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養生訓 / 巻第四・慎色慾

一房室の戒多し。殊に天變の時をおそれいましむべし。日蝕、月蝕、雷電、大風、大雨、大暑、大寒、虹蜺地震、此時房事をいましむべし。春月雷初めて聲を發する時夫婦の事を忌む。又土地につきては、凡神明の前をおそるべし。日月星の下、神祠の前、わが父祖の神主の前、聖賢の像の前、是皆おそるべし。且我が身の上につきて時の禁あり。病中病後、元氣いまだ本復せざる時、殊に、傷寒、時疫、瘧疾の後、腫物、癰疽いまだいえざる時、氣虚勞損の後、飽渴の時、大醉大飽の時、身勞動し、遠路行步につかれたる時、忿り、悲み、うれひ、驚きたる時、交接を忌む。冬至の前五日、冬至の後十日、靜養して精氣を泄すべからず。又女子の經水いまだ盡きざる時、皆交合を禁ず。

新字:一房室の戒多し。殊に天変の時をおそれいましむべし。日蝕、月蝕、雷電、大風、大雨、大暑、大寒、虹蜺地震、此時房事をいましむべし。春月雷初めて声を発する時夫婦の事を忌む。又土地につきては、凡神明の前をおそるべし。日月星の下、神祠の前、わが父祖の神主の前、聖賢の像の前、是皆おそるべし。且我が身の上につきて時の禁あり。病中病後、元気いまだ本復せざる時、殊に、傷寒、時疫、瘧疾の後、腫物、癰疽いまだいえざる時、気虚労損の後、飽渇の時、大酔大飽の時、身労動し、遠路行歩につかれたる時、忿り、悲み、うれひ、驚きたる時、交接を忌む。冬至の前五日、冬至の後十日、静養して精気を泄すべからず。又女子の経水いまだ尽きざる時、皆交合を禁ず。

書き下し

一房室の戒多し。殊に天変の時をおそれいましむべし。日蝕、月蝕、雷電、大風、大雨、大暑、大寒、虹蜺地震、此時房事をいましむべし。春月雷初めて声を発する時夫婦の事を忌む。又土地につきては、凡神明の前をおそるべし。日月星の下、神祠の前、わが父祖の神主の前、聖賢の像の前、是皆おそるべし。且我が身の上につきて時の禁あり。病中病後、元気いまだ本復せざる時、殊に、傷寒、時疫、瘧疾の後、腫物、癰疽いまだいえざる時、気虚労損の後、飽渇の時、大酔大飽の時、身労動し、遠路行歩につかれたる時、忿り、悲み、うれひ、驚きたる時、交接を忌む。冬至の前五日、冬至の後十日、静養して精気を泄すべからず。又女子の経水いまだ尽きざる時、皆交合を禁ず。

現代語訳

房事の戒めは多くあります。とくに天変のときを恐れて戒めるべきです。日食、月食、雷、大風、大雨、猛暑、厳寒、虹、地震のときは房事を戒めるべきです。春に雷がはじめて鳴るときは、夫婦のことを忌みます。また場所については、およそ神々の前を恐れるべきです。日・月・星の下、神社の前、わが父祖の位牌の前、聖賢の像の前は、みな恐れるべきです。また自分の身の上については、時の禁があります。病中や病後で元気がまだ回復しないとき、とくに傷寒、流行病、瘧の後、腫れ物や癰疽がまだ治らないとき、気虚や疲労で体をこわした後、ひどく腹がすいたりのどが渇いたりしたとき、大いに酔ったり腹いっぱい食べたりしたとき、体を動かして疲れたとき、遠路を歩いて疲れたとき、怒り、悲しみ、憂い、驚いたときは、交わりを忌みます。冬至の前五日と冬至の後十日は、静養して精気を漏らしてはいけません。また女性の月経がまだ終わらないときも、みな交わりを禁じます。

解説

房事を慎むべき時と場所を、天変・場所・自分の体調の三つに分けて列挙した単位です。日食や雷、地震などの天変や神前を恐れるのは、天地や神明への畏敬という当時の世界観によるものです。一方、病中病後や酩酊時、疲労時、感情が乱れたときを避けよという項目は、体の状態に合わせた実際的な注意です。信仰に根ざした戒めと体調管理の知恵が並んでいる点に、江戸時代の養生観の特徴がよく表れています。

この章句が説くこと

房事節制天変病後畏敬

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