養生訓 / 巻第六・択医
一醫を學ぶに、ふるき法をたづねて、ひろく學び、古方を多く考ふべし。又今世の時運を考へ、人の强弱をはかり、日本の土宜と民俗の風氣を知り、近古我が國先輩の名醫の治せし迹をも考へて、治療を行ふべし。いにしへに本づき、今に宜しくば、あやまり少かるべし。古法をしらずして、今の宜に合せんとするを鑿と云ふ。古法にかゝはりて、今の宜に合はざるを泥と云ふ。其あやまり同じ。古にくらく、今に通ぜずしては行はるべからず。聖人も、溫故知新、以て師とすべし、とのたまへり。醫師も亦かくの如くなるべし。
新字:一医を学ぶに、ふるき法をたづねて、ひろく学び、古方を多く考ふべし。又今世の時運を考へ、人の強弱をはかり、日本の土宜と民俗の風気を知り、近古我が国先輩の名医の治せし迹をも考へて、治療を行ふべし。いにしへに本づき、今に宜しくば、あやまり少かるべし。古法をしらずして、今の宜に合せんとするを鑿と云ふ。古法にかゝはりて、今の宜に合はざるを泥と云ふ。其あやまり同じ。古にくらく、今に通ぜずしては行はるべからず。聖人も、温故知新、以て師とすべし、とのたまへり。医師も亦かくの如くなるべし。
書き下し
一医を学ぶに、ふるき法をたづねて、ひろく学び、古方を多く考ふべし。又今世の時運を考へ、人の強弱をはかり、日本の土宜と民俗の風気を知り、近古我が国先輩の名医の治せし迹をも考へて、治療を行ふべし。いにしへに本づき、今に宜しくば、あやまり少かるべし。古法をしらずして、今の宜に合せんとするを鑿と云ふ。古法にかかはりて、今の宜に合はざるを泥と云ふ。其あやまり同じ。古にくらく、今に通ぜずしては行はるべからず。聖人も、温故知新、以て師とすべし、とのたまへり。医師も亦かくの如くなるべし。
現代語訳
医を学ぶには、古い法をたずねて広く学び、古い処方を多く考えるべきです。また今の世の時の移り変わりを考え、人の強弱をはかり、日本の土地柄と民の風俗や気風を知り、近ごろのわが国の先輩の名医が治療した跡をも考えて、治療を行うべきです。古に基づき、今に適していれば、誤りは少ないでしょう。古い法を知らずに今の都合に合わせようとするのを鑿(うがちすぎ)といいます。古い法にこだわって今の都合に合わないのを泥(なずむ)といいます。その誤りは同じです。古に暗く、今に通じていなければ、行うことはできません。聖人も「古いことをたずねて新しいことを知れば、師となることができる」とおっしゃいました。医師もまたこのようであるべきです。
解説
この章句が説くこと
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