養生訓 / 巻第六・択医
一本草の内、古人の說まちまちにして一やうならず、異同多し。其内にて考へ合せ、擇び用ふべし。又藥物も食品も、人の性により病症によりて、宜不宜あり。一槩に好否を定めがたし。一醫術も、亦其道多端なりといへど、其要三あり。一には病論、二には脈法、三には藥法此三の事をよく知るべし。運氣經絡なども知るべしといへども、三要の次なり。病論は內經を本とし、諸名醫の說を考ふべし。脈法は脈書數家を考ふべし。藥方は本草を本として、ひろく諸方書を見るべし。藥性にくはしからずんば、藥方を立てがたくして、病に應ずべからず。又食物の良否を知らずんば、無病有病共に保養にあやまり有るべし。藥性、食性、皆本草に精しからずんば知りがたし。
新字:一本草の内、古人の説まちまちにして一やうならず、異同多し。其内にて考へ合せ、択び用ふべし。又薬物も食品も、人の性により病症によりて、宜不宜あり。一槩に好否を定めがたし。一医術も、亦其道多端なりといへど、其要三あり。一には病論、二には脈法、三には薬法此三の事をよく知るべし。運気経絡なども知るべしといへども、三要の次なり。病論は内経を本とし、諸名医の説を考ふべし。脈法は脈書数家を考ふべし。薬方は本草を本として、ひろく諸方書を見るべし。薬性にくはしからずんば、薬方を立てがたくして、病に応ずべからず。又食物の良否を知らずんば、無病有病共に保養にあやまり有るべし。薬性、食性、皆本草に精しからずんば知りがたし。
書き下し
一本草の内、古人の説まちまちにして一やうならず、異同多し。其内にて考へ合せ、択び用ふべし。又薬物も食品も、人の性により病症によりて、宜不宜あり。一槩に好否を定めがたし。一医術も、亦其道多端なりといへど、其要三あり。一には病論、二には脈法、三には薬法此三の事をよく知るべし。運気経絡なども知るべしといへども、三要の次なり。病論は内経を本とし、諸名医の説を考ふべし。脈法は脈書数家を考ふべし。薬方は本草を本として、ひろく諸方書を見るべし。薬性にくはしからずんば、薬方を立てがたくして、病に応ずべからず。又食物の良否を知らずんば、無病有病共に保養にあやまり有るべし。薬性、食性、皆本草に精しからずんば知りがたし。
現代語訳
本草のうちでも、古人の説はまちまちで一様でなく、異同が多いものです。その中で考え合わせて、選んで用いるべきです。また薬も食品も、人の性質や病状によって、合うものと合わないものがあります。一概に良し悪しを定めることはできません。医術もまたその道は多方面にわたりますが、その要は三つあります。一つには病論、二つには脈法、三つには薬法です。この三つのことをよく知るべきです。運気や経絡なども知るべきですが、三つの要の次です。病論は『内経』を本とし、多くの名医の説を考えるべきです。脈法は数家の脈書を考えるべきです。処方は『本草』を本として、広く多くの医書を見るべきです。薬の性質に詳しくなければ、処方を立てにくく、病に応じることができません。また食物の良し悪しを知らなければ、病のない時もある時も保養に誤りがあるでしょう。薬の性質も食物の性質も、みな本草に精しくなければ知りがたいものです。
解説
この章句が説くこと
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