養生訓 / 巻第五・五官
一熱湯にて口をすゝぐべからず、齒を損ず。一千金方曰、食し終るごとに、手を以て面をすり、腹をなで、津液を通流すべし。行步する事數百步すべし。飮食して卽ち臥せば百病生ず。飮食して仰きに臥せば氣痞となる。一醫說曰、食して後、體倦むとも、卽ち寢ぬる事なかれ。身を運動し、二三百歩しづかに步行して後、帶をとき、衣をくつろげ、腰をのべて端坐し、兩手にて心腹を按摩して、縱橫に往來する事二十遍、又兩手を以て、脇腰の間より、おさへ摩でて下る事數十遍ばかりにして、心腹の氣ふさがらしめず、食滯手に隨つて消化す。
新字:一熱湯にて口をすゝぐべからず、歯を損ず。一千金方曰、食し終るごとに、手を以て面をすり、腹をなで、津液を通流すべし。行歩する事数百歩すべし。飲食して即ち臥せば百病生ず。飲食して仰きに臥せば気痞となる。一医説曰、食して後、体倦むとも、即ち寝ぬる事なかれ。身を運動し、二三百歩しづかに歩行して後、帯をとき、衣をくつろげ、腰をのべて端坐し、両手にて心腹を按摩して、縦横に往来する事二十遍、又両手を以て、脇腰の間より、おさへ摩でて下る事数十遍ばかりにして、心腹の気ふさがらしめず、食滞手に随つて消化す。
書き下し
一熱湯にて口をすすぐべからず、歯を損ず。一千金方曰、食し終るごとに、手を以て面をすり、腹をなで、津液を通流すべし。行歩する事数百歩すべし。飲食して即ち臥せば百病生ず。飲食して仰きに臥せば気痞となる。一医説曰、食して後、体倦むとも、即ち寝ぬる事なかれ。身を運動し、二三百歩しづかに歩行して後、帯をとき、衣をくつろげ、腰をのべて端坐し、両手にて心腹を按摩して、縦横に往来する事二十遍、又両手を以て、脇腰の間より、おさへ摩でて下る事数十遍ばかりにして、心腹の気ふさがらしめず、食滞手に随つて消化す。
現代語訳
熱い湯で口をすすいではいけません、歯をそこないます。『千金方』に、「食べ終わるたびに、手で顔をこすり、腹を撫でて、津液(体のうるおい)をめぐらせるべきである。数百歩歩くべきである。飲食してすぐ横になれば百病が生じる。飲食して仰向けに寝れば気の痞え(つかえ)となる」とあります。『医説』に、「食後に体がだるくても、すぐに寝てはならない。体を動かし、二、三百歩静かに歩いた後、帯を解き、衣服をくつろげ、腰を伸ばしてきちんと座り、両手で胸と腹をもんで、縦横に往来させることを二十回、また両手で脇と腰の間から押さえさすって下ることを数十回ほどして、胸や腹の気をふさがらせなければ、食べた物のとどこおりは手に従って消化する」とあります。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『養生訓』巻第二・総論下一凡朝は早くおきて、手と面を洗ひ、髪をゆひ、事をつとめ、食後にはまづ腹を多くなで下し、食気をめぐらすべし。また京門のあたりを、手の食指のかたはらにて、すぢかひにしばしば撫づべし。腰をなで下して後、下にて静かにうつべし。あらくすべからず。もし食気滞らば、面を仰ぎて三四度食毒の気を吐くべし。朝夕の食後に、久しく安坐すべからず、必ずねぶり臥すべからず。久しく坐し、睡り臥せば、気ふさがりて病となり、久しきをつめば命みじかし。食後に毎度歩行する事、三百歩すべし。をりをり五六町歩行するは、尤よし。
-
『養生訓』巻第三・飲食上一酒食の後酔飽せば、天を仰ぎて酒食の気を吐くべし。手を以て面及び腹腰をなで、食気をめぐらすべし。一わかき人は、食後に弓を射、鎗太刀を習ひ、身をうごかし、歩行すべし。労動を過すべからず。老人も其気体に応じ、少し労動すべし。案によりかかり、一処に久しく安坐すべからず。気血を滞らしめ、飲食消化しがたし。
-
『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
-
『養生訓』巻第五・五官一膝より下のはぎのおもてうらを、人をして手を以てしばしば撫でくださせ、足の甲をなで、其後足のうらをしきりに多く撫で、足の十指を引かすれば、気を下しめぐらす。みづからするは尤よし。是良法なり。一気のよくめぐりて快き時に、導引按摩すべからず。又冬月按摩を忌む事、内経に見えたり。身を労動して気上る病には、導引按摩ともにあしし。只身をしづかに動かし歩行する事は、四時ともによし。尤飯後によろし。湧泉の穴を撫づる事も、四時ともによし。
-
『養生訓』巻第一・総論上一身体は日々少しづつ労動すべし。久しく安坐すべからず。毎日飯後に、必ず庭圃の内数百足しづかに歩行すべし。雨中には室屋の内を幾度も徐行すべし。此くの如く日々朝晩運動すれば、鍼灸を用ひずして、飲食気血の滞なくして病なし。鍼灸をして、熱痛甚しき身の苦をこらへんより、かくの如くせば病なくして安楽なるべし。
-
『養生訓』巻第五・洗浴一湯治の間、熱性の物を食ふべからず、大酒大食すべからず。時々歩行し、身をうごかし、食気をめぐらすべし。湯治の内、房事をおかす事大にいむ。湯よりあがりても、十余日いむ。灸治も同じ。湯治の間、又湯治の後、十日ばかり補薬を飲むべし。其間性よき魚鳥の肉を少しづつ食して、薬力をたすけ、脾胃を養ふべし。生、冷、性あしき物、食すべからず。又大酒大食を忌む。湯治しても、後の保養なければ益なし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る