそあなたのお考えを聞きたいのだ」。晏子は答えました。「先君の荘公は、静かに過ごせず、飲食を楽しみながら控え、鐘や太鼓を好まず、兵を好み武を興し、士と飢え渇き寒さ暑さを共にしました。君の強さは人並みを超えていました。ただ一つの過ちがあり、それをやめられなかったので、難を免れませんでした。今の君は宮室を大きくし、台や楼閣を美しくして、飢え渇き寒さ暑さを避けています。禍を畏れ、鬼神を敬っています。君の善は一身を全うするには足りても、子孫にまで及ぶには足りません」。
解説
この章句が説くこと
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『晏子春秋』外篇上・景公坐路寢曰誰將有此晏子諫景公路寝に坐して、曰く、「美なるかな室、其れ誰か将に此を有たんとするか」と。晏子対えて曰く、「其れ田氏か。田無宇は垾を為せり」と。公曰く、「然らば則ち奈何」と。晏子対えて曰く、「善を為す者は、君上の勧むる所なり。豈に禁ず可けんや。夫れ田氏は、国門に柝を撃つの家にして、父は以て其の子に托し、兄は以て其の弟に托し、今に於て三世なり。山の木は市の如くにして、山に加えず。魚塩蚌蜃は、海に加えず。民財之が為に帰す。今歳凶饑にして、蒿種芼斂は半ばならず、道路に死人有り。斉の旧四量は、四升を豆と為し、豆四にして区、区四にして釜、釜十にして鐘なり。田氏の四量は、各々一を加う。家の量を以て貸し、公の量を以て収む。則ち糴する所以、百姓の死命を澤うこと多し。今公家は驕汰にして、田氏は慈恵なり。国の澤は是に焉くにか帰せん。田氏は徳無しと雖も、民に施す有り。公厚く斂め、田氏は厚く施す。詩に曰く、『汝に与うる徳無しと雖も、式て歌い且つ舞う』と。田氏の施しは、民之を歌舞するなり。国の帰するも、亦た宜ならずや」と。
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史記 高祖本紀且つ吾の軍を霸上に還す所以は、諸侯の至るを待ちて約束を定めんのみ。」と。乃ち人をして秦の吏と県郷邑を行かしめ、之に告諭す。秦人大いに喜び、争ひて牛羊酒食を持ちて軍士に献饗す。沛公又譲りて受けず、曰く、「倉粟多し、乏しきに非ず、人に費さしむるを欲せず。」と。人又益々喜び、唯だ沛公の秦王と為らざらんことを恐る。
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言志四録・言志録 第百八十一条 勢に因りて利導す人情の気機は、一定を以て求むべからず。之を誘へば勧み、之を禁ずれば遏む、順なり。之を導けば反つて阻み、之を抑ふれば益揚る、逆なり。是の故に駕馭の道は、当に其の向背を察し、其の軽重を審らかにし、勢に因りて之を利導し、機に応じて之を激励し、其をして自ら其の然る所以を覚えざらしむべし。此れを之れ得たりと為す。
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『呻吟語』内篇・應務・一の拙法有り世人の相與するは、面上に非ざれば則ち口中なり。人の心は固より面と口とに掩ふ能はず。而して測る可からざる者は則ち面と口とに盡きざるなり。故に惟だ人心のみ最も畏る可く、人心最も知る可からず。此れ天下の陷阱にして、古今生死の衢なり。余に一の拙法有り。之を推すに至誠を以てし、之を施すに至厚を以てし、之を持するに至慎を以てし、是非を遠ざけ、利名を讓り、後下に處せば、則ち夷狄鳥獸も骨肉腹心とす可し。將に深き者をして且つ心を傾けしめ、險なる者をして且つ德に化せしめんとす。而して何ぞ陷阱の予に及ばんや。
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『弁道』第二十四則「之を継ぐ者は善」とは、天を継ぐの継の如し。善とは善人を謂ふなり。流行と訓ずる者は継の字の義を失へり。「之を成す者は性」とは、人各〻性の近き所に随ひて務めを成すを謂ふなり。凡そ徳と言ふ者、怨に対して言ふ者有り、財に対して言ふ者有り。其の単に言ふ者は、皆性の徳なり。爾らずんば、「徳に拠る」、何ぞ其れ荒唐なるや。人心とは民心なり。朽索の馭の如し。故に危ふしと曰ふ。道心とは民心を導くなり。其の機甚だ微なり。故に微なりと曰ふ。
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『洗心洞箚記』卷下・第七十九條或ひと梁恵王曰く寡人の国に於けるやの章の義を問ふ。曰く、恵王の尽心と、後章の其の心を尽くす者は其の性を知るなりの尽心とは、字同じくして旨異なり。如し先づ之を弁ぜずして、一章の義を解すれば、則ち無数の言語を費して、天理人欲、終に分暁なること能はざるなり。夫れ恵王の尽心は、即ち人心を尽くす者なり。人心は、便ち是れ人欲にして不仁なり。恵王の戦を好むの心は、乃ち人欲の中尤も不仁なる者なり。人欲の中尤も不仁なるの心を尽くして、飢民を転遷し以て其の多少を計較す。要するに一身を肥やして独楽を極めんと欲する者なり。盗賊の心と奚を以て異ならんや。是の故に終に其の民を糜爛し子弟を駆りて以て之に殉ぜしむ。是れ皆自ら人心を尽くす上より来る。然らば則ち人心を尽くすは、断絶せざるべからざるなり。
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