養生訓 / 巻第七・用薬
藥力其の病によく應ずとも、かくのごとく小服にては、藥に力なくて效あるべからず。砒毒といへども、人服する事一匁許に至りて死す、と古人いへり。一匁より少くしては、砒霜をのんでも死なず、河豚も、多く食はざれば死なず。强き大毒すら、かくの如し。况や力よわき小服の藥、いかでか大病にかつべきや。此の理を能く思ひて、小服の藥效なき事を知るべし。今時の醫の用ふる藥方、其の病に應ずるも多かるべし。しかれども、早く效を得ずして癒えがたきは、小服にて藥力たらざる故に非ずや。
新字:薬力其の病によく応ずとも、かくのごとく小服にては、薬に力なくて効あるべからず。砒毒といへども、人服する事一匁許に至りて死す、と古人いへり。一匁より少くしては、砒霜をのんでも死なず、河豚も、多く食はざれば死なず。強き大毒すら、かくの如し。況や力よわき小服の薬、いかでか大病にかつべきや。此の理を能く思ひて、小服の薬効なき事を知るべし。今時の医の用ふる薬方、其の病に応ずるも多かるべし。しかれども、早く効を得ずして癒えがたきは、小服にて薬力たらざる故に非ずや。
書き下し
薬力其の病によく応ずとも、かくのごとく小服にては、薬に力なくて効あるべからず。砒毒といへども、人服する事一匁許に至りて死す、と古人いへり。一匁より少くしては、砒霜をのんでも死なず、河豚も、多く食はざれば死なず。強き大毒すら、かくの如し。況や力よわき小服の薬、いかでか大病にかつべきや。此の理を能く思ひて、小服の薬効なき事を知るべし。今時の医の用ふる薬方、其の病に応ずるも多かるべし。しかれども、早く効を得ずして癒えがたきは、小服にて薬力たらざる故に非ずや。
現代語訳
薬の力がその病によく応じたとしても、このように小さな分量では、薬に力がなくて効き目はないでしょう。砒霜の毒でも、人が一匁ほど飲むと死ぬと古人は言いました。一匁より少なければ砒霜を飲んでも死なず、河豚も多く食べなければ死にません。強い大毒でさえこのとおりです。まして力の弱い小さな分量の薬が、どうして大病に勝てるでしょうか。この理をよく思って、小さな分量の薬には効き目がないことを知るべきです。今の医者の用いる処方は、その病に応じるものも多いでしょう。けれども、早く効き目が得られずに治りにくいのは、小さな分量で薬の力が足りないためではないでしょうか。
解説
この章句が説くこと
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『都鄙問答』卷之二・或學者、商人ノ學問ヲ譏ノ段曰く、汝は理を直ちに命と云ふ、是大いに誤れり。理は玉の理なり。又総て物の理なれば、通るまでのことにて死物なり。命は、書経にも、惟れ命は常に于てせずと云へり。天の降せる命なれば、活物の性なり。斯くのごとく別なり。然るを、死活を以て一致とするは如何なることぞ。
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