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養生訓 / 巻第八・灸治

一今の世に、天樞脾兪など、一時に多く灸すれば、氣升りて痛忍へがたきとて、一日に一二壯每日灸して、百壯にいたる人あり。又三里を每日一壯づつ百日つゞけて灸する人あり。是亦時氣をふせぎ、風を退け、上氣を下し、衂をとめ、眼を明らかにし、胃氣をひらき食をすゝむ。尤益ありと云ふ。醫書においていまだ此說を見ず。されど試みて其効を得たる人多しと云ふ。

新字:一今の世に、天枢脾兪など、一時に多く灸すれば、気升りて痛忍へがたきとて、一日に一二壮毎日灸して、百壮にいたる人あり。又三里を毎日一壮づつ百日つゞけて灸する人あり。是亦時気をふせぎ、風を退け、上気を下し、衂をとめ、眼を明らかにし、胃気をひらき食をすゝむ。尤益ありと云ふ。医書においていまだ此説を見ず。されど試みて其効を得たる人多しと云ふ。

書き下し

一今の世に、天枢脾兪など、一時に多く灸すれば、気升りて痛忍へがたきとて、一日に一二壮毎日灸して、百壮にいたる人あり。又三里を毎日一壮づつ百日つづけて灸する人あり。是亦時気をふせぎ、風を退け、上気を下し、衂をとめ、眼を明らかにし、胃気をひらき食をすすむ。尤益ありと云ふ。医書においていまだ此説を見ず。されど試みて其効を得たる人多しと云ふ。

現代語訳

今の世に、天枢や脾兪などに一度に多く灸をすると、気がのぼって痛みを忍びがたいので、一日に一、二壮ずつ毎日灸をして、百壮に至る人がいます。また三里に毎日一壮ずつ百日続けて灸をする人もいます。これもまた時の流行の気を防ぎ、風邪を退け、のぼせを下げ、鼻血を止め、目を明らかにし、胃の気を開いて食欲を進めます。たいへん益があるといいます。医書にはまだこの説を見ません。けれども試してその効き目を得た人が多いといいます。

解説

一度に多くすえず、毎日少しずつ続けて百壮に至るという灸のすえ方を紹介した条です。三里に百日続けて灸をすれば、流行病を防ぎ、のぼせを下げ、食欲を進めるなどの効き目があると伝え聞いたことを記しています。医書にはない説だが、試して効いた人が多いと、出典の有無と経験上の評判をきちんと分けて書いているのが益軒らしいところです。一度に無理をせず毎日少しずつ続けるという方法は、運動や学びなど、あらゆる習慣づくりに通じる知恵といえます。

この章句が説くこと

灸継続習慣経験三里

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