養生訓 / 巻第五・五官
一入門曰、導引の法は保養中の一事なり。人の心はつねに靜なるべし、身はつねに動かすべし。終日安坐すれば病生じ易し、久立久行より、久臥久坐は、尤人に害あり。一導引の法を每日行へば、氣をめぐらし、食を消して、積聚を生ぜず。朝いまだ起きざる時、兩足をのべ、毒氣をはき出し、おきて坐し、頭を仰きて兩手を組み、向へ張出し、上に向ふべし。齒をしばしばたゝき、左右の手にて、項をかはるがはる押す。其次に、兩肩をあげ、くびを縮め、目をふさぎて、俄に肩を下へさぐる事三度。次に面を兩手にて度々なで下し、目を目かしらより目じりにしばしば撫で、鼻を兩手の中指にて六七度撫で、耳輪を兩手の兩指にて挾み、撫で下す事六七度、兩手の中指を兩耳に入れさぐり、しばしふさぎて兩方へひらき、兩手をくみ、左へ引く時は、かうべ右をかへり見、右へ引くときは、左へかへりみる。
新字:一入門曰、導引の法は保養中の一事なり。人の心はつねに静なるべし、身はつねに動かすべし。終日安坐すれば病生じ易し、久立久行より、久臥久坐は、尤人に害あり。一導引の法を毎日行へば、気をめぐらし、食を消して、積聚を生ぜず。朝いまだ起きざる時、両足をのべ、毒気をはき出し、おきて坐し、頭を仰きて両手を組み、向へ張出し、上に向ふべし。歯をしばしばたゝき、左右の手にて、項をかはるがはる押す。其次に、両肩をあげ、くびを縮め、目をふさぎて、俄に肩を下へさぐる事三度。次に面を両手にて度々なで下し、目を目かしらより目じりにしばしば撫で、鼻を両手の中指にて六七度撫で、耳輪を両手の両指にて挟み、撫で下す事六七度、両手の中指を両耳に入れさぐり、しばしふさぎて両方へひらき、両手をくみ、左へ引く時は、かうべ右をかへり見、右へ引くときは、左へかへりみる。
書き下し
一入門曰、導引の法は保養中の一事なり。人の心はつねに静なるべし、身はつねに動かすべし。終日安坐すれば病生じ易し、久立久行より、久臥久坐は、尤人に害あり。一導引の法を毎日行へば、気をめぐらし、食を消して、積聚を生ぜず。朝いまだ起きざる時、両足をのべ、毒気をはき出し、おきて坐し、頭を仰きて両手を組み、向へ張出し、上に向ふべし。歯をしばしばたたき、左右の手にて、項をかはるがはる押す。其次に、両肩をあげ、くびを縮め、目をふさぎて、俄に肩を下へさぐる事三度。次に面を両手にて度々なで下し、目を目かしらより目じりにしばしば撫で、鼻を両手の中指にて六七度撫で、耳輪を両手の両指にて挟み、撫で下す事六七度、両手の中指を両耳に入れさぐり、しばしふさぎて両方へひらき、両手をくみ、左へ引く時は、かうべ右をかへり見、右へ引くときは、左へかへりみる。
現代語訳
『医学入門』に、「導引の法は保養の一つの事である。人の心はいつも静かであるべきで、体はいつも動かすべきである。一日中座っていると病が生じやすい。長く立ち長く歩くことよりも、長く寝て長く座ることのほうが、とりわけ人に害がある」とあります。導引の法を毎日行えば、気をめぐらし、食べた物を消化して、積聚(腹のしこり)を生じません。朝まだ起きないうちに両足を伸ばし、体内の悪い気を吐き出し、起きて座り、頭を仰向けて両手を組み、前へ張り出し、上へ向けるべきです。歯をしばしば打ち合わせ、左右の手でうなじを代わる代わる押します。その次に両肩を上げ、首を縮め、目を閉じて、急に肩を下へ下ろすことを三度します。次に顔を両手で何度も撫で下ろし、目を目頭から目じりへしばしば撫で、鼻を両手の中指で六、七度撫で、耳を両手の指ではさんで撫で下ろすことを六、七度、両手の中指を両耳に入れてさぐり、しばらくふさいでから両方へ開き、両手を組んで、左へ引くときは頭を右へ振り返り、右へ引くときは左へ振り返ります。
解説
この章句が説くこと
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