養生訓 / 巻第五・五官
一髪はおほくけづるべし。氣をめぐらし、上氣をくだす。櫛の齒しげきは、髪ぬけやすくしてあしし。牙齒はしばしばたゝくべし。齒をかたくし、蟲ばまず。時々兩の手を合せすりてあたゝめ、兩眼をあたゝめのすべし。目を明らかにし、風をさる。よつて髪ぎはより、下額と面を、上より下になづる事二七遍、古人、兩手はつねに面に在るべしと云へるは、時々兩手にて面を撫つべしとなり。如此すれば、氣をめぐらし、上氣をくだし、面色をうるはしくす。左右の中指を以て、鼻の兩わきを多くなで、兩耳の根を多くなづべし。
新字:一髪はおほくけづるべし。気をめぐらし、上気をくだす。櫛の歯しげきは、髪ぬけやすくしてあしし。牙歯はしばしばたゝくべし。歯をかたくし、虫ばまず。時々両の手を合せすりてあたゝめ、両眼をあたゝめのすべし。目を明らかにし、風をさる。よつて髪ぎはより、下額と面を、上より下になづる事二七遍、古人、両手はつねに面に在るべしと云へるは、時々両手にて面を撫つべしとなり。如此すれば、気をめぐらし、上気をくだし、面色をうるはしくす。左右の中指を以て、鼻の両わきを多くなで、両耳の根を多くなづべし。
書き下し
一髪はおほくけづるべし。気をめぐらし、上気をくだす。櫛の歯しげきは、髪ぬけやすくしてあしし。牙歯はしばしばたたくべし。歯をかたくし、虫ばまず。時々両の手を合せすりてあたため、両眼をあたためのすべし。目を明らかにし、風をさる。よつて髪ぎはより、下額と面を、上より下になづる事二七遍、古人、両手はつねに面に在るべしと云へるは、時々両手にて面を撫つべしとなり。如此すれば、気をめぐらし、上気をくだし、面色をうるはしくす。左右の中指を以て、鼻の両わきを多くなで、両耳の根を多くなづべし。
現代語訳
髪は多くくしけずるべきです。気をめぐらし、のぼせを下げます。歯の細かい櫛は髪が抜けやすくてよくありません。歯はしばしば打ち合わせるべきです。歯を丈夫にし、虫歯になりません。ときどき両手を合わせてこすって温め、両目を温めてなでるのがよいです。目を明らかにし、風邪を去ります。そして髪の生えぎわから額と顔を上から下へ撫でることを十四回、古人が「両手はいつも顔にあるべきだ」と言ったのは、ときどき両手で顔を撫でよということです。このようにすれば、気をめぐらし、のぼせを下げ、顔色をうるわしくします。左右の中指で鼻の両わきを多く撫で、両耳の付け根を多く撫でるべきです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第五・五官一牙歯をみがき、目を洗ふ法、朝ごとに、まづ熱湯にて目を洗ひあたため、鼻中をきよめ、次に温湯にて口をすすぎ、昨日よりの牙歯の滞を吐きすて、ほしてかわける塩を用ひて、上下の牙歯とはぐきをすりみがき、温湯をふくみ、口中をすすぐ事二三十度、其間に、まづ別の碗に温湯を荒布の小篩を以てこして入れ置き、次に手と面をあらひをはりて、口にふくめる塩湯を、右のあら布の小ぶるひに吐き出し、こして碗に入れ、其塩湯を以て、目を洗ふ事、左右各十五度、其後別に入れ置きたる碗の湯にて、目を洗ひ口をすすぐべし。是にてをはる。毎朝かくの如くにして怠りなければ、久しくして牙歯うごかず、老いてもおちず、虫くはず、目あきらかにして、老にいたりても、目の病なく、夜細字をよみ書く。
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『養生訓』巻第二・総論下一孫真人が曰、修養の五宜あり。髪は多くけづるに宜し。手は面にあるに宜し。歯はしばしばたたくに宜し。津は常にのむに宜し。気は常に煉るに宜し。煉るとはさわがしからずして静かなるなり。一久しく行き、久しく坐し、久しく立ち、久しく臥し、久しく語るべからず。是労動ひさしければ気へる。又安逸ひさしければ気ふさがる。気へるとふさがるとは、ともに身の害となる。
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『養生訓』巻第五・五官是目と歯とをたもつ良法なり。こころみて其しるしを得たる人多し。予も亦此法によりて、久しく行ふゆゑ、其しるしに、今八十三歳にいたりて、猶夜細字を書き読み、牙歯固くして一もおちず、目と歯に病なし。毎朝かくのごとくすれば、久しくして後は、ならひてむづかしからず。牙杖にて牙歯をみがく事を用ひず。
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『養生訓』巻第五・五官一臥す時、童子に手を以て合せ擦らせ熱せしめて、わが腎堂を久しく摩でしめ、足心をひさしく摩でしむべし。みづから如此するもよし。又腎堂の下、臀の上をしづかにうたしむべし。一毎夜臥さんとするとき、櫛にて髪をしきりにけづり、湯にて足を洗ふべし。是よく気をめぐらす。又臥にのぞんで、煎茶に塩を加へ、口をすすぐべし。口中を清くし、牙歯を堅くす。下茶よし。
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『養生訓』巻第五・五官一凡一日に一度、わが首より足に至るまで、惣身のこらず、殊につがひの節ある所、ことごとく人に撫でさすり押さしむる事、各所十遍ならしむべし。先百会の穴、次に頭の四方のめぐり、次に両眉の外、次に眉じり、又鼻ばしらのわき、耳の内、耳のうしろを皆押すべし。次に風池、次に項の左右を摩む。左には右手、右には左手を用ふ。次に両の肩、次に臂骨のつがひ、次に腕、次に手の十指をひねらしむ。次に背を押へ、ちうごかすべし。次に腰及腎堂を撫でさする。次に胸、両乳、次に腹を多くなづる。次に両股、次に両膝、次に脛の表裏、次に足の踝、足の甲、次に足の十指、次に足の心、皆両手にて撫でひねらしむ。是寿養叢書の説なり。我手にてみづからするもよし。
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『養生訓』巻第五・五官一古人の曰、歯の病は、胃火ののぼる也。毎日時々歯をたたく事三十六度すべし。歯かたくなり、虫くはず、歯の病なし。一わかき時、歯のつよきをたのみて、堅き物を食ふべからず。梅楊梅の核など噛みわるべからず。後年に歯早く落つ。細字を多く書けば、目と歯とを損ず。
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