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養生訓 / 巻第六・択医

一歌をよむに、ひろく歌書をよんで歌學ありても、歌の下手はあるものなり。歌學なくして上手は有るまじきなりと、心敬法師いへり。醫術も亦かくの如し。醫書を多くよんでも、拙き醫はあり。それは醫道に心を用ひずして、くはしからざればなり。醫書をよまずして上手は有るまじきなり。唐やまとに、博學多識にして道知らぬ博士は多し、博く學ばずして道しれる人はなきが如し。

新字:一歌をよむに、ひろく歌書をよんで歌学ありても、歌の下手はあるものなり。歌学なくして上手は有るまじきなりと、心敬法師いへり。医術も亦かくの如し。医書を多くよんでも、拙き医はあり。それは医道に心を用ひずして、くはしからざればなり。医書をよまずして上手は有るまじきなり。唐やまとに、博学多識にして道知らぬ博士は多し、博く学ばずして道しれる人はなきが如し。

書き下し

一歌をよむに、ひろく歌書をよんで歌学ありても、歌の下手はあるものなり。歌学なくして上手は有るまじきなりと、心敬法師いへり。医術も亦かくの如し。医書を多くよんでも、拙き医はあり。それは医道に心を用ひずして、くはしからざればなり。医書をよまずして上手は有るまじきなり。唐やまとに、博学多識にして道知らぬ博士は多し、博く学ばずして道しれる人はなきが如し。

現代語訳

歌を詠むのに、広く歌書を読んで歌学があっても、下手な者はいるものです。歌学がなくて上手な者はいないだろうと、心敬法師は言いました。医術もまたこれと同じです。医書を多く読んでも、拙い医者はいます。それは医道に心を用いず、詳しくないからです。医書を読まずに上手な者はいないでしょう。中国にも日本にも、博学多識で道を知らない学者は多くいますが、広く学ばずに道を知る人はいないのと同じです。

解説

室町時代の連歌師心敬の言葉を引き、学問と上達の関係を説いた条です。歌学があっても下手な人はいるが、歌学なしで上手な人はいないという言葉を医術に当てはめ、書物を読んでも拙い医者はいるが、読まずに名医になった者はいないと述べています。学問は上達の必要条件であって十分条件ではないという整理は明快です。知識を持つだけでは足りず、それを生かす心の工夫が要る一方、知識なしに道を究めることはできないという教えは、どの分野にも通じます。

この章句が説くこと

学問読書上達医学和歌

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