養生訓 / 巻第二・総論下
一孫眞人が曰、修養の五宜あり。髪は多くけづるに宜し。手は面にあるに宜し。齒はしばしばたゝくに宜し。津は常にのむに宜し。氣は常に煉るに宜し。煉るとはさわがしからずして靜かなるなり。一久しく行き、久しく坐し、久しく立ち、久しく臥し、久しく語るべからず。是勞動ひさしければ氣へる。又安逸ひさしければ氣ふさがる。氣へるとふさがるとは、ともに身の害となる。
新字:一孫真人が曰、修養の五宜あり。髪は多くけづるに宜し。手は面にあるに宜し。歯はしばしばたゝくに宜し。津は常にのむに宜し。気は常に煉るに宜し。煉るとはさわがしからずして静かなるなり。一久しく行き、久しく坐し、久しく立ち、久しく臥し、久しく語るべからず。是労動ひさしければ気へる。又安逸ひさしければ気ふさがる。気へるとふさがるとは、ともに身の害となる。
書き下し
一孫真人が曰、修養の五宜あり。髪は多くけづるに宜し。手は面にあるに宜し。歯はしばしばたたくに宜し。津は常にのむに宜し。気は常に煉るに宜し。煉るとはさわがしからずして静かなるなり。一久しく行き、久しく坐し、久しく立ち、久しく臥し、久しく語るべからず。是労動ひさしければ気へる。又安逸ひさしければ気ふさがる。気へるとふさがるとは、ともに身の害となる。
現代語訳
孫真人(孫思邈)は、修養には五つの宜しきことがある、と言いました。髪は多くくしけずるのがよい。手は顔に当てるのがよい。歯はたびたび叩き合わせるのがよい。つばは常に飲み込むのがよい。気は常に練るのがよい。練るとは騒がしくなく静かであることです。長く歩き、長く座り、長く立ち、長く横になり、長く話してはいけません。これは、働くことが長ければ気が減り、また楽をすることが長ければ気がふさがるからです。気が減ることとふさがることは、ともに体の害となります。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『養生訓』巻第五・五官一髪はおほくけづるべし。気をめぐらし、上気をくだす。櫛の歯しげきは、髪ぬけやすくしてあしし。牙歯はしばしばたたくべし。歯をかたくし、虫ばまず。時々両の手を合せすりてあたため、両眼をあたためのすべし。目を明らかにし、風をさる。よつて髪ぎはより、下額と面を、上より下になづる事二七遍、古人、両手はつねに面に在るべしと云へるは、時々両手にて面を撫つべしとなり。如此すれば、気をめぐらし、上気をくだし、面色をうるはしくす。左右の中指を以て、鼻の両わきを多くなで、両耳の根を多くなづべし。
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『養生訓』巻第五・五官一入門曰、導引の法は保養中の一事なり。人の心はつねに静なるべし、身はつねに動かすべし。終日安坐すれば病生じ易し、久立久行より、久臥久坐は、尤人に害あり。一導引の法を毎日行へば、気をめぐらし、食を消して、積聚を生ぜず。朝いまだ起きざる時、両足をのべ、毒気をはき出し、おきて坐し、頭を仰きて両手を組み、向へ張出し、上に向ふべし。歯をしばしばたたき、左右の手にて、項をかはるがはる押す。其次に、両肩をあげ、くびを縮め、目をふさぎて、俄に肩を下へさぐる事三度。次に面を両手にて度々なで下し、目を目かしらより目じりにしばしば撫で、鼻を両手の中指にて六七度撫で、耳輪を両手の両指にて挟み、撫で下す事六七度、両手の中指を両耳に入れさぐり、しばしふさぎて両方へひらき、両手をくみ、左へ引く時は、かうべ右をかへり見、右へ引くときは、左へかへりみる。
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『養生訓』巻第五・五官一坐するには正坐すべし、かたよるべからず。燕居には安坐すべし、膝をかがむべからず。又よりより牀几にこしかけ居れば、気めぐりてよし。中夏の人は常にかくのごとくす。一常に居る室も、常に用ふる器も、かざりなく質朴にして、けがれなく潔かるべし。居室は風寒をふせぎ、身をおくに安からしむべし。器は用をかなへて、事欠けざれば事足りぬ。華美を好めばくせとなり、おごりむさぼりの心おこりて、心を苦しめ、事多くなる。養生の道に害あり。坐する処、臥す処、少しも透間あらば塞ぐべし。すき間の風と、吹き通す風は、人のはだへに通りやすくして病おこる。おそるべし。夜臥して、耳辺に風の来る穴あらば、ふさぐべし。
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『養生訓』巻第二・総論下一内慾をすくなくし、外邪をふせぎ、身を時々労動し、ねぶりをすくなくす。此の四は養生の大要なり。一気を和平にし、あらくすべからず。静かにして、妄に動すべからず。ゆるやかにして急なるべからず。言語をすくなくして、気をうごかすべからず。つねに気を臍の下にをさめて、胸にのぼらしむべからず。是気を養ふ法なり。
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『養生訓』巻第一・総論上一養生の術は、つとむべき事をよくつとめて、身をうごかし、気をめぐらすをよしとす。つとむべき事をつとめずして、臥す事を好み、身をやすめおこたりて動かさざるは、甚養生に害あり。久しく安坐し、身を動さざれば、元気めぐらず、食気とどこほりて病おこる。殊に臥す事を好み、ねぶり多きを忌む。食後には必ず数百歩歩行して、気をめぐらし、食を消すべし。ねぶり臥すべからず。父母につかへて力をつくし、君につかへてまめやかにつとめ、朝は早くおき、夕はおそく寝ね、四民ともに我が家事をよくつとめておこたらず。士となれる人は、いとけなき時より、書をよみ、手を習ひ、礼楽をまなび、弓を射、馬にのり、武芸をならひて、身をうごかすべし。
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『養生訓』巻第二・総論下およそ人の身、慾をすくなくし、時々身をうごかし、手足をはたらかし歩行して、久しく一所に安坐せざれば、血気めぐりて滞らず。養生の要務なり。日々かくのごとくすべし。呂氏春秋に曰く、流水は腐らず、戸枢は螻まず、動けばなり、形気も亦然り。いふ意は、流水は腐らず、たまり水はくさる。から戸のぢくの下のくるるは虫くはず。此二のものは、つねに動く故わざはひなし。人の身も亦かくの如し。一所に久しく安坐してうごかざれば、飲食とどこほり、血気めぐらずして病を生ず。食後に臥すと、昼臥すと、尤禁ずべし。夜も飲食の消化せざる内に早く臥せば、気をふさぎ病を生ず。是養生の道において尤いむべし。
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