養生訓 / 巻第六・択医
一日本の醫中華に及ばざるは、まづ學問のつとめ、中華の人に及ばざればなり。殊に近世は、國字の方書、多く世に刊行せり。古學を好まざる醫生は、からの書はむづかしければ、きらひて讀まず。假名書の書をよんで、醫の道是にて事足りぬと思ひ、古の道をまなばず。是日本の醫の、醫道にくらくして拙きゆゑなり。むかし伊呂波の國字いできて、世俗すべて文盲になれるが如し。
新字:一日本の医中華に及ばざるは、まづ学問のつとめ、中華の人に及ばざればなり。殊に近世は、国字の方書、多く世に刊行せり。古学を好まざる医生は、からの書はむづかしければ、きらひて読まず。仮名書の書をよんで、医の道是にて事足りぬと思ひ、古の道をまなばず。是日本の医の、医道にくらくして拙きゆゑなり。むかし伊呂波の国字いできて、世俗すべて文盲になれるが如し。
書き下し
一日本の医中華に及ばざるは、まづ学問のつとめ、中華の人に及ばざればなり。殊に近世は、国字の方書、多く世に刊行せり。古学を好まざる医生は、からの書はむづかしければ、きらひて読まず。仮名書の書をよんで、医の道是にて事足りぬと思ひ、古の道をまなばず。是日本の医の、医道にくらくして拙きゆゑなり。むかし伊呂波の国字いできて、世俗すべて文盲になれるが如し。
現代語訳
日本の医者が中国に及ばないのは、まず学問の努力が中国の人に及ばないからです。とくに近年は、仮名書きの医書が多く世に刊行されています。古い学問を好まない医学生は、中国の書物はむずかしいので嫌って読みません。仮名書きの書物を読んで、医の道はこれで足りると思い、古の道を学びません。これが日本の医者が医道に暗くて拙い理由です。昔、いろはの仮名ができて、世の人がみな文字を知らなくなったのと同じです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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言志四録・言志録 第百九十九条 心の智愚は学びて変ずべし人の受くる所の気、其の厚薄の分数は、大抵相若く。躯の大小、寿の脩短、力の強弱、心の智愚の如き、大いに相遠き者無し。其の間一処の受くること厚き者有れば、皆之を非常と謂ふ。非常は則ち姑く之を置く。常人の如きに就きては、躯と寿と力との分数は、之を奈何ともすべからず。独り心の智愚に至りては、学びて之を変化すべし。故に博く学び、審かに問ひ、慎みて思ひ、明らかに弁じ、篤く行ふ。人一たび十たびすれば、己は之を百たび千たびす。果たして此の道を能くせば、愚なりと雖も必ず明らかに、柔なりと雖も必ず強からん。以て漸く非常の域に進むべし。蓋し此の理有り。但だ常人は多く遊惰にして然ること能はず。豈に亦天に算籌有るか。
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『大和俗訓』巻之一・為学上一文学をつとむるも、亦同じ。日々につとめてやまざれば、文学日々にすすむ。数年の後は、経伝の義理に通じて、楽となる。十年の功は、甚大なり、文学半ば成就す。一万の事、はじめに苦労せずして怠れば、後に功ならずして、楽なし。たとへばあつき灸をこらへ、苦き薬をのめば、後に無病の人となるが如し。学問において、尤此しるしあり。わかき時辛労する人は、老いて後楽多し。
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うひ山ぶみ・第十二段詮ずるところ学問は、ただ年月長く倦ずおこたらずして、はげみつとむるぞ肝要にて、学びやうは、いかやうにてもよかるべく、さのみかゝはるまじきこと也、
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『慎思録』巻之六古来本邦の文学の士、往往詩文を作為することを喜ぶ。其の工夫甚だ苦し。然れども其の文字多しと雖も、中華の作に似ず、作文の法度無き者多し。惜しむべし、箇の無益の閑労擾を做し、枉げて心力を費やすことを。若し果たして道を求むるの志有らば、断じて此に到らじ。
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『酔古堂剣掃』集醒・今生冥頑なれば來世を卜すべし少年にして霝慧なるは、夙根を抱くを知る。 今生冥頑なれば、來世を卜すべし。
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『養生訓』巻第六・択医一士庶人の子弟、いとけなき者、医となるべき才あらば、早く儒書をよみ、其力を以て、医書に通じ、明師にしたがひ、十年の功を用ひて、内経、本草以下、歴代の明医の書をよみ学問し、やうやく医道に通じ、又十年の功を用ひて、病者に対して、病症を久しく歴見して習熟し、近代の日本の先輩の名医の療術をも考へ知り、病人に久しくなれて、時変を知り、日本の風土にかなひ、其術ますます精くなり、医学と病功と、前後凡二十年の久しきをつみなば、必ず良医となり、病を治する事験ありて、人をすくふ事多からん。然らば、おのづから名もたかくなりて、高家大人の招請あり。士庶人の敬信もあつくば、財禄を得る事多くして、一生の受用ゆたかなるべし。
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