導師導古典を学びたいすべての人に

養生訓 / 巻第六・択医

一醫は仁心を以て行ふべし、名利を求むべからず。病おもくして、藥にて救ひがたしといへども、病家より藥を求むる事切ならば、多く藥をあたへて、其心をなぐさむべし。我がよく病を見附けて、生死を知る名を得んとて、病人に藥をあたへずして、捨てごろすは情なし。醫の藥をあたへざれば、病人いよいよ力をおとす理なり。あはれむべし。

新字:一医は仁心を以て行ふべし、名利を求むべからず。病おもくして、薬にて救ひがたしといへども、病家より薬を求むる事切ならば、多く薬をあたへて、其心をなぐさむべし。我がよく病を見附けて、生死を知る名を得んとて、病人に薬をあたへずして、捨てごろすは情なし。医の薬をあたへざれば、病人いよいよ力をおとす理なり。あはれむべし。

書き下し

一医は仁心を以て行ふべし、名利を求むべからず。病おもくして、薬にて救ひがたしといへども、病家より薬を求むる事切ならば、多く薬をあたへて、其心をなぐさむべし。我がよく病を見附けて、生死を知る名を得んとて、病人に薬をあたへずして、捨てごろすは情なし。医の薬をあたへざれば、病人いよいよ力をおとす理なり。あはれむべし。

現代語訳

医は仁の心で行うべきで、名誉や利益を求めてはいけません。病が重くて薬では救いがたくても、病家から薬を求めることが切実であれば、多く薬を与えてその心を慰めるべきです。自分がよく病を見抜いて、生死を見通すという名を得ようとして、病人に薬を与えずに見捨てて死なせるのは、思いやりがありません。医者が薬を与えなければ、病人がいよいよ力を落とすのは道理です。あわれむべきことです。

解説

助かる見込みのない病人への医者の態度を説いた条です。薬で救えないとわかっていても、病人や家族が切に求めるなら薬を与えて心を慰めよと述べ、見立ての確かさを誇るために病人を見捨てるのは情がないと戒めています。治療の効果だけでなく、病人の心の支えも医の務めだという考えは、今の緩和ケアの精神にも通じるものです。専門家としての正しさより、相手の心に寄り添う仁の心を優先せよという教えは、人を支えるあらゆる仕事に通じます。

この章句が説くこと

仁医者看取り思いやり心

関連する章句

古典の入門書『人生の教科書』の表紙

人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。

古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。

本の中身を見る
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)+師導1か月=700円 本を見る