養生訓 / 巻第五・五官
一古人の曰、齒の病は、胃火ののぼる也。每日時々齒をたゝく事三十六度すべし。齒かたくなり、蟲くはず、齒の病なし。一わかき時、齒のつよきをたのみて、堅き物を食ふべからず。梅楊梅の核など嚙みわるべからず。後年に齒早く落つ。細字を多く書けば、目と齒とを損ず。
新字:一古人の曰、歯の病は、胃火ののぼる也。毎日時々歯をたゝく事三十六度すべし。歯かたくなり、虫くはず、歯の病なし。一わかき時、歯のつよきをたのみて、堅き物を食ふべからず。梅楊梅の核など噛みわるべからず。後年に歯早く落つ。細字を多く書けば、目と歯とを損ず。
書き下し
一古人の曰、歯の病は、胃火ののぼる也。毎日時々歯をたたく事三十六度すべし。歯かたくなり、虫くはず、歯の病なし。一わかき時、歯のつよきをたのみて、堅き物を食ふべからず。梅楊梅の核など噛みわるべからず。後年に歯早く落つ。細字を多く書けば、目と歯とを損ず。
現代語訳
古人が言うには、「歯の病は胃の火がのぼるためである」。毎日ときどき歯を打ち合わせることを三十六度すべきです。歯が固くなり、虫歯にならず、歯の病がありません。若いとき、歯の強いのを頼んで、硬い物を食べてはいけません。梅や楊梅(やまもも)の種などをかみ割ってはいけません。後年に歯が早く抜けます。細かい字を多く書くと、目と歯をそこないます。
解説
歯の健康を守る心得を述べた単位です。頭注によれば、歯の病を胃火ののぼりとする説は『痰火点雪』に見えます。毎日歯を三十六度打ち合わせる「叩歯」は、中国の養生法として古くから行われてきたものです。若いうちに歯の強さを過信して硬い物をかみ割ると後年に早く抜けるという指摘は、若い時の無理が老後に出るという益軒の一貫した考えを歯に当てはめたものです。細かい字を書き過ぎると目と歯を損なうという観察も、目の酷使への警告として読めます。
この章句が説くこと
歯若さ老い胃習慣
関連する章句
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『養生訓』巻第五・五官是目と歯とをたもつ良法なり。こころみて其しるしを得たる人多し。予も亦此法によりて、久しく行ふゆゑ、其しるしに、今八十三歳にいたりて、猶夜細字を書き読み、牙歯固くして一もおちず、目と歯に病なし。毎朝かくのごとくすれば、久しくして後は、ならひてむづかしからず。牙杖にて牙歯をみがく事を用ひず。
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『養生訓』巻第五・五官一牙歯をみがき、目を洗ふ法、朝ごとに、まづ熱湯にて目を洗ひあたため、鼻中をきよめ、次に温湯にて口をすすぎ、昨日よりの牙歯の滞を吐きすて、ほしてかわける塩を用ひて、上下の牙歯とはぐきをすりみがき、温湯をふくみ、口中をすすぐ事二三十度、其間に、まづ別の碗に温湯を荒布の小篩を以てこして入れ置き、次に手と面をあらひをはりて、口にふくめる塩湯を、右のあら布の小ぶるひに吐き出し、こして碗に入れ、其塩湯を以て、目を洗ふ事、左右各十五度、其後別に入れ置きたる碗の湯にて、目を洗ひ口をすすぐべし。是にてをはる。毎朝かくの如くにして怠りなければ、久しくして牙歯うごかず、老いてもおちず、虫くはず、目あきらかにして、老にいたりても、目の病なく、夜細字をよみ書く。
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『養生訓』巻第五・五官一髪はおほくけづるべし。気をめぐらし、上気をくだす。櫛の歯しげきは、髪ぬけやすくしてあしし。牙歯はしばしばたたくべし。歯をかたくし、虫ばまず。時々両の手を合せすりてあたため、両眼をあたためのすべし。目を明らかにし、風をさる。よつて髪ぎはより、下額と面を、上より下になづる事二七遍、古人、両手はつねに面に在るべしと云へるは、時々両手にて面を撫つべしとなり。如此すれば、気をめぐらし、上気をくだし、面色をうるはしくす。左右の中指を以て、鼻の両わきを多くなで、両耳の根を多くなづべし。
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『養生訓』巻第五・五官一牙杖にて牙根をふかくさすべからず。根うきて、うごきやすし。一寒月はおそく起き、暑月は早く起くべし。暑月も風にあたり臥すべからず。ねぶりの内に風にあたるべからず、ねぶりの内に、扇にてあふがしむべからず。
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『養生訓』巻第五・五官一熱湯にて口をすすぐべからず、歯を損ず。一千金方曰、食し終るごとに、手を以て面をすり、腹をなで、津液を通流すべし。行歩する事数百歩すべし。飲食して即ち臥せば百病生ず。飲食して仰きに臥せば気痞となる。一医説曰、食して後、体倦むとも、即ち寝ぬる事なかれ。身を運動し、二三百歩しづかに歩行して後、帯をとき、衣をくつろげ、腰をのべて端坐し、両手にて心腹を按摩して、縦横に往来する事二十遍、又両手を以て、脇腰の間より、おさへ摩でて下る事数十遍ばかりにして、心腹の気ふさがらしめず、食滞手に随つて消化す。
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『養生訓』巻第三・飲食上一食後に、湯茶を以て口を数度すすぐべし。口中清く、牙歯にはさまれる物脱し去る。牙杖にてさす事を用ひず、夜は温なる塩茶を以て、口をすすぐべし。牙歯堅固になる。口をすすぐには、中下の茶を用ふべし。是東坡が説なり。
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